第七章 峰打ち
今日和。アクセス有り難う御座います。
今回の話は最初はホンワカとなっております。
新しいキャラクターも登場してきます。
少しずつ、戦闘シーン増やせたらなぁと
思うこの頃です。
基本和みですが。
桜の蕾が前より膨らんでいる。
まるで”もう少しで咲きますよ”と謂っているようだ。外は風が強くて歩くだけで砂埃が目に入ってくる。
天気は良いけれど、此じゃちょっと勿体無い気もする。
沖田さんはまた迷子の猫を見つけたらしく庭で胡座をかいて座っている。
少し見えた。茶虎だ。
屯所に居るときも仔猫(三毛猫の雄)を部屋まで連れてたっけ。
『今日も風が強いね』
『此ばかりは仕様がないですよ』
茶虎の猫は沖田さんに持ち上げられ鼻と鼻を付けている。
『っぁぅっ!』
不覚にも砂埃が目に入ってきた!
此は嫌だ…。隣の家の梅の花弁も風に乗っていた。残念だけどじっくり見られない。
『もう中へ入ろうか?』
『はい』
沖田さんが猫を降ろす。
可愛いなぁ…。…抱っこ…したい…。
最早あたし限界。
抱っこしてすりすりしてぎゅーっ!して尻尾の付け根触って…。
そんな事を考えていると茶虎猫はあたしの事をじっと見る。
『智香ちゃ…あれ?』
『お前可愛いねぇ〜暖かいし〜』
『智香ちゃんも本当動物好きだよね?僕もだけど』
『はい。子供も動物も大好きです。だって愛らしいから』
少しだけ話すと猫に顔を思いっきりつける。
『あ…この仔何処で見つけたんです?』
『この庭だよ?』
『それじゃ中へ入れない方が良いですね。もしかしたら帰るかも知れないし』
『そうだね。さ、中へ入ろう?』
『はい!』
それから数日。
あたしは沖田さんと久し振りに釣りへ出た。申し分ない天気だ。
彼は指定の場所に座る。川魚って少ないイメージがあると沖田さんへ謂ったら
海まで案内してくれた。
潮の香りがする。青い海の魚を狙う鴎達が空を気持ち良く泳いでるみたい。
あたしは久し振りのちょっとした遠出に
心弾んでるかな?何かわくわくしてる。
この時代の海は本当に綺麗で青い。
よく見ると貝殻も綺麗だ。
『本当に綺麗…』
『…?何か謂った?』
『はい。この時代の海は本当に綺麗だなぁって…』
隣に立つあたしを沖田さんが見る。
あたしは風に靡く髪を右手で押さえる。ヘアゴムを取ると長くなった髪が風に乗る。
『髪、伸びたね』
『え?』
気がつくと座って釣り具をセットしていた沖田さんが立ち上がって、あたしの髪の毛に手を添えていた。
彼の表情は優しくて暖かい。
その手はあたしの頬へやってきた。
大きくて暖かい…あたしはこの手が大好き…。包まれるだけで安心するし…
何よりも沖田さんの事が好き。
『そのまま…解いていたら?』
『どうして…ですか?』
『縛らない方が好きだから』
『邪魔になっちゃうんです…けど、時々解くようにしますね』
沖田さんは”有り難う”と一言謂うと
座り直し、釣りを始める。
あたしも隣に座り、落ちてる貝殻を一つ拾いそれをじっと見る。
ぼーっとしていると
いつの間にか子供達の笑い声が聞こえてきた。後ろを見ていると離れた所で子犬を連れた親子が居た。
『平和だね』
『はい』
江戸の海は未来と違ってとても質素だ。
周りにブロック塀も無いし
絵本の中の砂浜を連想させる。
この海や浜が汚れるなんて…嫌だなぁ。
あたし達が居る場所は釣りをする人に丁度いい場所。
磯の香り…此だけは変わらない。
その時だ。
突然悲鳴が聞こえてきた。
沖田さんもすぐに悲鳴がした方を見る。
女性が一人と男性が二人、女性の前に立って何かしようとしている。よく見ると足元には誰か横たわって居た。
気がつくと沖田さんは刀を手に持ち
その場へ行こうとしていた。
あたしも沖田さんの後を追う。
『もしかしたらあいつ等人斬りかも知れないから気をつけるんだよ?!』
『はいっ!』
あたし達は一気に駆け出す。
沖田さんは数メートル先を行く。
一体何が起きたの?倒れてる人は無事なの?
カチャ…
沖田さん砂浜なのに早い…もう辿り着いて刀を体の大きい男の背に向けてる…。
『そこまでにしておいた方が身のためだよ?』
『…誰だ?お前?』
一人が沖田さんを背にしたまま話かけている。女の人は怯え震え上がっていた。
『沖田。あんたは?』
『仲川。沖田とやら…お前も刀を納めた方が良いぞ?』
『それは出来ない申し出だなぁ』
『俺は林田だ。仲川の謂うことを利いた方が良いぞ?見る限りお前は若い…』
『それも出来ない』
『おめぇ、死にてぇのか?』
沖田さんが二度の否定をすると林田と名乗った男が刀を沖田さんへ向ける。
彼もまた、いつもの癖で相手を挑発してしまう。
追い付いたあたしは彼女の方へサポートに入る。二人は沖田さんに気を取られている隙に…。
『こっちへ…』
『あ…あ…』
あたしは何とか彼女を大きな木のある方へ
誘導させた。この木の陰に隠れていれば
ここはしのげるはず。
斬られていた人は息があるのだろうか?
