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そだ☆シス  作者: Mie
熱冬編
683/744

645 インドアにする?それともインドラ?


 だんだん明るくなってきた空を見上げる。

 青空を隠していた雲は晴れ、白いヴェールのような薄雲が多く見えていた。

 うっすらと黄金色に見える空は、いつ見てもいいものだ。


「いい天気になりそうだな」


「だねー」


 掴んだ我が娘に耳にくっつけて天気予報を聞き、今朝もキャスターのお姉さんへお礼のメッセージを送る。 すっかり常連リスナーである。

 ラジオとインターネットが合わさったような精霊ネットワークは、前世でナウなヤングであった俺にとっても手放せないものになっていた。

 それから俺は、これまた日課であるニュースにチャンネルを合わせてもらう。 自力で受信できなくもないが、それは都会の雑踏に耳を傾けるのと同じ。 そうではない中から特定の声だけを拾い上げるなんて、今の俺には到底不可能である。


《ネットワークに依存して人前に出てこない「引きこもり精霊」に対して、政府は――》


「……」


 晴れた空に対して、どよーんとした気分になる俺。

 この国には数万から数十万の精霊が住んでいるって言われているのに、外ではあまり見かけない理由がコレって……。

 が、オフ会を好むニアちゃんはテレパシーで疑問を呈す。


《なんでお外で遊ばないんだろうねー?》


「あー……」


 かつてネット世代であった俺には、なまじ理解できてしまうのが切ない。

 我が娘には、このまますくすくと育ってもらいたいものである。


「……彼らはインドア派なんだよ」


「ふーん」


 耳を掴んで肩に立つニアちゃんの頭をなでながら、俺は回れ右をする。 外の明るさを見るため、部屋の明かりは消したままだ。

 ちなみに「引きこもり精霊」さんは無職ではない。 昼夜を問わず、二四時間体制――ここじゃ一日は十時間なんだけど、精霊ネットワークの維持をしているのだ。

 その実態は「ひたすら回線を繋いで駄弁っているだけ」らしいが。

 さて、いくら暖房が利いているとはいえ、さすがにパジャマで窓際に突っ立っていたら冷えてきた。 そろそろ朝ご飯の時間だし。

 俺はにっこりと笑いかけ、後ろにいたマイシスターに声をかける。


「ごめん、待たせたね」


「ん~ん♪」


 小さく首を振ると、後ろの窓から差し込む光が金の髪を照らし、淡いきらめきを放つ。 蒼い瞳にも無数の光が宿り、薄暗い部屋の中が明るく感じた。

 俺がいつも勉強や仕事に使っているちゃぶ台型テーブルにニアちゃんが飛び降ると、すぐにセーレたんは俺の着替えを差し出す。


「はい、お兄ちゃん」


「……う、うん」


 俺が外を見ている間ずーっと抱きしめてくれていたので、すごく温かい。 それに、洗剤とはまた違う甘~い香りもしてくる。

 優しい笑みと共に着替えを渡され、ちょっと照れながらお礼を返す俺。 朝もキスで起こしてくれるし、いつの間にやら俺がお世話される立場になってきたな……。

 かつて天下を取ったあの武将も、どうせならこんな可愛い妹に草履(ぞうり)を抱いてほしかっただろう。


「ええっと」


「なぁに?」


「着替えたいんだけど」


「うんっ」


「……」


 なんか、この子もだんだんマールちゃんに似てきたような気がする。




挿絵(By みてみん)



「じゃ、行ってきまーす!」


「行ってらっしゃーい」


 朝食が終わってまったりしていると、身支度を調えたチャロちゃんがダイニング兼リビングに顔を出した。 厚手の可愛らしいコートに白い手袋をつけている。

 今日は精霊の日で、チャロちゃんはお休み。 普段から休みの日はお出かけの多いチャロちゃんだけど、今日はレイグ叔父さんと出かけるらしい。 先日この辺をウロついていたところを発見したものの、イマイチ元気がなかったので気晴らしに誘ったようだ。

