怪物と呼ばれるもの
シリーズ内に登場する、パルムの中のやばい奴らです。
・竜種
到竜の影響により生まれた、到竜が世界に及ぼした〝波紋〟。竜種同士で子を成し繁殖しているが、原初の竜種は創世の頃から存在しているらしい。
竜種以外の人間や動植物が、精霊王によって世界が創造された時の〝世界の付属品〟であるなら、竜種は到竜が世界に及ぼした〝波紋〟である。
世界を水面に例えた時に、到竜が身じろぎした時に生じるもの。それが竜種で、到竜に近しいものから遠いものまで千差万別。
基本的には、地球の伝説で語られる西洋のドラゴンの姿をしている。蝙蝠のような翼があるトカゲで、全長はとてつもなく大きい。物理法則的には自重を支えることも不可能なはずだが、魔力も使わずに悠々と空を飛び、少ない食料でありえないほど生き長らえることができ、殺されない限り不死という寿命を持つ。ちなみに火は吹かない。
魔力や魔法に頼らず自重を支え、翼だけで空を飛ぶ。これは到竜の持つ特性の一つ、「世界の外側でも活動できる」の劣化版のようなものであり、実態としては「物理法則などをある程度無視している」と言った方が正しい。
人語を解するどころか、人類の叡智を鼻で笑える頭脳を持つ。長大な寿命と相まって、高位の竜種を抱えることができた国は世界の覇者にもなれるだろう。
到竜に近しい竜種は上記のような性能を誇る。そこから離れるごとに性能が劣化していき、亜竜や飛竜と呼ばれるものになり、一番低位のものだと少し大きなトカゲ程度になる。
到竜に近いか遠いかの度合い、竜種として高位か低位かを表す名称などはなく、人間が認知できるレベルのものが辛うじて「亜竜」や「飛竜」と呼称されているに過ぎない。大きなトカゲなどはもはや竜種とさえ思われていない。
高位の竜種は前述のようなびっくり生物だが、亜竜レベルになると普通に老衰するようになるし、人語を解せるかは些か怪しくなってくる。飛竜はもはや「飛べるだけのでっかいトカゲ」であり、優秀な軍隊であれば救世主に頼らずとも討伐が可能。
竜種は長大な寿命と生命力を持つが故に、飛竜であっても繁殖能力が低い傾向にある。亜竜や飛竜ならともかく、高位の竜種が新しく生まれ落ちることは滅多になく、人間が大国を作るのと同じペースだと言う話もあるくらい。
また、当人たちも繁殖にはとことん興味がない。「自分が死なないのだから増やす必要がない」と考えているためでもあるが、「到竜から生じた〝波紋〟にすぎない自分たちは、真っ当な生物たちのような営みをしてはいけない」とも考えているらしい。
亜竜や飛竜になると繁殖は普通に行っているが、それでも五年に2、3体程度。
・巨人
魔力や精霊という、地球とは大きく異なる環境のせいで生まれた異形種の内の一つ。
巨人と言えど、せいぜい2メートルから4メートル程度。見た目も「大きな人間」ではなく、「人型をした醜悪なでっかいヤツ」。
異世界モノとして通りの良い呼び名は「オーク」や「オーガ」。
人間とは比べものにならない膂力、魔力を持ち合わせる。魔力は重すぎる肉体を支えるための肉体強化に使われているため、巨人種が魔法を使用することは稀。
地球で言う猿程度の知能を持ち、習性や行動は人間に似ている。洞窟や穴蔵を作り、群れを作って狩りなどで生活する。簡単な道具であれば製作できる。
食性は雑食のため、草食動物を追い立てたり魚をとったり、野草をとったりで暮らしている。また巨人にとって人間は〝いい餌〟であり、人里近くに巨人の群れが形成された場合は軍隊に出動がかかるほどの被害が出る。
人間より知能が低い代わりに動物的直感に優れ、救世主の力のような超常のものには敏感。救世主がいる街の傍では巨人の群れが形成されづらいのはこれが関係している。
