第三十九章 もう少し…
今日は休憩なしで沢山歩いた。
土方さんと沖田さんはまだ行けそうな感じだ。あたしは足が棒のようになっている…。
ああ。もう一歩も歩きたくない…。
自分で謂っておいて何だけど
御免なさい。
『智香、もう歩けないだろう?京までもう少しだが宿を探すか?それとも野宿するか?』
『宿…探しましょう…』
『ほら、おぶってあげる』
沖田さんはしゃがみこむと
あたしへ背を向けてくれた。
『甘えとけ。明日も歩くんだ』
『あ、はい…では、お願いします…』
『うん』
沖田さんがあたしをおぶると
立ち上がる。
正直、彼の息つかいが近くで感じる事が
何だか…恥ずかしい。
『日も沈んできましたね…』
『ああ。おっ、そこに宿が有るな』
『決まりですね。部屋に行ったら少し足を指圧しないとね?』
『面目無いです…』
『明日歩けないようだったらお仕置きが必要だな?』
『えぇッ?!』
『だって智香ちゃん、土方さんが気を使って休憩するって謂ってくれてるのに、“歩けます!”なんてたんかきったんだよ?』
『そうだぞ?』
『歩きます!絶対!』
そんな会話をしながら
あたし達は二件目の宿へ入る。
中へ入ると何だか高そうな宿…。
土方さん…やっぱり野宿します?
あー…女の人が出てきた…。
『いらっしゃい。三名様で?』
『ああ』
『では、ここへお名前をお願いします』
土方さん…大丈夫なのですか?
何か普通にしてますけど
大丈夫なんですか?!
『あら?誰かと思えば…』
土方さんが書いた文字を見たのか
定かではないけれど顔見知りのようだ。
『歳三さんでしたか!お久し振りです』
『思い出して頂けましたか?良かった』
『お知り合いみたいですね?』
『みたいだね?』
『此方の方々は…?』
『ああ、此方は沖田総司。そして、そいつにおぶられているのが総司のいい名付けの篠山智香だ』
『まぁ!』
『『土方さんッ!デタラメやめてくださいッ!』』
『あら、気も会うなんて素晴らしいわ!』
『それと、この方はここの女将だ』
『宜しくお願い致します。うちの宿、高そうに見えるみたいで見ての通り、お客さんが少ないの…ゆっくりしていってね』
そう謂うと女将さん直々に
部屋まで案内してくれた。
因みにあたしはまだ沖田さんの背中…。
『では…何か御座いましたら何なりと…』
『有り難う御座います』
女将さんは襖を閉めると部屋を後にした。
『あのぉ…沖田さん…』
『ん?あ、ごめんごめん』
気づいてくれたらしく
彼はあたしを下ろしてくれた。
『部屋、二つだね』
『あの女将は気が利いててな。智香が居るんでこの部屋に通してくれたんだろう』
『へぇ…それに綺麗な女将さんでしたね』
『結構もてるのは確かだな』
荷物を下ろすと
土方さんがあたしの脹ら脛をマッサージを始めてくれた。
『有り難う御座います。土方さん…』
『気にするな。パンパンじゃねぇか…こんなになるまで…』
『明日には京へ入るけれど、間にもう一泊しといた方がいいね。そんなに急ぎではないんだしさ』
沖田さんが謂うと土方さんもそれに賛成の様子だった。確かにあの距離を黙々とあるった訳で京までは本当にもう少しだ。本来はもっと時間がかかると、土方さんは謂っていた。
こんなに早いのは全然ないらしい。
だけど、江戸を出て二日で今ここに居る。
二人が謂うには
ちっとも苦ではなかったとか…。
確かに身体が軽かった。
ただ、歩く事が楽しく感じた…
沖田さんも“不思議だ”って謂っていたし
土方さんも謂っていた。
あたしがこの時代へ着てから
何かが変わったと屯所の誰かが謂ってたなぁ…。
『なぁ、お前何かしたのか?』
『あたしがですか?』
『僕も思ったよそれ』
『特に何もしてませんよ?いつも通りです』
『ふぅん』
『そうか…智香…謂っておくが本来江戸から京までは数日では辿り着けない。本来何十日と歩き続けないと此処までは来れん』
『はい…』
『自棄に身体は軽かったしな…お前、本当に人間なんだよな?』
『化け物見る目で見ないでくださいよ!あたしはまとまな人間ですッ!』
『ぶッ!』
『沖田さん!』
『化け物って…あはは…』
『あーもう!って土方さんまでぇ!ふんッ!』
『『怒った…』』
土方さん!楽しんでませんか?
あーもう知らない!
この日の晩は女将さん交えて四人で呑むことになった。あたしはお酒は強くないのでなめる程度にしておく。
土方さんと沖田さん、女将さんはあたしより歳上ということもあるのか
体質なのかお猪口に注がれる。
女将さんの話によると
土方さんと山南さんは旅の途中よく
この宿を利用しているみたい。
初めて二人が来たときは凄い雨の日だった…。
無論、二人はずぶ濡れだったので
すぐありったけの手拭いを渡した。
翌日心配で二人の様子を見に行った女将さん。襖の前で声をかけても返事がないため中へ入ったそうだ。
『あの時お二方高熱で、びっくりしちゃったわ…』
『その節は申し訳ありませんでした』
『土砂降りじゃそうもなりますよね?』
『ええ。なので往診を頼んで、暫くはうちで安静にしてもらって』
『あれには参りましたよ。もうごめんだ』
『明日、発たれるのでしょう?今日はもうこれで御開きに致しましょう。また、会える日を楽しみにしてます』
翌朝あたし達は女将さんに別れの挨拶を済ませ、宿を出た。
足の方は土方さんのマッサージで全然大丈夫だ。
京の都までは本当にあと少しだ。
早く皆に会いたいな…気持ちだけ先走ってる。この一年新選組の皆に会えていたけれど、やっと皆の待つ屯所へ帰れる。
そう考えると足早になる。
近藤さんはああ見えて風邪をひきやすいから心配だ。無茶してなければいいけれど…。
山南さんは仕事真面目過ぎてちゃんと休みをとっているか…。
原田さん、永倉さんに平助君は
隙を見て遊びに行ってしまうし、その途中浪士に絡まれ怪我をして帰ってくる事も…。
斉藤さんはしっかりしてるから安心だけど、面倒見の良い彼はすぐに稽古や練習を手伝う。あまり無理をしないから大丈夫。
樋口さんも斉藤さんと同じく真面目だから心配はしていない。
山崎さん達は相変わらず任務を果たしているんだろう…。変装もうまいし。
隆夫は特に心配はしてない。
そういえば、動物達は大丈夫かな?
病気とかなかっただろうか?
もう少しで帰ります!
皆さん待っていて下さいねッ!
次回はやっと京へ帰って来た話と
なります。
いつも読んで下さってる方々に
感謝申上げます。
有り難う御座います。