 見た目は中学生っぽく見えても十七歳、さすがレイグさんよりもお姉さんである。


「さあ、そろそろ私たちも行きましょうか~」


「そうだな」


 チャロちゃんを見送ってからしばらく、リソ君が食後の触手(デザート)を食べ終わったのを見てお袋が俺達に声をかける。 が、返事をしたのは俺ではなく親父。

 今日は親父も仕事がないので、一緒に道場に来てくれることになっている。

 留守番はマールちゃんと、そろそろ来るであろうアナさんに任せて、俺達も出かける支度するため席を立った。




「お誕生日、おめでとー!」


 道場の居住部の玄関先で、俺は真っ先にお祝いをした。 その相手は、大きな朱い瞳をぱちぱちとさせている。

 俺の横では、リソ君が小さなおててをパチパチさせていた。 セーレたんとエミーちゃんも、後ろで同じように拍手をしてお祝いしている。


「おめんとー♪」


「みゅ。 ……ありがと」


 リソ君の言葉に、帽子を被った頭をちょっぴりうつむかせ恥ずかしそうにそう言ったのは、るーちゃんそっくりな妹のリリちゃん。 口元をマフラーに埋もれさせているのが可愛らしい。

 そう。 今日、誕生日を迎えたのは陛下ではなく、リリちゃんである。 

 俺の前世では聖なる日と言われていた、二四日が誕生日なのであった。


「もう五歳なんだね」


「みゅーん」


 髪と同じ色をした桃色の帽子の上から頭をなでなですると、リリちゃんは気持ちよさそうに目を閉じる。 こんなに可愛い子が、再来年にはもう初学生ですよ。 大きくなったもんだ。

 俺達も成長してるから、身長差はそれほど――って、考えてみたら俺と一歳しか変わらなくなったじゃないか!


「――はい。 ジャス様方とは一つしか違いません」


「四ヶ月だけですけどね」


 広いとは決して言えない玄関にリリちゃん達幼なじみーズがひしめき、入りきらずにドアの外に立っているツェリさん。 明るくなった外の光が白銀のストレートヘアを照らし、シャープな輝きを放っている。

 この人も今月が誕生日だったんけど……一体いくつになったんだろうな。

 怖くて聞けない。


「りりーっ♪」「リリちゃん、おめでと~」

「ああっもう、可愛いー♪」


「みゅっ、みゅーっ……」


 その間にリリちゃんはリソ君とセーレたんとエミーちゃんに囲まれ、頭をなでなでされまくっていた。

 いつもながら、巣鴨のお地蔵さんのようである。


「……と、とにかく、どうぞ」


 既に大学卒の息子さんをお持ちの方から目を逸らし、俺はみんなをダイニングへと招き入れた。



 卒業試験までほぼ一ヶ月となったワケだが、今日はそれをちょっと忘れて身体を動かす稽古の日である。

 せっかく親父が来てくれているんだから、教わらない話はない。


「やああ! たああ! ほわあああ!」


 ソフト剣を持ったニコが親父に向かって果敢に攻めていく。 ひんやりとした道場に、気合いの入ったニコの声が響いた。

 体格的には俺よりもちょっと背が高い程度のニコだが、家で力仕事を手伝っているおかげでパワーがあるので、剣の振り方もまたパワフルだ。

 特に、途中で「あついー」と上の服を一枚脱いで薄着になると、やっぱり俺とは筋肉の付き方が違うのが分かる。

 かなりうらやましい。


「ほほう、なかなか筋がいいじゃないか」


 超ロングソフト剣――棒とほとんど変わらないそれを巧みに操り、親父はニコの攻撃を感心しながらいなしていた。

 俺も剣術はそれなりに教えていたけど、それ以前にエミーちゃんから基礎を叩き込まれていたヤツは、意外と基本に忠実である。 だからこそ隙が少なく、剣を振り切った後も体勢が崩れていない。