心配になってしまう。
キイィィィンッ!
ヒュンッ!
どうやら始まったらしい。
大丈夫…だよね。
『あ…あの…』
『あ、大丈夫ですか?怪我は?』
『有りません。助けてくれて有り難う御座います…私はチエと謂います』
『いえ…何があったんです?』
『私にも何が何だか…此処へ着たら彼がいきなり倒れて…よく見ると刀が…彼の胸を貫いていたんです…』
『……』
彼女の言葉は絶命を意味していた。
『刀が抜かれるとそのまま倒れて…知らない二人が私に襲いかかろうとして…』
『あの…彼とは…』
『近々一緒になる方でした…』
『…そんな…なのに…えと…何か訊いていませんか?』
訊くと彼女は口に両手を当てながら
話してくれた。
『一つだけ…悪い輩に追われていると…隠さず話してと謂うと…彼はこう話してくれました。”ある日仕事終わり、家へ帰る支度をしていたら外で何やら揉めているようだった。
見ると、大きい体をした男が無差別に
人を斬っていた。その時顔をお互いに見てしまった”と…』
『…人斬りとか…』
『今思えば私もそうだと思います…ただ…ただ顔を見てしまっただけのに…どうして…』
この江戸で何が起こっているの?
どうして無差別に斬るのだろう?彼は顔を見ただけ。
もしかしたらそこに居た人物は一人だけでなく、数人居たんじゃ…?
何かの取引をしていて、それを見たか見ていないのか判らないけど…通り過ぎた人を
斬った…。そこを彼女の彼がそこだけを
見た。偶然に偶然が重なっただけ…それなら狙われる訳が判らないでもない。
京でも度々そういう出来事はあったし…。
キイィィィンッ!
『鈍ってなくて良かった!ふんっ!』
キイィィィンッ!
ヒュンッ!
ヒュンッ!
沖田は相手の攻撃を見事にかわす。
久し振りに刀を握った為か
玩具で遊ぶ子供の様子だ。
『お前何者なんだ…はぁ…はぁ…』
『仲川…こいつ…やれるぞ…』
『僕?そうだね…世の治安を守る者。とでも謂っておこうかな?』
『何が治安を守る者だっ!斬れっ!林田!』
『おうっ!』
林田が沖田へ刀を構えながら
向かってゆく。
また沖田総司は”斬れ”という言葉に反応を示した。
『…斬られる訳にはいかないんだよね?
それに…斬るのは僕の得意分野なんだよ…』
冷酷な目で林田をとらえ、刀を倒し一振り。
男は砂浜に倒れ込んだ。
そして沖田は仲川という男へ視線をずらす。
『世のゴミだろうけど、命だけは奪わないから安心しなよ?峰打ちだから?奉行所へぶち込んであげるよ』
『なん…ふざけるなっ!』
(峰打ちであいつを気絶させたのか…刃先だったら…)
『ふざける?誰が?』
沖田と仲川は刀を構えたままの姿勢で
互いの隙を狙う。
『それと…どうしてそこに人が死んでるのかな?刀を向けた時、あんたの刀に残った血が付着たけど?』
『こいつは取引現場を見ていた可能性があるから消したまで…俺は顔を見られていたのでな…』
『ろくに確認もしないで?』
『殺されたくない奴は”見ていない”と謂うだろう?』
『まぁね。けれど本当に知らないで居たのに斬れたなんて洒落にならないよね?
それと…あんた弱いけど本当に人斬り?』
沖田の挑発に仲川が刀を振り回すと
走り出し振り下ろしてきた。
沖田は刀でそれを受け止め、相手を突き放す。
『本当弱い…クス…』
また沖田が再度向かって来た仲川
すかさず刀を横へ振ると仲川も倒れた。
そこへ奉行所の見回りがあの時と同じ様に騒ぎに気づき駆け寄ってきた。
一人は智香とチエの方へ、もう二人は沖田の居る浜辺へ。
智香がいる方へ駆け付けた一人が声をかけてきた。
『何があったのか話していただけますか?』
『『はい』』
チエさんは此処へ来てすぐの事を
話し、あたしも後の事を詳しく説明した。
沖田さんも訊かれているのだろう。
時々こっちを見ている。
全て話終えるとあたし達も沖田さんの居る
砂浜へ戻る。
『無事で良かったよ』
沖田さんがあたしの頭を撫でてそう謂ってくれた。
けれどチエさんの彼は…。
先程あたしとチエさんの話を訊いた人が
残り二人と話していた。
聞こえてくる話だとやはり何か取引をしていた所を見られた可能性だとか耳に入ってしまう。
読み通りだった…。
彼女の気持ちを考えると…辛い。
目の前で旦那さんになるはずだった人が
殺されるなんて…。
突発的に後追いなんてしなければいいのだけど…間違った事をしないで…。
第七章も読んでいただき有り難う御座います。次回、またも未定ですが
夕方か明日には投稿出来る予定です。
邪魔が入らなければ…ですがm(_ _)m
でゎ、また次回で(^_^)ゞ




