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第九章 目

二作連続!

樋口からの文は短いですが

取り入れました。


この八章は智香が不安になる話しと

なっております。



翌日、土方さんから文が届いた。

内容はやはり沖田さんの体調の事が書かれてきた。”良くなっているからといって

やたら無闇に行動するな”。土方さんらしい一言だ。


ただ、初めて樋口さんからの文もあった。

暫くしたら斉藤さんが此方の様子を見に行くということ。これは前に土方さんが来た時にも謂っていた事だ。


”一番組奴等もお前の帰りを待っている”沖田さんはちょっと恥ずかしいのか

手で顔を隠している。






『素直じゃないなぁ〜沖田さん』

『いつだって素直ですよぉ〜』




そう謂いながらも耳が赤いですよ?

あたしが戸の方へ向かうとタイミングよく氷川さんが顔を出した。





『氷川さん!今日和。中へどうぞ』

 

『いや、良いよ此処で。これ、里芋だけどこしらえて食べておくれ。家の畑で出来た物だけど』


『わぁっ…!有り難う御座います。御馳走様です』

『一人じゃ食べきれないからな。沖田君は元気かい?』


『はい。今文が届いたので読んでいたところなんです。あ、沖田さん』


『今日和氷川さん。此…里芋?』

『はい。氷川さんの畑で穫れた里芋です』

『御馳走様です』

『いいや、良いんだよ。あ、…ちょっと良いかい?』


『『??』』




『あんたの家、見ない男が一人見張っているよ…』






氷川さんは声を静めて話してくれた。

あたしはもう一度中へ入る様すすめた。

けれど怪しまれるからと謂って中へ入ろうとしなかった。





『それじゃ、後で食べてな』





氷川さんはお辞儀をすると

帰って行った。


残されたあたし達は文にそのことを書くことにした。沖田さんは筆と墨を出す。

あたしはその隣で座る。

程なくすると外で子供が泣く声が聞こえてきた。






『こうしてると平和なんだろうけど…何か起きそうだよね?』


『そうですね…けど、今はあまり無茶しないで下さいね?良くなってきてるんですから』


『うん。大丈夫だよ』

『沖田さんの大丈夫が恐いんです!』

『そう?』


『そうですよ。此処へ来てあまり刀を使わなかった沖田さんが此処数日使ってるじゃないですか?』


『うーんそうかな?』





自覚無いのですかッ!

沖田さんッ!




『そんなしょっちゅう振り回してる訳じゃないから大丈夫大丈夫っ!

逆に退屈過ぎて干からびちゃいそうだよ』


『全く!』


『それに…僕にも護りたい人が出来たんだから、病気で死ぬ訳にはいかないでしょ?生きて戻る。そう二人で決めたじゃない?』


『はい…』


『約束は守るよ』






そんな顔で謂われたら”本当ですか”なんて

訊けないよ。

だけど家を見張ってる人って…。

沖田さんは何だか難しい顔してるし…あたしが知らない何かを知ってるのかな…?


心配かけないように黙ってるだけ?

その晩、外は日中の天気が嘘のように雨風が強い。蝋燭(ろうそく)の灯りで過ごすのはもう慣れたけど、不気味だよね。




それにしても…この家…二人で棲むには

広いよなぁ…。本来は個人鞠とした家を借りる予定だったんだけど…。

土方さん関係者の人が此処を使ってと…。


長屋じゃないからあまり水回りは

気にしなくていいなんて…謂われても

広いよねぇ。此処。部屋が三つだもん。





『ふぁ〜…』

『そろそろ寝ようか?消すよ?』

『はい』





沖田さんが蝋燭(ろうそく)の火を消してくれた。室内は真っ暗になる。

彼はまだ眠くないのか布団の中で動く音が聞こえる。



あたしはいつの間にか夢の中。





智香が寝付いたのを確認すると

沖田は目を凝らしながら居間へ向かう。

自分がよく座る場所まで着くと

雨風が強い外へ意識を集中させた。


昼間氷川が謂った言葉がどうしても頭から離れないでいた。





『大丈夫そうかな…』





翌日、雨は止んでいるけれど

風がまだ強い。

沖田さんは眠そうだったのでまだ寝ていてもらう。その間あたしは昨日貰った里芋を

煮詰める。




『わぁー。柔らかい』

『食べてもいい?』

『どうぞ…うわぁぁっ!寝てたんじゃなかったのですか!』


『いい匂いしてくるんだもん。…うん。美味しい』





あたしが驚いてる隙にしっかりと摘むし…。まぁ、いいか。美味しいって謂ってくれたし。




『また、料理の腕上げたね?』

『本当ですか?!』

『うん。良いお嫁さんになるよ』

『……』

『…あ…ごめん…不躾だったね…』


『え…あ…いいえ!嬉しかったんです。有り難う御座います』


『…良い子だね。僕、着替えたら家の周り様子見てくるね』


『気をつけて下さいね?』


『うん。君も僕が居ない時は戸締まりしっかりするんだよ?すぐに戻るけど』


『はい』






支度を終わらせると沖田さんは

見回りへ出て行った。

恐らく氷川さんが謂っていた人の事が気になるのだと思う。




あたしはタエさんから貰った桃の花の水を取り替える。ん?そういえば…あたし江戸に来て隆夫に手紙を書いてない?よね?


