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第二十三章 山南と坂本

『どうした?山南さん?』





隊務から戻った土方が山南へ声をかける。朝から溜息ばかりついている彼を

心配しているのだろう。


顔色も悪い。

仕方がないのだろう。今日は坂本龍馬が

此所へ来ることになっているのだから…。







『何か悪いものでも?』

『いえ、大丈夫ですよ。それより怪我してるではないですか?』


『何、此れくらいただの掠り傷だよ。それと山南さん…町の問屋が謂っていたんだが坂本がこの近辺で見掛けたらしい』


『そうですか…判りました』

(見つかってしまっている…やはり場所を変えた方が良いかも知れない…)


『それと、もうひとつ』

『はい?』

『年明けに総司達が戻る』

『本当ですか?!』

『忙しくて忘れていたよ。すまん…山南さん』

『確かにここ一月(ひとつき)多忙でしたからね…』

『あんたも身体(からだ)には気を付けてくれ』

『はい。では、少々屯所を空けますが宜しいでしょうか?』

『ああ。問題ないよ』







山南は土方と別れると

屯所を出た。そして足早に坂本を探し始めた。人目につきにくい場所も一緒に探せば良い…。


坂本を探すこと一時間位が経った。







『あんた…山南さんかい?』






後ろから男の声。

彼はきょろきょろと探すが見つからない。男はその様子を木の上から見ながらケタケタと笑いだした。







『こっちじゃこっちじゃ』

『…上…?』

『よぉ。新選組総長山南様』

『坂本龍馬…さん。ですか…悪趣味ですねそんな所から私を観察ですか?』

『なぁにそんな怒らんでも』


『…貴方は何故私達を構うんです?敵視されていることは貴方も知っているでしょう?』







山南は降りようとしている坂本を止める。そのまま隠れていてもらえば都合が良いからだ。坂本は両手を軽く挙げた。山南は巨木の根へ腰掛けた。






『何故です?』

『真面目な話なんじゃ』

『…っ?』

(ヘラヘラとした態度から一変した…)


『わしはの…あんた等とやりあうつもりは、これっぽっちもありゃせん。おまんらはわしを敵じゃ敵じゃ謂うがの』


『争うつもりがないのは貴方が剣豪ではないからでは?それに何かお持ちのようだ…』


『ほぅ…流石(さすが)総長。しかしのわしはただおまんらと話をしたいだけ…』


『命を無駄にしない方が良いですよ?早死になんて…それに局長と副長が貴方と話をするなんて有り得ません』


『そんな事謂わなくても…しかし、声が届くかも知らんぞ?そう思わんか?』


『思いません』


『新選組ちゅうのは冷たいのぉ…』


『此を機に変わればと?』


『そうじゃ』


『貴方、町で問屋に見つかっていましたね?副長が貴方がこの近辺に居ると屯所を出る前に謂っていました。貴方も武士なら少しは回りを警戒するべきです』


『ほぅ。そんなもん見つかっちょったのは判る』


『貴方って人は…』






蝉が騒ぐように鳴くなか

山南と坂本は葉の影で休むようにしている。此処が日向だったらさぞかし暑いだろう。




『貴方は…』

『ん?』

『貴方はまた脱藩するのですね…』

『何を謂っちょる?』

『貴方は静かにしていた方が良いみたいですね…道場へ戻るべきです』

『なんでそんな事あんたが…』






山南は鋭い目を彼に向け告げた。




『でしゃばるなって謂ってんだよ』


『……』





坂本は目を見開き驚いた。

山南の癖を知っていたからだ…。

坂本は山南へ礼を謂うと来た道を戻って行った。




踵を返すと山南も屯所へ戻って行った。

林を抜けると夏の太陽が容赦なく山南をも照らす。






『かかぁー!』



泣きながら母を呼ぶ声が聞こえた。

山南は泣き声の主を見つけると声をかけた。五歳くらいだろうか…男の子だ。目を赤く腫らしているところを見ると沢山泣いたのだろう。




『どうしたのです?』

『お兄ちゃん…はぐれちゃった…』


『では一緒に探しましょう…』




山南は子供の手をとると

歩きながら母親を探しだした。

今日は人を探していると考えながらも蕎麦屋の前で子供の親を見つけた…しかし…様子がおかしい…。



山南は子供を連れながら普通に

母親へ近づいた。






『お子さんが迷子になられていたので

お連れしました。すぐに見つかって良かったです』


『この服隊…あ…有り難う御座います。気が付いたら姿が見えなくなっていたので

…本当に有り難う御座います…』


『成る程…』

『…っ!!』

『そのままで結構です…礼など要りませんから』

(京は治安が悪い…誰かが謂っていましたね…。確かに以前の京に比べると悪くなっている…)





山南は服隊を脱ぐと左腕へ垂らすように

かける。







『さぁ、君はもう泣かないで…』

『うん…有り難う御座います…』





『さて、どうしたものでしょうか…』





その時、丁度良い所に原田の巡察する姿が見えた。また原田も山南へ気付いた様子だ。






『お疲れ様です。原田君』

『お疲れ様です。どうしたんです?こんな所で?』

『いえ…迷子の子供を母親の元へ送り届けたところです今…』

『…何か訳有りって感じですね?』

『誰かに見張られている様子なんです。巡察で何か不審な者は?』

『…五人居ました。あれ?あんた…』






小声で話をしていた時

原田は子供の母親へ目をやると何かを

思い出したのか子を寄せる女を見た。

山南がどうしたのかと訊くと原田達が巡察を始めてすぐ絡まれている所を見掛けた助けたのだと謂う。



子供はその時は側に居た。

原田も母親も子供も覚えていた。

気配を感じた二人は蕎麦屋の中の様子を

伺う。聞き耳を立てている。三人か。





『山南さん』

『はい…三人といったところでしょう』







二人は横目で睨み付ける様に

蕎麦屋へ目をやった…。






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