 それもまた、しっかりとした下半身とパワーがあるからこそである。


「そら!」


「とおぅ!」


 たまに親父が反撃するも、ニコは剣筋をよーく見て確実に受け流す。

 遠目に見ていると、親父は比較的ゆっくりと振っているので楽に対処できそうだが……あの長身の親父が振り下ろす超ロング剣は、目の前の子供からすれば相当なプレッシャーだ。 斜めにした剣を盾にしながら半歩横へずれるだけの対処も、まずその最初の足を踏み出せるかどうかが問題となる。

 もっとも……本気の親父なら、半歩程度の誤差は余裕で軌道修正して当ててくるけど。


「やるね」


「うん」


 道場の壁際で、エミーちゃんと一緒にうなずく。

 俺のそばで敷物に座って見ていたるー君も感心している。


「ふふ、男の子らしい剣術だよね」


 ニットのミニスカートに厚めのタイツを履いた両脚を斜めに流し、花のつぼみのような唇に指先を当てながらそう言うこのコも、いちおう同じ性別のハズなのだが……。


「……」


 同じく敷物の上で女の子座りしているわん子ちゃんは何も言わず、わずかにしっぽを振りながらじーっと稽古の様子に見入っていた。

 ちなみにセーレたんは珍しく、今日は稽古不参加を表明していてココにはいない。 ニアちゃんは、リリちゃんとリソ君と一緒に外の花壇を見るーって出ていったし、お袋はツェリさんとおやつを作っている最中だ。

 昼前くらいにはエルネちゃんも来るだろう。


「よし、このくらいにしておこう」


「あざっ……したぁ!」


 息の上がったニコが、親父にぺこりと頭を下げる。 顔は真っ赤で汗もかいているが、その表情は満足げだ。

 疲れて重そうな足取りでコッチに歩いてくるに子を見て、エミーちゃんはさっそく腰を下ろして水筒の準備を始めていた。 さすがの気配り上手である。


「次は、クリムちゃん……だったか」


「ん」


 疲れるほど動いていない親父は、休憩を挟まずにわん子ちゃんを呼んだ。 足下に置いてあるソフト短槍……ほとんど短剣みたいな二本のそれを持ってニコとすれ違う。

 その際、二人は軽くタッチを交わした。


「はぁ、はぁ……」


「おつかれー」

「お疲れ様」「かっこよかったよ?」


 だらーんと両肩を下げてやってきたニコに、エミーちゃんとるーちゃんと三人で声をかける。

 なんとなーく立ったままでいたが、俺も座るか。

 ニコは水筒のコップにお茶を入れて待つエミーちゃんと、上目遣いで見つめるるーちゃんとの間で何度か視線を泳がせた後、エミーちゃんの前に腰を下ろした。


「……ぷはぁ! もう一杯!」


「はいはい」


「次はボクは注いであげる」


「お、おおお」


 ニコが空にして返そうとしたコップに、横からるーちゃんがそっと手を重ねてきた。

 なぜか這うように近づいて上目遣いをするるーちゃんに、ニコは違う意味で赤面している。


「ふふ……♪ みんな、こうして下から見上げると弱いよね」


「……」


 このコ、着実に魔眼を使わないテクも磨いているよな……。 いったいナニを目指しているんだ。

 俺も違う意味で戦慄しそうだったが、ふと見るとくりむちゃんが親父と向かい合って短槍を構えていたので、そっちへ目を向けた。


「そう言えば……お姉も、男の子はだいたい上目遣いに弱いって言っていたわね」


「うん、そうみたいだよ」


「そ、それなら……」


「……」


 決して、目を逸らせたワケではない。



「さあ、いつでも来なさい」


「……」


 分かりやすく正眼に構えた親父へ向かって、わん子ちゃんが大きなしっぽをなびかせて疾走する。

 七歳にしてエルネちゃんに迫るほどの身長をかがめ、地を這うような黒い弾丸となって襲いかかる!


