第三十二章 鬼の真実
アクセス有り難う御座います。
今回は“鬼”をテーマとして書き上げてみました。
何故”鬼“なのかずっと考えていたので…。
樋口さんが来たということもあり
土方さんは彼の分もこしらえた。
少し残っていたのでどうしようかと考えていたらしく土方さんにとって樋口さんの訪問は助かった。
焦げを指摘されたけれど樋口さんも“美味い“と謂ってくれた事で土方さんはちょっぴり恥ずかしそうだった。
四人での食事が終ると沖田さんが食器を下げ、洗い場へ向かった。
『一体どうしたんだ?文一つ届いていないが?』
『江戸には祖母の墓があるんでな。立ち寄らせてもらった』
『そっか…』
『ああ…土方、近藤から文を預かってきたんだが…』
『近藤さんから?』
『大した文ではないがな。恐らく寂しいのだろう?一番組の稽古中何度も道場へ来ていたからな』
『始まったのかぁ…ああ見えて俺が居ないと寂しがるんだ』
土方さんはあたしを見て近藤さんへ対して呆れ顔をつくった。
しってますよ。土方さんと山南さんで隊務で出ているとき沖田さんみたいになっていましたから。
初めての時は意外な一面を知れて嬉しかったけれど三日続くと見てるこっちが呆れてしまう。子供の近藤さん。
正直子供は沖田さんで間に合ってる。
毎日毎日飽きもせずあたしと斉藤さんへちょっかいばかり出してくるし、…斉藤さんなんて“判った、手合わせをしてやる“だもの。
『そうだ…前から考えていたんだが何故土方は“鬼の副隊長“と呼ばれているんだ?』
『それか?訊いてどうする?』
『いや、気になっていたもんでな…話したくなければ無理にとは謂わん』
『隠すって事か?別に教えてやっても構わないぜ?少しばかり、らしくねぇ出来事だが…』
『『らしくない?』』
あたしと樋口さんは目を合わせる。
何故らしくないのか?彼もそう思ったに違いない。土方さんは口元で軽く笑うと自分が鬼の副隊長と呼ばれるきっかけとなった事をポツリ話し出した。
ー俺が鬼になったのは初代局長と近藤さんが関係しているんだ。あの人の行いは悪かったことは二人も知っているだろう…彼の暗殺にかかわった奴等は知っている…暗殺の計画を実行する際、俺は芹澤局長に呼び出されたんだ。夜遅かったな…ー
『芹澤局長…俺をお呼びで?』
『おお。来たか土方…まぁ、そこへ座れ』
ー俺は謂われた通り芹澤局長の部屋へ行き、向かい側に置かれた座蒲団へ座った。彼が溜め息をつくと俺に遅れて近藤さんも部屋へやって来たー
『揃ったな。土方、俺は自害を考えている』
『自害?!』
『近藤、お前は薄々感づいて居ただろう?勿論、俺もお前等が考えている事は何と無くだが…。そこでだ。土方、お前は今まで通りの優しさは棄てろ』
ー俺の隣に座る近藤さんは顔色一つ変えねぇで芹澤局長の話を淡々と訊いていたのをよく覚えてるー
『トシ、局長が何を謂いたいか判るか?』
『判らねぇよ…優しさを棄てろとか…』
『土方、俺はなぁ?お前に鬼になれと謂いたいんだ。此所を束ねる鬼の副隊長に…』
『鬼に?』
『ああ。鬼だ。俺を殺るとき恐らくお前は躊躇するだろう。それはお前の優しさと戸惑いから生まれるものだ。武士ならばそんな思いは絶ちきり鬼になり俺を殺れ』
『局長…』
『…判りました。貴方がそう仰るならば俺は“鬼“になりましょう』
『トシ…』
『いいんだ。近藤さん…』
ー彼は決行の日までは予測していなかっただろう。今となっちゃぁ知っていたかも判らねぇが。そしてその翌日だー
『芹澤局長が飲み屋から出てきたら林の中で俺達は待機だ』
ー近藤さんが色々と俺達へ指示をくれた。まぁ、大砲を使ってしまう芹澤局長には皆がうんざりしていた事は確かだ。しかし、仲間を殺ると謂うことは気が引けていただろうな。総司には一番嫌な思いをさせちまった。
あいつは芹澤局長を好いては居なかったがそれなりに慕っていた部分があったからなぁ…。もしかしたら彼を近藤さんだったらとか考えて居たかも知れんが。
局長が飲み屋を出て頬を赤らませながら林の中へ入ってきた時、一斉に取り囲んだよー
『ほぅ…今晩だったか…』
『芹澤局長…俺達はあんたを此処で成敗する。今までの行いについてあんたは少々やり過ぎた!この土方歳三がっ!』
『そうかぁ…やられっぱなしもなんだ…俺も刀を抜こう…』
キイィィィィンッ!
