第六章 桃の花
今回は老夫婦の話が中心となります。
短いですが良かったらどうぞ(*^^*)
翌日、氷川さん夫妻と五人で
タエさんが勤める茶屋へ向かった。
チヨさんのは土方さんが背負い
順三郎さんは沖田さんと並んで歩く。
あたし?
あたしは彼等の前を歩いてます。
江戸の梅も桃の花も素敵。
未来では梅の木が病気にかかってしまう…。出来ればかかって欲しくないよね。
前を向いて歩いていると
土方さんが後ろから話しかけてきた。
何だか…あまりチョロチョロするなとか…
えっと…あたしってそんなに子供みたいなんですか?!
失礼なっ!
土方さんに突っ込みを入れると
優しく笑ってくれた。
『俺の妹ならヘラヘラするんじゃねぇよ』
『はぁーいっ!』
『ったく…騒がしくてすみません』
『いいえ、私は感謝で沢山です。知り合ったばかりのこんな老人を背負って…』
『なぁに気にする事なんかないですよ?
俺と智香が勝手に決めた事なんですから。それに…総司が順三郎さんから
訊いてましたよ?…桃の花の事…』
『…まぁ…覚えていたなんて…』
『それくらい、チヨさんを想ってる証でしょう?…前をチョロチョロしてる智香もそうです。勿論総司も…』
一足早く着いたあたしはタエさんを見つけ
両手を互いに合わせ笑顔で挨拶をしていた。
今日茶屋へ来た目的を話すと
中へ戻り、戻って来た。
タエさんの手には桃の花があった。
綺麗に咲いている…。あたしはその桃の花にみとれていた。
『綺麗…』
『実は少し前に少し貰ったの。この花をお庭で大切に育ててる方が居て、桃の花が好きって謂ったらくれたのよ。流しみたいだけど、そのチヨさんていうお婆さんに』
『いいの?!あ、じゃぁ…』
タエさんの耳をかりてちょっと内緒話。
だって、そこまで着てるから。
話し終わるとタエさんが小さく頷いてくれた。あたしも頷き返す。
『何話していたんだ?』
土方さんはチヨさんを長椅子へ降ろす。
背負っていたので肩でも動かすと思えばやらなかった。
若い証拠?なのかな?それとも男の人って
そうなの?…かもしれない。
遅れて沖田さんと順三郎さんが到着。
『にひひぃ〜』
『なんだ?…何か秘密って事か?』
『はい』
『何がです?』
沖田さんが気になったのか順三郎さんと
目を合わせてから訊いてきた。
勿論秘密。
だってサプライズだもの!
順三郎さんはすぐ知らされるけど。
好きな人から花をプレゼントされるって
嬉しい…だろうし、憧れる。
あたしは貰った事がないから…。
『茶を頼む』
『畏まりました』
土方さんが注文するとタエさんは
先程と同じく中へ入っていった。
そうそう、此処の草餅とっても
美味しいんだよね。前に沖田さんと来たとき食べたもん。あの時は今日より少しだけ
寒かったなぁ。そうだ…その時にあたしは
”松本先生のお手伝いさん”とかになってたって事を知ったんだよね。
山南さん、教えてくれれば良かったのに。
店の両サイドに桃の花が
また綺麗に咲いてる。まるであたし達と
お店を囲むかのように…。
チヨさん、喜んでくれてるかな?
あたし達の向かいに座っている順三郎さんの隣りで両手を合わせて喜んでいる姿があった。
まるで品の良い何処かのお姫様の様に…。
『喜んでくれてるねチヨさん』
沖田さんが右手で身体を押さえ肩に
触れるか触れないか首を傾げ二人を見ていた。
土方さんもあたしの隣りで沖田さんと違って足を組み両腕を前に組んでいる。
そう。あたしは真ん中。
『嬉しいです二人と知り合って全然浅いのにこうも喜んで貰えるなんて』
『うん』
『そうだなぁ』
話しをしている途中タエさんが
手招きをしていた。
あたしは立ち上がると彼女の居る店の中へ入った。
『此を順三郎さんへ』
『文?』
タエさんが微笑むと書いてある内容を教えてくれた。
訊くとあたしはO.K.サインを出していた。
伝わったかな?文を受け取ったあたしは
順三郎さんにこっそり渡すのに成功した。
彼は文をみるとすぐ、中へ入って行った。
『あれ?順三郎さんは?』
『中へ入って行ったな?』
沖田さんと土方さんが後ろを見ると
順三郎さんが右手を後ろへしながら
出て来た。二人は何も訊かず首を傾げている。順三郎さんはチヨさんの前までゆくと、隠し持って来た桃の花を差し出した。
『婆さんに…』
『まぁ…!』
彼は初めて花を贈るのか判らないけれど
恥ずかしそうに桃の花を手渡した。
チヨさんはこのサプライズに感激してくれている。二人を見ていると何だか胸が暖かくなる。
そのサプライズが成功すると、お茶と草餅が運ばれてきた。氷川さん夫婦には食べやすいように一口位の大きさの草餅になっていて五つある。
土方さんと沖田さんは今になってサプライズに気付いた。文久ではサプライズをなんて謂うのかな?ま!いいか草餅美味しいし。お茶と草餅を堪能すると土方さんは奉行所へ二人を連れて行った。
鐘の音を二回ほど訊くと土方さんが結果を
知らせに戻ってきてくれた。
話は”見張りを二人つけてくれる”と謂っていた。
それから二週間後。
チヨさんは老衰でこの世を去っていってしまった。一人になってしまった順三郎さんは、あたしと沖田さんに”良い思いでが出来た有り難う御座います”と謂ってくれた。
『あの時沖田君に出逢って無かったら、婆さんの喜ぶ顔が見れなかった。本当に感謝しています』
順三郎さんは頭を深々と下げた。
あたしはただ泣くことしか出来なくて
何の気の利いた言葉も謂えなかった。
亡くなる二週間の間、一緒にお茶を飲んだり、順三郎さんと出逢った話も沢山訊いた。その話しをする彼女はとても優しくて…幸せそうで…。
『本当に有り難う御座います…』
『たまに、また茶屋へ行きましょう。智香ちゃんも一緒にね?』
最後の言葉はあたしへ。
顔を上げると順三郎さんと目が合う。
彼も沖田さんと同じ様に柔らかく微笑んでいた。
『もう泣かないで…天国の婆さんが悲しくなる…』
『そうだね…』
あたしは涙でぐちゃぐちゃになった顔で
笑顔を作って見せ、”はいっ”と返事を返した。
如何でしたでしょうか?
今回も有り難う御座います(*^^*)
次回、まだ決まっていません。
決まり、出来次第投稿致します(^-^*)