繁殖方法は哺乳類のそれと同じで、種族的にオスしか生まれないなどということはない。普通にオスメス両方が生まれ、種族単独で独自に繁殖している。
古くは魔王の実験によって生まれた異形種だと言われているが、おとぎ話や噂の類いであり、詳細は不明。
・魔狼
魔力や精霊という、地球とは大きく異なる環境のせいで生まれた異形種の内の一つ。
体長は非常に大きく、小さな個体でも2メートルを越す。大きな個体だと4メートルに迫ることもあり、外見に違わぬ凶暴性も持ち合わせる。
通常の狼より遥かに強大な身体能力を持ち、身体が大きいくせに動きは鈍くない。これは魔力による肉体強化の賜物で、普通に魔力を持ち合わせる。
知能や習性は通常の狼と同一のもので、群れを作って狩りを行う。人間の軍隊の精強さを理解しており、またまとまった数の人間を狩るためには街を襲うしかなく、街を襲えば軍隊がやってきて面倒だからと、魔狼が人里近くに訪れるケースは稀。
基本的に魔族領域内の他の怪物を捕食しており、群れで狩りを行う。竜種と違って体長に見合った量を食べるため、多くの場合怪物の群れを襲う。
魔力を持つが、魔法を使うことはない。魔法を使うだけの知能がない、もしくは肉体強化に全てを使っている、などが理由として挙げられる。
魔狼、と一口に言っても種類は様々で、火に強い体毛を持っていたり極寒の寒冷地でも平然と活動したり、怪物にも効く麻痺毒を持っていたり木を飛び越える程の跳躍力を発揮したり、地域によってそれに合わせた進化を遂げている。魔族領域在住だけあって環境は過酷なので、当然と言えば当然と言える進化。
・虫型怪物
魔力や精霊という、地球とは大きく異なる環境のせいで生まれた異形種の内の一つ。
一言で表すなら、「スーパーウルトラでっかくなった虫」。
小さいものでも体長1メートルはある、人間大以上のスケールを持つ虫の怪物。
通常の虫のように多種多様な種類が存在し、魔族領域特有の進化を遂げているため、単純に既存の虫を大きくしたものよりパワフルかつ危険。
普通の人間が遭遇すればひとたまりもないが、個体数が少ないのが特徴であり人里で被害が出ることは稀。
個体数が少ない理由としては、魔族領域に適応して強くなったせいで生命力も増え、種として個体数を増やす機能が退化していったせい。
知能は低く、魔狼や巨人種によって狩られることも多い。だが虫特有の構造や特性を活かし、なかなか死なないし機動力はあるしついでに気持ち悪いしでなんだかんだしぶとい。
なぜか発声器官を持ち、肺呼吸と皮膚呼吸をする。なんなら叫ぶ。既存の虫にも似た習性で活動するため、自分から獲物を狩る積極性はそんなにない。
魔族領域の異形種らしく魔力を持ち、それによる肉体強化で自重を支えている。
・獅子
魔力や精霊という、地球とは大きく異なる環境のせいで生まれた異形種の内の一つ。
魔族領域におけるライオン。魔狼や虫型怪物のように異常な進化を遂げており、馬鹿みたいに巨大な体躯とそれに見合った膂力、支えるための魔力を保有する。
大人獅子の体長は地球の大人ライオンを三倍大きくしたくらい。気性は非常に獰猛かつ凶暴で好戦的。同族以外の肉ならなんでも食べるため、魔狼や巨人などを狩る。
群れを形成することは稀で、番や子供を連れる程度。しかし単体でも充分以上に脅威であり、人里に下りれば容易に街一つが滅びるだろう。
魔法を使うことはなく、知能も地球のライオン程度。習性もライオンに似ている。
間違っても人間が踏み込まない魔族領域の奥深くに生息しており、個体数も極端に少ないため、軍隊などが遭遇することはほとんどない。
・大蛇
魔力や精霊という、地球とは大きく異なる環境のせいで生まれた異形種の内の一つ。