仕方ない。

書いてあげよう。

あたしはシャーペンを取り出し

紙に書く。


ビリッ…

ビリッ…




『書きにくい…ビリビリだけど…いいよね…書いたには違いないし…』





あたしは穴だらけのビリビリになった手紙を、沖田さんが書いた文へ添える。






『猫ちゃん来ないかなぁ〜』





沖田さん…早く帰ってきて下さいね。

一人って独り言が増えるんですよ。

何気に後ろを向くと壁に小さな穴があった。あんな穴から目がギョロッとあったら

気持ち悪いし怖いよね…と思っていた矢先


突然血走った目が現れた。






『き…きゃぁぁぁぁぁっ!沖田さんっ!早く帰ってきてぇぇぇっ!』






あたしは黄色い悲鳴をあげると

そう叫んでいた。

覗いていた目は悲鳴に驚いたのか消えていた。



誰かが走ってくる音が耳に届くと

戸を叩きながら沖田さんがあたしの名前を呼ぶ。






『智香ちゃんっ!』





震える身体を起こし戸を開ける。

そこには息を切らせた沖田さんが居た。

あたしは震える身体で抱き付く。それを沖田さんが優しく包んでくれる。





『どうしたの…?こんなに震えて…?』

『目が…目が…』

『目?』





悲鳴を訊いた人達が家の前に集まって来ている。だけどあたしはあの目を思い出しそれどころでは無かった。





『兎に角落ち着こう?』

『沖田さん…』





あたしを落ち着かせるため、沖田さんは集まってきた集団に”大丈夫です。お騒がせしました”と一言謂うと、戸を閉め抱きしめてくれながら謂ってくれる。





『大丈夫。大丈夫だから』

『沖田さん…』

『僕を見て?僕の目を見て?』






沖田さんの胸から顔をそっとあげる。

彼の優しい目があった。

…大丈夫。大丈夫。


落ち着きを取り戻したあたしは

先程、あの炊事場へ続く壁を指差し

穴が有ることと、その穴から血走った目が

覗いていた事を訊かせた。






『壁に?なんで?…先日まではこんな所に穴なんて無かったのに…』





彼は穴へと近づき右手を顎につけながら

覗くように見入る。

あたしはなるべく沖田さんから離れないようにする。





『此…切り口が新しい…』

『え…?』


『昨夜様子を見てたけど…物音なんて…』

『朝方…でしょうか…』

『…ねぇ…君に話しておかなきゃイケない事が一つあるんだ…』


『…話し?』


『うん…昨日氷川さんがこの家を見張っている奴が居るって謂ってたよね?…実はあの日土方さんからのもう一枚の、文にあったんだ。…京からこの江戸まで追ってきた奴が一人…その目の奴火傷の痕無かった?』


『そんな事が……ごめんなさい…血走った目しか…見てないです…』


『そう…智香ちゃ…』





ドンドン…!



『どうしたんです?!智香さん!』





タエさんだ…。

まだ家の前に沢山の人が居るんだろう…。

きっと心配で来てくれたのかも知れない。

戸を開けようとした時、何故か沖田さんに止められた。





『どうしてです…?』


『どうしてもだよ。いい?今この戸を開けちゃいけない。話しには続きがあるんだ…その追っては他人の声真似が、得意だと…文にあった。もっと早く君に話しておくべきだったね…恐い思いをさせたくなくて…黙っていたんだけど…』


『…そんな…それじゃこの声は…』


『彼女じゃない可能性もあるって事だよ。よく考えてみてよ?彼女は今何をしてる?家からあの茶屋までは離れているんだよ?』


『あ…』


『判ってくれた?』

『はい…』

『此処は僕一人に任せてくれないかな?』

『けど…』

『大切な人くらい護らせてよ…僕を信じて?土方さんだって許してくれるよ』


『沖田さん…』

『そんな目をしないで…。君が、傷つつく姿なんて新選組の皆も見たくないよ』





沖田さんが叩かれる戸へ進む。

彼の手が戸を開けようとする。

ただでさえ病気なのに…やっぱり駄目…

行かないで…寿命を縮ませないで!




『だ…駄目…です…』




あたしは沖田さんの背中に抱き付いた。

今はこのままでいいから…あたしから謂えば新選組の皆は沖田さんの帰りを待っているんです!





『新選組の皆…沖田さんを待ってます…』

『……』

『亡骸になってしまったら…もしもがあったら…あたしはどう説明すればいいんですかっ!』

『智香ちゃん…』

『お願い…』



悪い感は当たる。

そう訊いた事がある…。

京からの追っての話しには驚いた。

だけど…あたしは彼をこのまま外へ行かせたくない。





あたしは彼を涙目で見て訴えることしか出来ない…。



毎度ながら

凹むともみです。


兎に角頑張る次第です!

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