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第三十一章 沖田と土方

今回久し振りに

彼が登場します。


戦闘シーンは有りません。

『はぁー…』




縁側で一服中の沖田さんは一人で

曇った空を見上げながら溜め息をついている。

あたしは土方さんと部屋からその様子を見ていた。最近やたらと溜め息が多い沖田さん…いったいどうしたのかな?

土方さんはあたしが帰れば元気になるとか謂ってたけど退院して暫くしてからは

ずっとこの調子だ。





『沖田さんどうなされたのでしょうね?』


『さぁな?俺にこっぴどく叱られたからかもな?』


『え?』


『お前が入院してる間一人しょんぼりしやっがってんで渇を入れてやったんだよ』


『けど、それが理由とは限らないんじゃ…?』








あたしが布団から出ようとすると

土方さんに止められた。





『まだ傷が塞ぎきって無いだろう?動くと傷に障るぞ』


『…はい。あの…土方さん?』


『なんだ?』


『何か焦げ臭いんですけど…』


『しまった…』






土方さんはバタバタと台所へと向かった。あたしは悄気(しょげ)てる沖田さんへ声をかけてみた。






『沖田さん?溜め息ばかりですよ?』


『うん?…だって智香ちゃんと騒ぐこと出来ないじゃない?』


『え?』





心配して損したっ!

悪戯な笑みであたしを見てるっ!

あーそう言うことでしたかぁ?確かに何かと沖田さんに突っ込んでましたよ?

けど…要するに“つまらない“って事ですよね?!






『…心配して損しました』


『ごめんごめん。けど、本当もうあんな真似は二度と御免だよ?僕、土方さんが居なかったら相手の事刻んでたかもしれないんだから』


『それは…本当に申し訳なく思っています。だけど、あたしも沖田さんが目の前で…あ…』


『でしょう?君が嫌なことは僕も嫌なんだよ。勿論土方さんだってそれは同じはず』







縁側から此方へ来て胡座をかく沖田さん。そっと手を伸ばすとあたしの頭を撫でてくれた。





『土方さんには本当こっぴどく叱られたよ。はは。ハリセン持ち出して僕の頭バシンだよ?何処から出したのか…ここ、瘤出来てるんだよ?』






沖田さんは話ながら前頭葉を撫でる。

髪の毛を少し持上げるように見せてくれた。確かに…たん瘤有りますね。






『土方さんには感謝しないと』


『たん瘤のプレゼントをですか?』


『違うよ…全く。こんなプレゼント要りません』


『あの…あたし…実は…』


『なぁに?』


『いえ…なんでも有りません』






彼の顔を見ていると真実を告げる勇気よりも胸が苦しくなった。

彼の優しい表情はいつもなら温かくしてくれるのに…今日は、今は違う。




医師に謂われた言葉。

退院前に土方さんと一緒に診察室へ呼ばれた。






ー診察室ー





医師は少し暗い表情だった事から

嫌な予感はしていた。あたしは沖田さんの身体の事だろうと思っていた…。






『篠山智香さん…』


『はい…』


『貴女の身内に持病の方は?いらっしゃいますか?』






何故?




『はい…。父が神経の病気を…』


『こいつに何か?』


『はい。最近やたら気怠かったり、頭痛

等は有りませんでしたか?』


『あ…』


『もしかしたら貴女もその病気かも知れません。この時代なので病気を治す薬といったものは限られてしまいます。あまり御無理なさらずに…沖田君の事もありますし…』




『…判りました』


『智香…』


『大丈夫ですよ!前向きでないとどんどん悪くなりますよ!』







この時脳裏浮かんだ病気はCNMS。

まさか自分がそれになるなんて思ってもなかった。確かに悪い姿勢で作業もしていたけれど…。






『どうしたの?』


『お腹が空きました!』


『へっ?』


『なんだ、総司ピンピンしてるじゃねぇか?少し焦げちまったが食べようや?』


『土方さん…初めてじゃないですか?僕はたまにやりますけど』


『お前と一緒にするな。智香、食べるか?』


『はい!』







元気良く返事をすると土方さんが

柔らかく笑みを浮かべた。

鬼のめにも涙では無いけれど、鬼も微笑むといった感じだろう。



こんな事口が避けても謂えないけど…。

土方さんは沖田さんと二人で支度をしてくれる。土方さんの声でお盆とか聞こえてくる。あたしの部屋で三人で昼食をとるためだ。






『お待たせ智香ちゃん』





沖田さんは三人分の善を持ってきた。

それを溢さず丁寧に其々の席へ並べる。

少し遅れて土方さんが三人分のお茶を持ってきてくれた。





『悪いな焦がしちまって』


『いえ、平気ですよ』


『あ…僕のがっつり焦げてる…』


『自分で盛り付けたジャガイモだろう?』


『そうですけど…ま、いいか』






空は残念な曇りだけど

こうして三人食事が出来るだけで楽しいし好き。

土方さんが味付けしてくれたジャガイモの煮付けはあたし好みの味だ…。

勿論、沖田さんもこの味付けは好きな方だ。






『焦げてるけど美味しいや』


『だろう?』


『このニンニクの素揚も美味しく出来てますよ?』


『そりゃぁ良かった』






季節は秋。

こんな一日があっても良いよね?

そればかりだけど。


病気の事は沖田さんに…もう少し黙っていよう。心配する顔を今は見たくないし、それに現実彼の病気は良くなってきている。だからこのままでいたいから…。




『あっつ!』


『何してるんだ智香?』


『ボーっとしすぎだよ?』


『だってぇ…そこに樋口さんが…』


『『樋口ぃ?』』






あたしが見る方へ二人も視線を送る。

狭い庭に樋口さんが刀へ手を休めるように此方を見ていた。





『やっと気づいたか?そんなじゃ敵が攻めてきても殺られるだけだぞ?』


『あんたの気配の消し方が空気なんだよね…』


『まぁ、上がれ』







樋口さんはあたしを見ると“無茶はするな“と、一言。

あたしはそれに素直に応えた。







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