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第二十章 茶屋

あの戦いから

どれくらいの時間がたったのだろう…

斉藤さんはまだあたしの隣で目を瞑り

寝ている……。息遣いが少し荒い気がしないでもない。



『智香ちゃん……』

『……沖田さん』

『一君、どうしたの?頬に怪我をしている所を見ると一戦の後か…』


『はい…この暑さの中二人を相手に…体力の、消耗が早かったみたいで此処で休んでいたんです…すみません…』

『君が謝ることは無いよ。この御時世なんだもん』






医者帰りの沖田さんがあたし達を見つけてくれた。

運が良かった。あたしもこの炎天下の中

クラクラしてきていたから…。

斉藤さんの事は沖田さんが運んでくれた。



途中、目を覚ましたのか沖田さんと

喋って居るようだ。






『忝ない…本来なら俺が…』

『気にすることないじゃない?一君だって人間なんだし、限界だってあるでしょ?……ただちょっとだけ嫉妬しちゃったよ』


『すまん……』





何を話しているかは

聞こえなかったけれどちょっと

良い感じなのは何となく判る。

タエさんが勤める茶屋の前に差し掛かった時、店の主人が沖田さんと斉藤さんに気づいた。





『あんた達…また絡まれたのかい?』



彼の名は尾形将太。喋り方がおじさんぽいけど若いんです。確か三十五歳。




『らしいですね。僕は医者へ行っていたので詳しくは…。はぁ…一人での医者って暇でさぁ~』


『長くなる。最後まで訊かなくていい。それに、掠り傷だ…。気にすることは有りません』

『しかしなぁ…。どれ、ちょいとそこへ座りなさい手当てをしよう』





沖田さんは無視されている事に

気づいてないのかペラペラと

一人で喋っている。

斉藤さんは沖田さんの背から降りると

丁寧に頭を下げ長椅子へ座る。





店の主人から訊いたのか

タエさんが慌てて店の中から出てきた。







『斉藤さんっ!大丈夫ですか?!刃の先に毒だとか塗られて……』


『タエさん。大丈夫だよ暑さで参っちゃっただけだから。それに頬の怪我は浅いから』

『智香ちゃん本当?!沖田さんは大丈夫ですか?!』





見ての通り彼は大丈夫。

何だけどまだ一人で待ち時間の話を

長々と話続けている。

沖田さん煩いですよっ!それに恥ずかしいっ!





なので…。




ベシッ!




『っ!痛いなぁ何するの?!』

『誰も訊いてません!恥ずかしいので帰ってからにして下さいっ!』

『え……?なんで教えてくれなかったのっ?!』


『教えるもなにも斉藤さんが降りたのくらい普通判りますよねっ?!背は涼しくなるし!軽くなるしっ!いつまでもペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラっ!子供じゃないんですよっ!そこに座って下さいっ!』






『智香の説教が始まったな』

『いつも……ですか?』

『いや、たまにだが……智香も回りが見えなくなったんだろうな……おい、二人とも』

『あ……すみません…』

『僕も…』






タエさんは斉藤さんの隣で

手で口を覆い笑っている。

やってしまった…。最近こんなことが

ちょっと多いなぁ…。





『はぁ…恥ずかしい…。しかもタエさんの目の前で恥ずかしいぃ』


『どんまい智香ちゃん。あっ。お茶貰おうかな?』

『畏まりました。三つで宜しいですか?』

『そうだな。総司と俺と智香の分も頼む』



『はい!冷ましてありますのでグイグイいけますよ!お待ち下さいまし』






冷ましてあるんだぁ。

色々と試行錯誤してるんだね何処も。

甘酒もメニューにある。それに目をやっている斉藤さんと沖田さん…。

呑みたいんだね…でももうお茶を三つって謂ったんだから取消せないよ?


タエさんお店の中に行っちゃったんだから。お店と謂えば此処の主人薬箱を

取りに入ったんだよね?なんて思い出してたらひょこひょこと主人が出てきた。





『どれ、頬を此方へ。…良かったねぇ~?こんなもんで済んで』

『ギリギリの所で交わしたんです』





斉藤さんは将太さんへ一部始終

説明をしていた。

本当…ざっくりいってなくて良かった。

だけど、あんな斉藤さんは初めて見たなぁ…。負けたら沖田さんから手をひくなんて謂ってたけど、最後に吐いたあの台詞(せりふ)まだ決着がついていないって事だよね…。







『智香ちゃん?』

『あ、タエさん…』

『ボーッとしてたけど心配事?』

『…うん…』

『ちょっと此方(こっち)で話さない?』





タエさんはそう謂いながら店の中を指差していた。梅の木の葉には毛虫がつきやすい。なので彼女は近づかない。

店の中へ入ると御煎餅(おせんべい)等が箱に入って置いてあった。





『中ってこうなってるんだぁ…』


『そうなの。霰煎餅(あられせんべい)も有るんだけどベタついちゃうから夏は売れないの』

『へぇ…』

『甘酒は仕事前に一杯呑んでく人は沢山居るけどね?ふふ』


『なんで笑われてるの…?!』

『だって智香ちゃん…沖田さんとのやり取り面白いから…クスクス』

『ぅー』


『ごめんね…それで何に心配してるの?やっぱり沖田さんの容態?彼いつも”マスク”っていうのしてるし…そんなに悪いの?』


『うんん。あれをしてる理由は感染を防ぐためなの。本人は日焼けしないか心配してるんだけどね?出来るだけ日陰移動してるの』


『感染を防ぐため…それってコレラとかにも?』

『うん。けど吐瀉物(としゃぶつ)だとかを処理するのに触っちゃったりしたらしっかりと消毒しないと感染しちゃうから…後、着物は処分ね…』

『勉強になるわ有り難う』


『い、いいよ頭下げないでよぉ』





茶屋で一休みも此処に居る間だから

出来るんだよね…タエさんと…。

京へ戻ったら会えなくなっちゃうだ…。

何か寂しいなぁ…。それはタエさんも同じだよね?あたしにも斉藤さんにも沖田さんにも会えなくなっちゃうんだもん。




山南さんみたいに文通でもやるのかな?

そろそろお昼の時間になろうとしている。お茶を飲んだら戻らないと…。







読んで頂きまして有り難う御座います。

二十章は戦いなしで仕上げました。

斉藤をおぶる沖田、たまにはこういうシーンが

あっても良いかな?と思い執筆しました。


次回は久し振りに新選組の屯所内での話を入れてみようかな?



有り難う御座いました!

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