第二十一章 知らせ
今回は予定通り
新選組内での話となります。
新選組屯所へ一通の文が届いた。
平助は文を門の前で受け取ると
送り先を確認する。
直後彼は慌ただしく近藤と土方が居る広間へ
向かった。
狭い廊下をバタバタと走っていると
出合い頭で隆夫とぶつかってしまった。
『いっ…なんすかまた藤堂さん…』
『だははすまん……それよか智香達から文が届いたんだよっ!』
『あー恒例になってるあれですか…って!狭いんですから走らないで下さいよっ!毎回毎回出合い頭で!』
『悪かったって!』
『だから土方さんに怒鳴られるんです!』
『だから悪かったって謝ってるじゃんかっ!』
それでも隆夫は平助をしかり続けた。
永倉が朝の見廻りを終え両腕を裾の中へ入れながら狭い廊下を歩いていた。
勿論耳へ入るのは藤堂平助を叱る隆夫の声。
場所がL字型の所なので邪魔としか
謂いようがない。隆夫の後ろには列を作っていた。
『まだ終わらんかなぁ…』
『彼はいつも説教が長いからなぁ』
沖田の班の隊士達が呆れ返っていた。
それを知ってか知らずか永倉が隆夫と平助に別の場所でやるよう口を開いた。
気づかなかった隆夫は自分のせいで列を作っていた隊士達へ御詫びをした。
『全く!ぶつかった位であんなに説教しなくてもいいだろ!』
『あー!やめやめ!平助も隆夫に火をつけるな!』
廊下を進みながらまたも永倉から謂われてしまう。隆夫は頼まれた仕事を片づける為途中二人と別れた。
『所でお前は何で走ってたんだ?』
『智香達から文が届いたんだよ。それを土方さんと近藤さんの所へ持ってく途中だったんだ。』
『成る程。俺も同席しても良いか?』
『良いと思うけど土方さんに訊いてくれよ?俺じゃなくてさ?』
『だよな?脳ミソピーマンなお前に謂っても仕様がないよな?』
『新八さん…ひでぇなぁ…』
広間を目指していると山南が部屋から出ては何処と無くそわそわしている。
気になった二人はそれとなく彼へ話かけた。
『ああ…お早う御座います。局長と副長の所へ行かれるんですか?』
『おう。平助が智香達からの文を受け取ったんで』
『途中隆夫にぶつかって散々でしたよ』
『おや、彼の説教を受けていたのですか…それはそれは…お気の毒に…。私も同席します。永倉君もどうぞ』
『はい!』
広間の障子を開けると土方が茶を飲んでいる所だった。近藤は書類へ目を配らせていた。
『土方君、藤堂君が彼等からの文を
受け取ったので此方へ持ってきました。内容によっては集める事になるでしょう』
『判った』
『今度はどんな内容だろうなぁ?ま、適当に座りなさい』
平助は近藤に智香達からの文を
渡す。それを受け取ると早速中身を開いた。
日付から始まっていた。
ー 七月二十日。
斉藤さんと江戸の町を歩いていたら
突然浪士に絡まれました。この時は一人。途中から一人加わる。
暑さもあり、斉藤さんは体力に
限界が有りましたが何とか二人に
勝つことが出来ました。一対一。
二人目は斉藤さんとやりあう前自分が負けたら沖田さん暗殺から手をひくと
謂っていました。
しかし、まだ勝負はついていないのか
保留のままです。
それと…
江戸で沖田さんと斉藤さんが
沢山の輩に命を狙われています。
人数までははっきりとしていませんが、毎日自宅付近で見張られている様です。
沖田さんの体調は前回同様、問題有りません。 ー
『成る程』
土方がため息混じりで智香の書いた
文章を理解出来た。
近藤、山南、永倉も文を覗き読み終えると土方と同じく理解出来た。
『どうゆうこと?』
『だから脳ミソピーマンなんだよタコ』
黙っていた土方が平助を馬鹿にし始めた。暫く土方とのやり取りが続く。
永倉は壁側へ移ると胡座をかき、山南と近藤へ問いかける。
『まだ、彼奴らは戻って来れないんですか?』
『医者から謂われなければ此方へ戻る事は難しいでしょう…医学の最先端であるのは今や江戸…』
『そうさなぁ…』
『医学?最先端?』
山南と近藤はつい口が滑ってしまった事に気づく。やり取りを訊いていた土方が
助け船を出した。
『智香が學びたいと謂っていたからな。総司は隊務、智香はいわば勉強ってやつだ』
『体調は前回同様ってのは?』
永倉が土方へ鋭い質問を仕掛けてきた。
しかし…土方は上手く交わした。
『健康診断だ』
『『成る程』』
永倉はなら何故沖田が此方へ戻る事が
難しいのか山南へ訊く。
先程の失敗の為か山南は少し緊張しているようだった。
『それだけ難しい隊務なんです。下手すれば此方へ戻れないかも知れません。彼の手助けで斉藤君に行って貰っていますが…敵陣が攻めてくるのであれば、それだけの時間が…』
『二人とも、判ったか?お!忘れていた!トシ、山南君。明日だったよな?新選組の健康診断』
『あーそうだな…』
『また永倉君の筋肉披露が出来ますね』
『おうっ!俺が鍛えている強く美しく逞しい筋肉を披露してやるぜっ!』
『うえー俺気持ちわりー』
目的が終わり、五人は解散する。
広間に残った土方と近藤は再び仕事へ取り掛かる。
山南と共に広間を出た平助が訊きたいことを思い出し山南へ話かける。
平助から謂われた山南はやはり何処か挙動不審だ。
『大人の事情です』
『へー?山南さん彼女の件?』
『永倉君…違いますよ…。彼女とは文のやり取りだけです。今のところ。ただ…今日もしかしたら坂本龍馬さんが来るかも知れないのです…』
『はぁ?!』
永倉は目を丸くして驚きの表情を作る。
無理もないだろう。
新選組と坂本龍馬だ…。
『坂本龍馬…って土方さんには?!』
『藤堂君…謂えますか?』
『無理』
平助と山南が話終えると
暫く沈黙が続いた…。
無言での会話…目と目だけで永倉と平助は山南へ“誰にも謂わない“事を誓った…。
今回も読んでくださり
有り難う御座います。
さて、山南の口から新選組屯所へ
坂本龍馬が来ると…。
平助と永倉はこれ以上話せないだろうと悟り
沈黙の了承を…。
次回、二十二章 坂本龍馬
新選組屯所で何かが…?