「フッ!」


 ほとんど瞬歩のような速度に対して、親父は剣先を素早く返すと、正眼から一転して横からの切り払いを放つ。

 が、わん子ちゃんはギリギリ間合いの外で方向転換。 剣を振った逆方向へ軌道を変えて一気に距離を詰める。


「……」


「むうッ!?」


「おおっ!?」


 ほとんど、どころか完璧な瞬歩と言える速度と共に、肉薄したわん子ちゃんが突きを繰り出す。 思わず俺も声が出た。

 親父は半歩退いてとっさにかわすも、くりむちゃんはすれ違いざまに身体を捻り、もう片方の槍で背中を向けてからの横薙ぎの二撃目――。


「っ!」


 だけではなく、更に腰を捻ってハイキックまで狙っていた!


「クッ!」


 親父は軸足を蹴って一歩以上横へ動き、短槍と長い脚から完全に逃れる。

 すれ違ったくりむちゃんは、空中で身体を横に回転させて器用に着地すると……。


「……」


 キュキュッと靴が高い音を立てる。

 わん子ちゃんは柔らかなステップを踏んで急転回し、ほぼ最高速を保ったまま再び親父の背後へと襲いかかった!


「ぅおッ!?」


 体勢を立て直す直前に向かってきたくりむちゃん。 早すぎる追撃に驚きながらも……さすがは親父。

 柄の方を使って突きのラッシュに対応した。


「おお、すげー!」


「ほお……」


 三杯目のコップを持ったまま声を上げるニコと一緒に、俺も感嘆の吐息を漏らす。 最近の稽古でセーレたんとチャンバラしていたけど……ただ速いだけじゃない動き方をマスターしつつあるな。

 直線だけなら既に瞬歩の域に達しているくりむちゃん。 確かに最速ではあるけど、直線であるが故に回避されればそれまで。 急には止まれない。

 だけどこの娘は、まるでバイクのコーナリングのように身体を傾け、加えて長い脚を最大限に使ったステップにより、スピードを極力殺さずに急カーブを曲がるテクニックを身につけ始めていた。

 ハニーのまとわりつくような動きではなく、まるで敵を中心にしてひと筆で☆を描くようなヒット&アウェイ――とでも言おうか。

 親父のように間合いが異様に広い相手であっても、うまく距離を取りながら懐に飛び込めている。

 ただ、どうしようもない欠点として。


「――あふっ!」


 体力が尽きてしまうんだけどな。

 ちょうど星を描ききったところで、わん子ちゃんはキキーッとブレーキをかけて止まってしまった。


「はっ、はっ、はっ……」


 ずーっと平行だったしっぽが床につき、ひざもついて座り込んでしまった。 とろんとした目つきで顔も赤く、短く荒い呼吸を繰り返している。

 緩急をつけるセーレたんとは違って常にアクセル全開のため、持続時間の短さが欠点であった。 ……アレ、ほとんど無酸素運動じゃないだろうか?