魔族領域における蛇、それも密林のアナコンダ相当の大蛇。
人間どころか巨人を丸呑みできる体長を誇り、魔狼や獅子にも効く麻痺毒、神経毒を持つ。口から毒の霧を吐くことができ、平原でも普通に行動する積極性を持つため非常に危険。
獅子に遭遇しても真正面から襲いかかるほどの凶暴性があり、普通の人間が遭遇すれば秒殺される。
ちなみに、捕食方法を丸呑み以外にも持ち合わせる。これは魔族領域独自の進化。既存の蛇のような牙の他に鮫のような牙を持ち、それは口の中にズラリと並んでいる。それにより肉を食いちぎるようにして獲物を捕食することができ、獅子などの自身より大きい生物はそうやって捕食する。
肉食で、時には同族も食らう。繁殖目的以外で同族と会えば即座に共食いが始まる、魔族領域きってのやばい奴。
大蛇の麻痺毒は、効いてもせいぜい動きを止める程度だが、これはあくまで魔狼などの怪物基準。通常の動物や人間がこれを打ち込まれれば、そのままショック死しかねない猛毒である。
個体数が極端に少ないので、獅子や虫と同じく人間が遭遇することはほとんどない。
・鬼種
魔力や精霊、竜種という、地球とは大きく異なる環境のせいで生まれた異形種の内の一つ。
魔族領域の奥深く、過酷な環境に適応した怪物でさえも近寄らないような危険地帯――原初の竜の巣の近くに隠れ住む、人型の異形種。
不思議なことに、人間と比べてもほとんど差がない外見をしており、額に鬼のツノを持ち瞳が獣のものであることを除けば人間と変わらない。
古くは鬼などと呼ばれる異形の生物ではなく、極々平凡な人類だったが、竜種の波紋を受けたことによってこのような姿に成り果てている。
そも、竜種というのが到竜の波紋の存在であり、その波紋が新たな波紋を生むのは道理である。それが彼ら。
寿命がとても長く、食料を大して必要とせず、身体能力や知能がずば抜けて高く、一部の者は物理法則を無視して宙に浮くことができる……と、竜種と似た特性を持つ。
また、竜の力を身に宿すこととなった救世主と鬼種とで、外見がとても似通っている。
鬼のツノは、額の生え際の両端から生え、大きいものだと5cmに迫る大きさ。色は髪色や瞳の色と同じものになる性質があり、みな一様に黄色や茶色系統の色になっている。
小さな集落を形成し、数世帯のみしか存在しないとても数の少ない種族。だがしかし、そこらの怪物程度では話にならないほどに個々が強靭で、元が人類ということもあって連携も達者。
ごく稀に彼らの集落に怪物が襲いかかることがあるが、その全てが苦もなく撃退されている。
気性は穏やかで、行動原理も人間のものと変わらない。争いを好まず、自分たちの暮らしを守ることを最優先とする。竜種に似て滅多に死ぬことがないため、我欲も薄いようだ。
強い敵意や殺意を抱いた時、戦闘態勢になった時などに、ツノが発光するという特徴もある。その場合も髪色や瞳の色と同じ色の光になる傾向があり、大抵の鬼種のツノは黄色い光を発する。
――竜種の波紋に起因し生まれた種族ながら、その身は竜にあらず。
遠の昔に〝鬼〟として、〝人ではないモノ〟として、〝竜ではないモノ〟として馴染み、溶け込んで一種族となってしまったが故に、彼らは〝鬼〟である。
本来ならば、竜種の波紋を受けて、一介の生物ごときが五体満足で生き残れるわけはないのだが……彼らは生き残り、力を馴染ませ、一種族を成すに至った。
そのせいか、鬼種として持つ特性や特徴に関係なく、英雄英傑と言って差し支えないほどの才覚を持つ者が種族単位でゴロゴロいる。世界で一番、いろいろな意味で恐ろしい種族。
もしも彼らが我欲たっぷりで、世界征服などに意欲的だったならば、救世主たちですら抵抗は困難を極めただろう。




