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そだ☆シス  作者: Mie
学童編(4月)
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272 人はそれを、自爆といふ

挿絵(By みてみん)





 通学に必要不可欠な懐中電灯も、学校が近くなってくると必要なくなってくる。

 いっぱい子供達が集まっているのもそうだけど、空が明るくなってきているのも大きい。


「うふふふふふ~」


 繋いでいる手を離したら浮かんでしまいそうなセーレたんを連れて、俺達も賑やかな子供達の集団の中に紛れ込む……ことができなかった。


「おっはよー!」


 周りの挨拶ラッシュに混じって、適当に声をかけていた俺はまだいい。

 だが――。


「ふふっ♪ おはようございます~」


 お嬢ちゃんモードになってもなお、セーレたんから輝くような笑みが弾ける。

 金色から青色に変わりつつ空の下、まるでダイアモンドにスポットライトを当てたような七色の煌めきがセーレたんの全身からほとばしった。


「ああ、おは――」「ぐへぁ!?」「ボバヘァ!!」

「う、後ろからもだとぉ!?」「目、目がぁあああああっ!!」


 真正面から波動を受け止めた生徒達が、男女の区別なく崩れ落ちていく。

 のけぞって倒れる男子、腰砕けになる女の子。 そして、わざわざジャンプしてスピンしてから倒れる奴……って、それはやり過ぎだろ!

 更に、その近くの比較的冷静さを保っている子達が「おおー!」「やるわね……」などと言いながら手を叩いている。


「……なんか、リアクション自体が芸になってきてないか?」


 何人かは倒れたままだったりするが、ほとんどの子供達はすぐに立ち上がって元気な挨拶を返してくれる。

 なんとも関西系に通じるノリの良さに俺がツッコミを入れると、たまたま近くにいた子達が答えてくれた。


「あはははっ♪ いつものことだから、みんな慣れてきてるのよ」

「いやー。 なんか、ハデに反応しないと面白くないような気がしてな!」

「わざと大げさにしておかないと、本当にひざまずいてしまいそうで……」


 その周りの子らも、うんうんとうなずいている。


「……」


 慣れとウケ狙いと……シリアスとが混じり合った結果がコレなのか? 特に最後のは、攻撃を受ける直前に後ろに飛ぶことで衝撃を殺す的な防御行動なのか。

 い、意外と奥が深いようだ。


「だったら、仕方ない……の、かな?」


『うんうん!』


「そ、そっか……」


 更に大きくうなずく一同。 その声が見事にシンクロする。

 思えば、幼児園ではセーレたんやるー君の魅力に対して、園児達はまともに対処できていなかった。 が、初学生ともなるとやはり格が違うようだ。


 コーマスロキ初等学校――まだまだ子供だと思っていたらところがドッコイ、なかなかの強者(つわもの)達が集(つど)う場所であった。




 教室に着き、みんなに挨拶をしてからいつもの特等席へ。 こうして見ると、自由席なのにも係わらず、みんなだいたい同じ場所に座っている。

 キャラは濃いが、規律正しい国民性がこんなところにも出ているような気がするな。


「あら、ジャス君も気づいたのね……ふふふ、さすがだわ」


 よくできました、と俺の頭をなでるこのお姉さんも例によって、いつも通り俺の後ろの席に座っている。

 今日はグレーの薄いスクールカーディガンを着ているマーヤさんは、雰囲気だけならば女子高生だと言っても通用しそうである。


「人は自由にしていいと言われると、逆に自分から枷(かせ)を手に取るものなのよ」


「は、はあ」


 あなた、ホントは何歳なのよ……。

 しかしお姉さんの言う通りなのか、今日もまた制服ファッションが増えているような気がする。 他も、なんとなく見覚えのある服を着ている子が多いような……服装のパターンが決まってきたのかもしれない。

 まあ、特に俺達は成長期なんだから、そう何十着も服を持っていたりはしないんだろう。


「ところで」


 マーヤさんは視線を右側に向ける。 その先をたどって振り向くと、いまだにホクホク顔な妹様が親しい女の子達と楽しそうにお喋りしていた。

 すぐ隣なので、特に聞き耳を立てるつもりがなくても自然と会話の端々が聞こえてくる。


「うふふふふ~♪」


「セーレちゃん、さっきからにやけっぱなしだけど……どうしたの?」


「ふふふふふっ……ララさぁん、えっとね~?」


 クラスメートの中ではいちばん親しい―― イェーリンさん、だったっけ? ―― 薄青色の髪をアップにした女の子の質問に、セーレたんが席に座ったままくねくねしながら答える。

 その様子に、ハニーを囲んでいる子達は「かわいいーっ!」と黄色い声を上げている。


「なになに? 教えてよセーレちゃん」


 珍しくわざともったいぶる妹様に、その様子も含めて楽しそうなイェーリンさんがノリノリで質問を重ねた。

 他の二人の女の子も「教えて教えて~」と合唱すると、セーレたんはほっぺを赤くして瑞々しい唇を開いた。


「えっとね~? 今日ね~?」


「っ!?」


 お、おいおい……。 まさか、みんなに「お兄ちゃんとデートなの~♪」とか言わないよな!?

