彼女と彼の朝
◇
目が覚めたらゆういさんのベッドだった。
隣にはゆういさんがいる。
何故か抱き締められている恰好で、身動ぎ出来ない。
ああ、またヤッてしまった。
自分が流され易いと思ったことはなかったけど、もしかして流されやすいんだろうか。
いやでも好きな人に触れられて拒めるわけがないじゃないか。
それがたとえ、酔った上の行動でも。
「はぁ・・・」
もう2度めなんだし、責任とってもらいたいところだ。
あたしだってもう25歳、そろそろ結婚も視野にいれる年齢だ。
別に結婚願望だなんて皆無だけど、孫が出来そうなのが自分くらいで、両親には期待されている。
いや兄貴もそのうち結婚すると思うけど。相手がいれば。
いつの間にか25歳か・・・酔った上での事なんて、さらりと流すのが大人なのかな。
責任とか言っちゃうと思いだろうな。
別に本気で責任取ってほしいっていうんじゃなくて、ただゆういさんの彼女になりたいだけだ。
ゆういさんがどんな人が好きなんだろう。
どんな人が彼女になるんだろう。
「ん・・・おはよ」
「おはようございます」
ゆういさんも目が覚めたみたいだ。
ちゅ、と額にキスされる。
うわあ。
「・・・もしかしてあたし、玩ばれてます?」
「は!?」
何故そんな慌てる。図星?
「ちょ、ま、え!?俺好きって言ったよね!?」
「はぁ、言ってましたけど。最中のリップサービスかと思って」
「いやいやいやいや。リップサービスじゃないから。100%本気だから」
「・・・ゆりなちゃんに靡かない人があたしに靡く訳ないと思うんですが」
「むしろ江藤さんに靡かない人の方が日辻さん好きだと思うよ」
「あー・・・」
なるほど。タイプが真逆だからか。
「あの、それで・・・日辻さんは俺のことどう思ってるのかな、と」
「え?」
「少しでも俺のこと好きでいてくれるなら・・・好きになれそうだと思ってくれるなら、俺の彼女になって欲しい」
◇
「・・・あたしで、良いんですか?」
その言われ方はOKな感じだよね!?
俺の長年(?)の片思いも漸く実を結ぶっていうか・・・!
「日辻さんが良いんだ」
回していた腕に力を込める。
「・・・よろしく、お願いします」
Ktkr!
俺幸せすぎて死ぬかもしれん。
「幸せにするから!」
あ、間違えたかも。
プロポーズ後みたいじゃね?
「じゃあ、あたしがゆういさんを幸せにします」
笑って言ってくれた。
ああもうかわいい。好きだ。大好き。愛してる。
額にキスして、頬にもキスして、唇にも。
あ、また致したくなって来たぞ。
「って、あー!!」
日辻さんが突然大声を上げる。
「会社!!今何時!?ヤバイ、ゆういさん、急いで!!」
そうだった!今日火曜日だし!!
慌しさで甘い空気は搔き消され。
日辻さんはもちろん昨日と同じ服なわけで。
江藤さんからは睨まれ、山下さんからは苦笑いを頂いた。
志村さんと刑部は、やたらとにやにやしながらこちらを見ていた。
あーいじられる。いじられるなこれは。
6年ぶりの彼女に浮かれまくる俺。
傍から見たらおかしいだろうなぁw
ふと日辻さんと目が合う。
照れくさそうにはにかむ。
やべぇwかわいいww
◇
貫田雄大と日辻椿の恋愛の物語、これにて終了!