ヒュンッ!
ーその直後俺達全員芹澤局長へ刀を向けたよ。彼は久し振りに刀を使ったが実力は衰えていなかった。一振り一振りに今後の事は任せたっていう想いが伝わってきたよ。総司の刀をぎりぎり交わし、直ぐ様総司へ刀を振り降ろす。近藤さんも総司に参戦。
その後ろかは斉藤。此も交わされちまった。瞬発力が勝っていた人だったからな…少しは手こずったが俺は隙を見つけた。
途中局長が言う通り躊躇しちまいそうだったが…俺の刀は彼の腹を貫いたー
『ぅ…よく…やった…土方…はぁ…はぁ…
よく聞けお前等…此れからの…局長は……近藤…勇…ぐは…』
ー彼は俺の耳元で必死に後継者の名前を出していったー
『副隊長…土方…歳…三……。土方…お前は此れからは…鬼の…副隊長…だ…局長を支え隊の奴等を纏め…ろ…斬る時は……鬼に…なれ…』
『…局長…』
ー俺が刀を抜くと彼は膝から崩れ倒れたよ。血を浴びた俺達はそのまま息耐えた芹澤鴨をじっと、月明かりの中…最後の別れをしたー
土方さんの話は此処で終る。
あたしは彼の顔を見るけれど言葉は
出てこなかった。
隣に座る樋口さんも土方をじっと見るだけ……。
沈黙を破ったのは沖田さんだった。
柱へ身体を預けながら立っていた。
以前あたしが沖田さんと二人で居たとき
芹澤鴨局長の話を訊いたことがあった事をふと思い出した。
『確かにそれ以来土方さん厳しくなりましたね』
『総司…いつからそこに居たんだ?』
『いやだなぁ?話始まるちょっと前からですよ。けれど、あの時は本当謂うと気が進まなかったんですよね?確かに彼は色々とやり過ぎてましたけど。あ、それと土方さん?一つ訂正していいですか?』
『なんだ?』
『僕の中での最初から局長は尊敬する近藤さん。副隊長は土方さんですよ?まぁ、彼に近藤さんを重ねたのは認めますけどね?後それなりに慕っていた部分は確かに有りました』
『土方…沖田…』
『ん』
『あ?』
『お前等も苦労しているな…』
『人生何が有るか判らないしねぇ』
『お前の場合全部判らねぇよ』
『酷いなぁ土方さん』
樋口さんが何気無く立ち上がり縁側まで歩き空を見上げる。
『晴れたな…』
『本当だ…晴れましたね』
あたしは樋口さんの言葉に応えた…。
太陽がいつの間にかあたしの部屋を暖めていた…。
土方さん、鬼の役目も辛いかも知れません。けれど、土方さんにも沢山の仲間が居ます。支え合っていきましょう…。
読んでくださり有り難う御座います。
相変わらずの作品です…。
次回 第三十三章 未定です。すみません…。。。




