第十二章 先の計画
今回の話しには
残虐な台詞な有ります
不快に思われましたらもう少し訳有りません。
翌日。あたしは刀同士がぶつかり合う
金属音で目が覚めた。
庭側にある部屋へ行くとやはり沖田さんと斉藤さんが手合わせをしていた。
畳の上に鞘が二つ置いてある。
きっと二人して研いていたのかも。
あたしは二人に声をかけると
朝餉の支度へ取りかかる。
昨日は何もなく普段通りだった。
余りにも暇だったのか沖田さんと斉藤さんは漫才の様な話しをしていた。
『今日は天気良いなぁ』
天気は自然現象だから人と違って
謂うことは利けない。
今日は洗濯物外に干せるから良かった。
『やっぱり一君との手合わせは最高だねっ!はっ!』
キイィィィィィンッ!
『喋りながらだと舌を噛むぞっ!』
ヒュンッ!
やってるやってる。
本当楽しそう。
さて、ご飯が出来るまで時間はあるし
今のうち洗ってくれた洗濯物干してこよう!再び庭へ。
『洗濯物干しちゃいますね』
『判った!ふんっ!』
キイィィィィィンッ!
刀のぶつかり合う音を訊きながら
三人分の洗濯物を干す。
こうしてると本当の家族みたいに思える。
家族と謂うか兄弟かな?
そういえば…自分の本当の家族は何しているのだろう?また、時間が止まってるのかな?もし…此処に両親が居たらあたしは抜け出しているに違いない。
東にある太陽が暖かい日差しをくれる。
梅の花ももう見頃を終えていて
変わりに桜がもうじき咲く。
『眩しいなぁ〜』
あたしは独り言を謂いながら洗濯物を干す。後ろではひとまず休憩なのか
二人が手拭いで汗を拭いてる。
『洗濯物が終わりましたらお茶持ってきますね。朝餉はまだ時間がかかるので…』
『気にしなくていいよ?』
『そうだ。ところで、昨日魘されていたが大丈夫か?時々起きていたらしいが?』
『一君も気付いてたんだ?』
『怖い夢をみていたので…あれは初めて見ました。ゾンビが”お邪魔します”ってこの家に入り込んで着たんですもん』
『『ゾンビ?』』
『えっと…ゾンビはゾンビです』
干しながら話していたので
いつの間にか残りは二枚。
どうして話しながらだと早く終わるのかな?一人無言でやってると遅く感じるのに。
『それじゃ今お持ちしますね』
『はぁー…うん有り難う』
『すまないな…』
『いえいえ』
お茶を淹れる時スマホの事が気になった。
何故あたしのスマホは色々と知らせてくれるのだろう?
沖田さんの体調が低下しているときは
必ず画面に出ている。
労咳での食べ物は高校生の時図書室で
読んでいたから覚えていたけど…。
今は”沖田総司 体調良好”とある。
渇いたような咳も無く確かに良好なのかも知れない。この事はまだ誰にも話していない。訊かれても困るから。
『お待たせしました』
二人へ配ると沖田さんと斉藤さんが
前に迷い込んだらしい茶虎猫に気づいた。
最近知ったのだけれど、この猫ちゃんは
野菜売りの所で飼われている。名前は”テツ”主人の話しだと鉄のように頑丈な猫になれ。という願いが込められているとか…。
けど…頑丈より丈夫じゃ…。
テツは真っ直ぐ沖田さんの膝の上に乗る。
軽やかなジャンプだ。
『お前も動物に好かれるな?』
『でしょ?たまに此処で蚤取り(のみとり)もしてるんだ』
『だからたまに”にゃぁっ!”て聞こえるんですね?』
『可哀想に…蚤ではなく肉を…』
『すばしっこいんたから仕様がないでしょう?』
テツは沖田さんの膝で欠伸をすると
そのまま寝る姿勢となる。
今日の朝餉は焼き魚とお新香とお味噌汁にしてみたんだよね?それまで此処にいるかな?
『あ、忘れていた…樋口から文を預かっていたんだ…遅くなって悪い』
斉藤さんは沖田さんへ文を渡す。
彼は受け取りながら”僕に?”と斉藤さんへ訊く。
庭の木から緑色の葉が一枚落ちる。
それに合わせるかのように先程干した洗濯物が揺れている。
『……ふふ。樋口さんらしいね…』
『なんて?』
『帰ったら勝負だって』
『前の戦いで気に入られた様だな?』
『みたいだね?』
暫く狭い庭を眺めながらお茶を飲むと
炊けてきている匂いが鼻についた。
あたしは二人に声をかけると台所へと向かった。
『よしっ!そろそろお魚を焼こう!』
網を用意し、魚を乗せる。
すると何処からか変な臭いがして来た。
この臭い…クサヤだ…。
鼻を覆っていると庭の方から
”臭いっ!”と聞こえてきた。
沖田さん…あたしの居る所来てみます?
籠もっているみたいに物凄い臭いですよ?
『何で朝からクサヤなのぉ〜!』
外へ出ると、向かいの家の人が外でクサヤを焼いていた。しかもお爺ちゃん…。
せめて納豆にしません?
朝納豆!
どうりで…こんな所で焼けば
籠もっているみたいになるわけだよね?