 必殺技というか、「最後の切り札」的なものであった。

 わん子ちゃんがもう手合わせを続けられる状態ではないのを見て、親父は構えを解いた。


「大したものだな……。 天性の運動能力にも恵まれているようだ」


「うん……」


 俺もそう思う。 もしも俺がマネをしても……触手を使うとスピードと反動に身体がついていかないし、活性化だと身体は大丈夫でも小回りが利かない。

 単発ならともかく、連続使用はたぶんムリだな。


「……くぅん」


「あっ」


 くりむちゃんが床にへたり込んでしまった。 頑張りすぎたらしい。

 俺達は慌てて立ち上がり、わん子ちゃんの介抱に向かった。



「よしよし、よく頑張ったね」


「くぅん……♪」


 俺のひざの上で、頭をなでられたわん子ちゃんが目を細める。

 熱いほどだった身体もクールダウンして、黒いしっぽが気持ちよさそうに揺れている。


「それじゃあ……おじさま、次は私の番ですね」


 そう言うと、エミーちゃんがソフト棒を手におもむろに立ち上がった。

 単なる棒ではなく、先端に板状の打撃部分がついたもの。 ハルバード仕様である。


「ああ」


 俺達と一緒に小休憩していた親父も、水筒のコップを置いて立ち上がる。

 ちょこちょこマイシスターと稽古しているエミーちゃんだけど、どうしても接近戦になる上に「半活性化体質」から来る力の強さのために、なかなか全力を出し切れない。

 でも、親父が相手だったら遠慮なく振るえる。


「……お願いします」


「ああ」


 道場の真ん中まで歩いて行き、エミーちゃんが丁寧にお辞儀をする。

 そこまでは大人っぽささえ漂わせる可愛い女の子だったが、棒を構えた途端に戦士のオーラを身に纏い始める。

 二人には悪いけど、やっぱりニコやクリムちゃんとは迫力のレベルが違った。 親父も目つきが鋭い。

 次の瞬間。


「はああああああああああああーーーーーーっ!!」


 柄の末端の方を両手で握り、大きな踏み込みと共に、二メートル前後はありそうなハルバードを思いっきり横殴りに振るうエミーちゃん。 空気を切り裂くような声が響き渡る。

 親父もまた、気合いの声を放って同じく横から長剣を振るった。


「せやアアアッ!」


 わずかに下からアッパー気味に繰り出しや親父の剣に、エミーちゃんのハルバードがかすって軌道を上に逸らされる。

 親父の頭上ギリギリを通り過ぎ、風圧で短い銀髪が後ろに倒れた。


「だああああアアアアアーーーーッ!」


 直後、長い剣を巧みに操った親父が、真横から斜めへと向きを変えて振り下ろす。

 それを、エミーちゃんは素早く身体を横回転させて斜め上から交差させるように袈裟懸けで迎え打った。


「やあああああああああーーーーーーーーっ!!」


 親父に比べると少々荒っぽい感じだけど、親父の剣の軌道はエミーちゃんに届く寸前で床に叩きつけられた。 木の芯にクッションを巻いたソフト武器だというのに、まるでハンマーでブッ叩いたかのような轟音が俺達の鼓膜を叩く。


「……」


 す、すげー迫力……。

 どっちも得物が長いもんだから、振り回してできる軌跡の半円がとてつもなく大きい。

 いくらソフト武器でも、当たったら軽く骨くらいイっちゃいそうだな……。


「はあああああっ! やあっ! いやああああーーーーーっ!!」


「でやああアアアアアアッ! ハアッ! せいヤアアアアアァァァァァ!!」


 エミーちゃんは前後に距離を取りながら、時には棒を短く持ちコンパクトに、あるいは柄の端に持ち替えて大胆に武器を繰り出す。

 対する親父は左右に揺さぶりをかけながら、エミーちゃんの攻撃を受け流し、もしくは大きく逸らす。

 武器どうしが擦れ合うと、今にも発火しそうな音が鳴り、たまに床を叩くと落雷にも似た爆音が道場全体にとどろいた。

 まるで戦争だ。


「……すげー」


「ああ、すげーな……」


 実際には力量差はあるんだろうけど……見ている限りは、スピードもパワーも互角。 再来月には国の武術大会にも出る現役騎士の親父と、初学生の女の子とが、だ。

 ニコも俺も、もう「すげー」としか言葉が出てこない。

 るーちゃんは声を出すのも忘れて赤い目をぱちくりさせ、ひざ枕をしているわん子ちゃんは床が叩かれるたびに震えて「きゃん」と可愛い声を漏らしていた。




 それにしても。


「やああああああーーーーーーっ!!♪」


 エミーちゃん、すんごくイイ顔してるなー。

 ステップと共にスカートが踊り、長い茶髪は右へ左へとなびいて、その表情と一緒にキラキラと輝いている。 それだけを見ていると、テニスに打ち込む美少女なんだけど……。

 振ってるの、槍斧(ハルバード)なんだよねー。

 親父もなんか、嬉しそうに長剣を振り回している。


「すげえー……」


「すげえな……」


 うん。

 すげーなあーー……。





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