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第十章 斉藤とタエ

あの視線から三日。

穴の空いた壁は沖田さんが隠してくれた。

変わった事が一つある。

あたし達の会話は筆と紙でのやり取りなった。一部の話しについてだ。




外で箒を手に掃除していると

眠くなるくらい日差しが気持ちいい…。

中で沖田さんは刀の手入れをしている。

時々”あー切れちゃった”とか聞こえてくる。




掃除を終わらせると左人差し指を口にしている。その姿がまるで子供みたいに見える。指を見せて貰うと浅く切れていた。




『舐めてれば治るよ』

『それじゃ…此を』




あたしは消毒液を彼の指につける。





『有り難う。今日は何だか眠たくなるね?この陽気のせいかな?』


『春ですもんね』

『うん。…?』





沖田さんが不意に開いている戸の方を見る。何だろうと思って見ていると

斉藤さんが姿を現す。





『斉藤さん!お久し振りです!』

『やぁ、元気にしていたか?』





斉藤さんへ駆け寄ると沖田さんも

あたしに続いた。




『久し振り。ね?着いたばかりで悪いんだけと、少し相手してよ?』


『沖田さん…それはお茶の後にしましょうよ?』


『俺は構わないが…』

『あるって来られたんですよ?お茶、煎れますね』


『仕方ない…それじゃ、その後でお願いね?一君』


『ああ。所であれから変わった事は無かったか?』


『…実はさ…』

『…………何?』

『ま、それだけ何だけどね?あ!智香ちゃん!タエさんの茶屋へ行かない?』






急須を持ちながら二人へ振り返る。

なんと!タエさんが居る茶屋への誘いが!





『行きますっ!』

『それじゃ戸締まりしてくるから、ここに座って待ってて?』


『判った』






戸締まりを終えるとあたし達は

タエさんの茶屋へ行くため家を出た。

数軒越えると長屋がある。


沖田さんは長屋はあまり好まないらしい。

本人曰わく川柳を共同で使わなければいけないらしい。

それは未来にも確かある。


斉藤さんは江戸に来るのは久し振りだと

話している。




『変わらないのはこの桜と建ち並ぶ家だな』


『それについては僕も同感。人は変わるのは仕様がないか…』


『そうだな…』

『そうそう!”変わらない”で思ったんたけど、一君もあの時と変わらないよね?』


『どこが?』


『口数の少ないところと、人見知り』


『人見知りは自覚しているが、お前が喋り過ぎなのではないか?』


『う…そんな事有りません』

『自覚していないのか?』

『あーあ。天気も最高なのになぁ〜』

『総司から振ってきたんだろう?』

『知りませ〜ん。あっ此処だよ』

『新しく出来たのか…』

『うん』




あたしは二人の会話に笑いを堪えるのがやっとだったので一足先にタエさんの所へ走って行った。





『智香ちゃん?どうしたの?』




タエさんがあたしの様子に気づいて

持っていた箒を椅子にかける。





『な、何でもないよ!はあはは』

『そうかしら?』





少し遅れて沖田さんと斉藤さんも到着。

タエさんはすぐに斉藤さんに気づいた。





『斉藤様!お久し振りです。お元気でしたか?』

『ああ。タエさんこそ元気だったか?』

『はいっ!』




『『ん??』』





あれれ?

タエさん何だかいつもと様子が違う…?





『もしかして…タエさん…?』





沖田さんは黙ったままニヤニヤしている。

やっぱりそうですよね!

これは斉藤さんにラブですよねっ?!

斉藤さんの表情はあたしには判らないけど

タエさんの表情は思いっきり出てるから判る!





『では、茶を三人分頼む。出来ればで構わないが…腹が空いていてな…』


『はい!承りました!』





あたしと沖田さんはそのやり取りを

にやけながら見てしまう。

斉藤さんは静かに腰を下ろすと

にやけているあたし達に気づいた。





『…総司、智香…気持ち悪いぞ…?』

『そうかな?智香ちゃんよりは気持ち悪くてはないと思うけど?』


『なはぁ〜…春ですもんねぇ〜』




『…ね?』

『確かに…』





何に同意しているのか気付かないあたしは

足元に猫が居るので触る。撫でる。抱きしめる。





『ミィちゃん男の子だけど可愛いねぇ〜』




『あの時の仔猫か?』

『はい!大きくなりましたよぉ〜ねぇミィちゃん』


『そうなるとずっと猫と遊んでるから

ほっといて良いよ?たまに僕の声が届かない時もあるし』


『副長から訊いてはいたが…ここまでとは…』


『でしょ?僕はたまたま家に入り込んだ猫は相手にするけど…ここまではないよ?』


『お前がこんな風に猫をあやしていたら気持ち悪いな』


『うわー…』

『…総司、さっきの話しだが…』


『あ、そうだったよね。一応穴は隠したけど、またいつか違う手で来ると思うんだよね』


『そうだな…局長と副長は俺に暫く江戸に居ろと謂われているんだが…』


『本当?それじゃ甘えちゃおうかな?正直敵が数人だったら何とかなるけど、多かったら一人は辛いしさ。あれを読む限り一人らしいけれど、こっちで仲間を作ってたらさ』


『判った。では何処か宿を…』

『家で良いじゃない?』

『しかしだな…』

『新選組だって錢が沢山ある訳じゃないし』


『……』

『もしかして男女間考えてない?』

『馬鹿かお前は…』


『だよね?布団は土方さんが使った物があるから、気にすることないよ』



『それなら御言葉に甘えよう』


『お待たせ致しました。お先にお茶をお持ちしました。今、焼いていますので…もう暫くお待ち下さい』


『ああ』

『判った。智香ちゃん?いつまでやってるの?』


『ミイちゃん…はっ…はい!』






あたしはミイを降ろす。

沖田さんの隣に座り直し運ばれたお茶を一口。





『一君、暫く泊まる事になったよ?』

『そうなんですか?』


『ああ。その方が智香も恐く無いだろう?』


『有り難う御座います。沖田さんから詳しい話しを?』


『そうだよ。”もしも”を考えてね』

『沖田さん…』

『暫く世話になる』






斉藤さんは緊張の糸が切れたような

そんな表情をした。

あの時の土方さんと同じ…柔らかい微笑み。いつも気難しそうな斉藤さんと土方さんはどこか似ている…。






『お待たせしました。智香ちゃんから教わった焼おにぎりです!』


『此、美味しいんだよね?先に頂くよ?』


『にぎりを焼いたのか?』


『柔らかく握ったおにぎりを何度かお醤油を塗って網で焼くんです』




あたしは斉藤さんに説明すると

タエさんは大きく頷いた。




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