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第二十九章 暴走

前回の続きです。

智香の脇腹から刀が抜かれる。

沖田の目には今崩れ落ちる智香の姿が映る。膝を着くと彼女の体は地面へ着いた。






『何で…』





呆然と立ち尽くす沖田。

倒れた智香へそろりと近づく…。

そしてやっと智香を刺した男へ目をやる

男はふらつきながらも口元で笑っていた。


それを目にした沖田は、自分の刀を無言で再度手に取り一振り…腹を突き刺す。沖田は叫び声をあげながらも斬り…苦痛を与えた。



そして男は倒れこむ。

その後も彼の暴走は続く。屋敷に上がり込むと、土方が相手をしている奥田を目掛け刀を振り下ろす。

くるりと回りながら相手を斬る。



血飛沫が顔へかかる。


奥田は抵抗しながらも腹を斬られる。

何度も何度も繰り返す。土方は沖田を止めようと試みるが彼の目と叫び声は

尋常ではなかった。



それを目の当たりにした土方は智香に何かあったと悟る。








『なんであの娘が犠牲ならなくちゃいけないんだっ!あんた達の目的は僕のはずじゃないのかっ!』


『総司!もうやめろっ!奥田はもう動けないだろうっ!いい加減にしやがれっ!』






土方は沖田の腕をやっとの思いで掴むと彼の頬へ拳を当てた…。

息をきらしながらやっと我にかえる。









『土方…さん…』

『此処は俺に任せておけ。お前は智香を医者へ連れていけ!いいな?!副長命令だっ!』




『…はい…』







沖田は刀に着いた血をはらうと鞘へしまう。そして流血している智香の所へ行き医者まで運んだ。








『どうして僕を庇ったりしたの…』

『…沖田さん…』

『いいから喋らないで…』

『……』






智香を運ぶと直ぐに治療が始まった。

勿論奉行所の連中も駆けつけた。

家の方にも数人やって来ているだろう、そんな事を考えながら智香の事を思う沖田。







『沖田さんらしくないじゃないか…』






奉行所の松坂が沖田へ話し掛ける。







『僕らしいって……?』

『え?』


『僕らしいって何ですか?これが沖田総司ですよ…あの娘が巻き込まれて、感情的に刀を振り回した…それが僕ですよ…』


『貴方はそう思ってるかも知れませんが、沖田総司は冷静に判断出来るお方です。確かに大事に思っている人がやられれば俺だってそうなるかも知れません。しかし、それは奉行所に勤めるからこそ…憧れが居るから歯止めになるんです』



『…っ!』


『やっと気づかれた様ですね?沖田さんにも一人居るでしょう?新選組局長、近藤勇が…』


『近藤さん…』


『そうです…』


『…一人にしてくれないかな…何処にも逃げたりしないから…』


『ではこの外に居ます』







そういうと奉行所の者達は部屋の外へ出ていった。沖田は自分の両手を膝の上へ置きながらじっと見る。


確かに智香は自分にとって大切な存在だ。しかし新選組局長近藤勇も同じくらい大切だ。自分を忘れ狂ったか様に奥田ともう一人へ刀を向けた。


近藤に迷惑をかける羽目になってしまった。何故…?しかしこうも考える。

目の前で大切な女性(ひと)をやられたら誰にしろああなってしまうのでは?


憧れの人の顔が一瞬でも頭を横切ったら

止められていた?

彼の頭の中は混乱していた…。

頭を抱え涙を流す…。






一方、土方の方はというと集まっていた野次馬を奉行所の者が下がるよう命じていた。そして、目撃者は居ないかと呼び掛けた所金魚売りの欽二と名乗る男が見ていたと証言した。


後々も数十人出てきた。

それは土方が見廻りから帰って来た時だった。







『彼が帰宅した直ぐに二人の男がその人に斬ってかかってきたんですわ。無理矢理中へ入ろうしたんで、刀を出し戦う事になったんでさぁ…そうしたら一人は裏へ回り込んで此処でやり合ううちに戸を倒す形で中へ…』



『土方さんとの供述と一致か…』

『どうやら沖田さんを狙っての犯行の様ですね』





奉行所の二人が確認し合う。

確かに沖田狙いだ。





『犠牲に遭ったのは一人だけで宜しいでしょうか?』

『ああ』





土方は短く応えると奥田が倒れていた箇所をじっと見る。








『総司はどうなる?』

『命を狙われたと謂うことも有るので重い罪にはならないでしょう…』

『暫くは奉行所になりますけどね…』


『だよな…はぁ…江戸へ着いて早々此じゃ先が思いやられる』

『『土方さんも大変ですね…』』






数時間後、智香は何とか一命をとりとめた。もう少し刀がずれていたら致命傷になっていたかもしれないと、沖田は告げられた。彼女は暫く間入院を余儀無くされた。






『会っても大丈夫かな?』





沖田が医師に聞くと首を縦に振ってくれた。そっと中へ入る。

ベットの上で寝ている智香が居る。





『痛かったでしょう?』

『…はい…』


『ごめん…僕暫く奉行所へ行くことになっちゃってさ…』

『え…?』

『大丈夫。向こうも理由は知ってるし…君が倒れた後殆んど覚えてないんだ…けど暴れたのは確かだよ。君をやった奴は…』


『沖田さん…ごめんなさい…あたしのせいで…あたしが…行動にでたばかりに…』


『確かに、その行いは許さないよ。もう二度とやらないって約束してくれる?』


『はい…』


『良かった。あーあ。土方さん物凄く怒ってるだろうなぁ…ふぅ…僕も気を付けないと…』







沖田さんはそういうといつも通りあたしの頭を撫でてくれた。

けど…この時代では触診が主なのかな…それだけで判るのかな…?

医師はあたしが提案したやり方で傷口を塞いでくれた…。最初はもう反対だったけど



あたしが強く求めたため納得してくれた。ベットの上のあたしを縄で縛り付けピクリとも出来ないくらい…。

猛烈な痛みだった…。未来には麻酔と謂うものがあるのは患者が痛みで死なない為もあると聞いたことがある。



麻酔の副作用なのか熱は出てしまうけれど、それは一時的。

内臓が無事なら治るならそれでと思ったから先生に無理謂ってお願いしたのだ。

本来は絶対にやらないとか…。






一週間が過ぎると土方さんが迎えに来てくれた。







『取り合えず退院だとよ。ったくお前は総司に似てきやがって…もう面倒は勘弁だぞ』


『すみません…あ…沖田さんは?』


『三日前に帰って来てからボーっとしてるよ。まぁ、お前が帰れば少しは元気になるだろうな?』


『そうですか…それと…奉行所の件は…』


『狙われたのは総司だからな何の罰も何もねぇみたいだ。支度は出来たみたいだな…ほら』







土方さんは話終えるとあたしに背を向けたと思ったらしゃがみこんだ。

おんぶ…ですか…。






『けど…』

『怪我人だろう?早くしろ』

『は、はい…』






あたしはそっと土方さんの背へ体を預けた。沖田さんの背と同じ大きさだ…。原っぱで眠りこけているあたしを、沖田さんは何度かこうして家まで運んでくれたっけ…。






読んでいただき有り難う御座います。

乱筆ですみません。



次回また未定です。

すみません。

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