魚を焼いているので鼻を摘みながら中へ戻る。
そうこうしているうちにご飯も炊けた。
魚はもう少し。
ただ…クサヤの臭いが残る…。
あたしは炊き立てのご飯を熱いのを我慢し
五つ握る。そして焼けた魚をタッパーに入れる。
そう。此処で朝餉は無理と判断したのです。庭に居る二人へ声をかけて
あの時の河原まで行き、朝餉を食べる事にした。
暖かいお茶も三人分持ったし。
少し寒くても大丈夫!
『はぁ〜まさかクサヤを朝から焼くとはね…』
『迷惑にもほどがある』
『食べたくなったんですよ…きっと』
『あの臭いのあとテツ帰ったんだよね』
『猫も臭いと悲鳴をあげるらしいな…』
悲鳴…あげたんだ…。
『またこの後やるんですか?』
『どうしようかな?一君、疲れちゃうか…』
『俺は構わないが?』
カチャ…
『おい…』
沖田さんの背に刀が向かれた。
斉藤さんもそれ気付き、後ろを見上げる。
茶色の服隊を着た男の人と五人の連れが居た。見覚えある二人…この河原で沖田さんの抹殺の話しをしていた人も居た。
沖田さんは手に持っていた水筒を置くと
ゆっくりと立ち上がった。向けられた刀も彼に合わせるようになる。
『沖田総司…だな?』
『だったら何?』
斉藤さんは沖田さんの隣りで立ち上がり、刀に手を伸ばし握る。相手の刀が彼を斬ろうならば此方もすぐに斬る。そう謂っているようだ。
『お前を殺せと命令がくだってな?』
『ふぅん。それで今まで浪士を集めながら僕を見張ってたとでも?……廣瀬殿……?』
『っ?!何故俺を?!』
『あんたの馬鹿な仲間が此処で謂ってたんだよね?こりゃ近いうち来るんじゃないかって思ってたけど…こんなに早いなんてね?』
『誰だっ!漏らした奴は!』
廣瀬が後ろへ上半身をやった時
沖田さんは素早く身体事振り向き刀を出し
廣瀬へ突きつけた。
『僕、容赦ないよ?』
『総司…』
『大丈夫。…けど、峰打ち忘れて殺しちゃったりね』
『智香、お前はあの家へ逃げ込め』
『は、はい』
あたしは河原から一番近い家へ避難する事になった。血相かいて戸を叩くものだから
中の人も慌てて戸を開けてくれた。
『すみません!』
『どうしました…』
開けてくれたのは成人男性だった。
『朝早くごめんなさいっ!あの、浪士に狙われてしまいまして…今連れが相手しているんです!あたしには近くの家へ逃げ込めと…あの…』
テンパるあたしはろくに説明も出来ず
ただ必死になるだけだ。
幸運にも、もう一人居てそれを見ていて代理で説明し中へ入れてくれた。
『ごめんなさい…本当…』
『いいのよ。此処私と兄さんしか居ないからさ。それにしてもどうしてあの人狙われてるの?あ、ごめんね。私はひな子。こっちは兄のタケル』
『あたしは智香と謂います』
『どうも。で、本当どうしました?』
『だからさっき説明したでしょう?智香ちゃんと一緒によく此処をあるってる彼が柄の悪い浪士に刀向けられて…』
ひな子さん…という方がまたも説明してくれた。
『判った?』
『ああ判った』
『もう一人の人は?さっき走り出す前に話してたんでしょ?』
『彼の仲間です』
『へぇー。ねぇ、私の事呼ぶとき”ひな”でいいよ?ちなみに19なんだ。』
『え?あたしと同い年…』
『ならお互いに呼び捨てでお願い』
『うん!色々と有り難う』
キイィィィィィィンッ!
斉藤は廣瀬によって集められた浪士達と刀を交わしている。
命はとることは無いが背や股を斬る。
立ち上がれぬ傷の程度で成るべくすませようとしている。
一人、また一人と倒れてゆく。
『で?僕を殺してどうするつもりなの?』
『お前等が計画に邪魔なんだよ?主様がやろうとしている事。お前等新選組が知るならば阻止するだろうからな。決行の日まで一番組組長から潰してゆく』
『当分先の計画?まさかと思うけどその”主”が”誰か”の手助けをしている
哀れな奴なんじゃない?』
『哀れなどではないっ!』
『”元治元年六月頃”の計画ならある人に教えて貰ったよ?』
『なっ!』
『確か…内容は”風の強い日に京の町へ火を放つ。混乱してるだろう…その機に乗じて天子様を長州へ連れ出す”』
『貴様それを何処で!』
『謂ったでしょう?ある人に教えて貰ったって?』
(成る程。もう変わってるって訳か…智香ちゃんの話しだと僕はまだ新選組に居るはずだった。あの日から”歴史”は動き出してるって事…か…)
『あ、僕がまだ京に居るときにを添えるのを忘れてたよ。本当馬鹿じゃない?尊王掲げてるくせにさぁ?おまけに全然先の事のために何やってるの?本当笑える』
『己っ!』
廣瀬は再び沖田へ刀を向けた。
如何でしたでしょうか?
あの日、京を出てから大きく歴史が変わり
始めていることに沖田が実感しました。
智香はまだその事に気づいているのか?
そして、先の出来事はどうなってゆくのか…。
今回も、有り難う御座いました。