 それはちょっと、いや……ものすっごく恥ずかしいぞ!


「今日ね~? 学校が終わったらね~? お兄ちゃんと……」


「お兄ちゃんと?」


「~っ!!」


 セーレたんが一瞬だけこっちを見てくれたので、俺は必死になって首を横に振った!

 すると、ハニーは赤くなった頬に両手を添えて――。



「お兄ちゃんと……ああんっ♪

 ないしょっ!」



『えええええええーーーーーーーーっ!?』


 当然、女の子達は大きな叫び声を上げる。 その声の大きさに、周りも驚いて妹様の方を見た。

 集まった視線の先では、セーレたんが頬どころか顔全体を真っ赤っかにして、いやんいやんと首を振って腰をくねらせていた。


「ちょ、セーレちゃ――」


 そんな意味深な止め方をしたら、余計に……!


「ちょっ! おおお、お兄ちゃんと、お兄ちゃんと……ナニっ!?」

「いったい放課後に、二人でナニするのーーーーっ!?」

「いやあああ~~~~~~~ん♪」


 ぎゃあああああああああああーーーーーっ!?


 周囲の視線を集めきったところで女の子達の絶叫がとどろき、ざわめきが連鎖的に教室中に広まっていく。

 それどころか、なんか廊下を歩いていた生徒達まで集まってきたあ!


「お、おいジャスパー! お前、妹とナニする気だッ!?」

「いくら何でも、早すぎるだろう……」

「えっ、なに? なにするのー?」


「いや、ちが」


 俺とよく喋る男子達が、他の連中と一緒にすごい勢いで集まってきて詰問してきた!


「いつかはやるんじゃないかと思っていたが……」

「あんなコトや……こんなコトまでするとでもいうのかッ!」

「え? みんな、何の話ー?」


 分かっていない子もいるようだが、特に年の離れているっぽい子供達は顔を赤くしてぎゃーぎゃーと騒いでいる。

 ……ヤバイ! このままでは、取り返しのつかないことになりそうだ!

 俺は意を決し、靴のままイスから自分の机に飛び乗ると、みんなを見下ろしながら声の限り叫んだ。



「だから、違うっての!


 僕達はただ、放課後一緒に……!



 デート、するんだってばあああああああああああーーーーーーーーっ!!」




『……』



 水を打ったように静まり返る教室。 いや、外の廊下からも一切の声や音が消えた。

 普段とは逆に、俺を見上げる目、目、目。 まん丸になった色とりどりの瞳に囲まれ、俺は我に返った。

 誤解を解くためとはいえ、俺はなんてコトを大声で宣言してるんだよ……。


「い、いや……だから」


 額や背中などに汗が流れていくのを感じながらも、俺は口の中が乾いてしまってまともな声が出ない。

 そこに、心の芯まで蕩けきったような妹様の声が響きわたった。


「お兄ちゃんと、初めてのデート……いやぁん♪」



「――ああ、いつものシスコンか」

「なるほど……いつも通りのブラコンね」


『ああーああーああー』

『なるほどーなるほどー』


 セーレたんのノロケから一拍おいて、急にテンションダウンしたみんなから納得と呆れの混じった声が次々と聞こえてくる。

 集まってこようとしたみんなはうなずきながら各自の席へUターンし、廊下の生徒達も首を縦に振りながら教室を通り過ぎていく。


「い、いや……」


 これはこれで、なんか俺達のブラコンとシスコンが周知の事実みたいでイヤなんですけど。

 しかも、クラスの外にまで知れ渡っているみたいで。


「あら、ジャスくんとセーレちゃんの熱々っぷりは校内どころか、この近所でも有名よ?」


 そこにグサリと突き刺さる、マーヤさんのトドメのお言葉……。


「え……マジで?」


「ええ」


「いや~ん♪」


 お姉さんは柔らかい笑みを浮かべ、ハニーは髪を激しく揺らして首を振る。

 更に――。



「こらジャスパー! ……初めてのデートが嬉しいのは分かるが、授業を始めるので机から降りなさい」

「あはははっ。 ジャス君、机の上もキレイにしてくださいね?」


 アズミーリ女史とシャルちゃん先生までもが、仕方ないなーと言うような顔をして教室に入ってきた。

 クラスメート達も、大人しくそれぞれの席へと戻っていった。


「いや、えっと……は、はい」


 今更反論する雰囲気ではなくなり、俺は神妙にお縄につく気分で机から降りた。


「えへへへへへっ♪」


 マイシスターは授業中も終始ニヤニヤし続けるも、先生の問いにはしっかりと答えていた。





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