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異世界転生ワイ ~ワイの魔力が異常って、低すぎって意味よな?~  作者: 下北ゴリラ


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第4話 魔力結界、通れません

その日、講義室では授業が行われていた。


魔法学校には、あちこちに魔力結界が張られている。


敷地を囲むもの。

校舎の廊下と、講義室や実験室を区切るもの。

立入制限のある部屋を守るもの。


大きな境界から小さな境界まで、用途に応じて張り巡らされていた。


結界は、近づいた者の魔力を読み取る。


通行を許可された魔力なら、そのまま通す。

条件に合わなければ、弾く。


結界そのものが、相手を判別する仕組みだ。


許可された生徒や教員は通し、部外者や魔物の侵入を阻む。


教師が説明を続けていると、腰に下げた連絡用の魔道具が短く震えた。


教師は授業をいったん止め、魔道具を手に取った。


教師「……何? 校内に魔物が入り込んだ?」


講義室がざわついた。


魔物は結界に阻まれ入れないはずだ。


教師は魔道具から届いた連絡を確認し、すぐに生徒たちへ向き直った。


教師「全員、落ち着いて聞いてくれ。校内に魔物が侵入したらしい。安全が確認できるまで、指示に従って避難する」


生徒たちは荷物をまとめ、教師の指示に従って講義室の出入口へ向かった。


だが、先頭の生徒が結界の前で足を止めた。


生徒「先生、通れません!」


教師「どういうことだ?」


生徒「結界が通してくれないんです!」


教師は結界に手をかざした。


結界が淡く光る。


教師自身も通れない。


教師「……私まで弾かれるのか」


別の生徒も試す。


やはり、通れない。


教師「結界は反応しているのに、誰も通せない……。誤作動か?」


教師は腰の魔道具を取り出し、ほかの教員に連絡した。


教師「こちら講義室。避難しようとしたが、出入口の結界が通行を拒否している。そちらの状況は?」


魔道具から、別の教師の声が返ってきた。


教師の声「こちらでも別の区域で同じ異常を確認した。生徒が移動できず、避難が滞っている」


教師「分かった。ほかの区域の状況も引き続き知らせてくれ」


教師は魔道具をしまった。


少なくとも、異常はこの講義室だけではない。

教師たちは連絡を取り合い、構内の複数の区域で移動が妨げられていることを把握し始めていた。ただし、異常の範囲や原因はまだ分からない。


教師「みんな、無理に結界を通ろうとしないように。ここで待機してくれ。ほかの教員とも連絡を取り、状況を確認する」


生徒たちは不安げに顔を見合わせた。


そのとき、レオンが結界の前へ出た。


レオン「先生、このままでは避難できません。先生方も教員詰所から出られなくなっているかもしれません。僕が結界を破って、助けを求めに行きます」


教師「待ちなさい。結界に直接魔力をぶつけるのは危険だぞ!」


レオン「承知しています。でも、ここからでは先生方の状況も分かりません。まずは助けを求めに行きます」


レオンは講義室の出入口を塞ぐ結界の前に立った。


周囲の空気が張り詰める。


レオンの手に魔力が集まり、強い光を帯び始めた。


教師「まさか……!」


ドォンッ!!


衝撃が走った。


透明な結界に光の亀裂が広がる。


生徒たちが息を呑んだ。


レオンは手を下ろさない。


さらに魔力を集中させる。


バキィンッ!!


大きな音とともに、結界の一部が砕けた。


人が通れるほどの隙間が開く。


生徒「うそだろ……」


教師「魔力結界を破ったというのか……!?」


教師は、開いた隙間とレオンを見比べた。


教師「これほどの魔力とは……」


教師「いや、通常の方法で破れるものではないはずだぞ……!」


レオン「教員詰所へ行って、先生方に助けを求めてきます」


教師「ああ、頼む! こちらも生徒たちを安全な場所で待機させる!」


レオンはうなずき、開いた隙間を通って教員詰所へ向かった。


───


ワイ「ふう。すっきりしたわ」


トイレから出たワイは、手を洗って講義室へ戻っていた。授業が中断されていることも、校内に魔物が侵入したことも知らない。


ワイ「なんか外が騒がしかったけど、何やったんやろ」


特に気にせず、講義室へ戻る。


レオンが結界を破った入口とは別の入口。

そちらにも、講義室への出入りを妨げる結界が張られていた。


ワイは足を止めることもなく、そのまま歩いた。


何事もなく、通り抜けた。


講義室にいる教師が、その様子を見ていた。


教師「……待て! 君!」


ワイ「ん?」


教師「今、結界を通ったな!?」


ワイ「通ったで」


教師「どうやって!?」


ワイ「歩いて」


教師「歩いて通れる結界があるか!!」


ワイ「いや、今ここにあるやん」


教師「そういう話をしているんじゃない!」


ワイ「ほな、どういう話なん……?」


教師「結界が君を通すはずがないんだ!」


ワイ「ほーん」


教師「君の魔力認証はどうなっている!?」


ワイ「知らん」


教師「知らんで通れるわけがないだろう!」


ワイ「でも通れたしなあ……」


教師「……もう一度、通ってみろ!」


ワイ「ええけど」


ワイ、結界の向こうへ歩いていく。


教師「…………」


ワイ、戻ってくる。


教師「………………」


ワイ「ほら、通れたで。これ、何回やるん?」


教師「見れば分かる!!」


ワイ「えぇ……」


教師「君は自分が何をしたのか分かっているのか!?」


ワイ「いや、トイレから帰ってきただけやけど」


教師「それが一番分からないんだ!!」


ワイ「ワイも何が分からんのか分からん……」


教師「……っ、いや、今はそれどころじゃない!」


ワイ「さっきからずっとそれどころじゃなさそうやけど」


教師「魔物が校内に侵入した! 結界の異常で、生徒たちが移動できなくなっているんだ!」


ワイ「えっ魔物が!?」


教師「君は結界を通れたんだろう? 何か気づいたことはないか!?」


ワイ「いや、普通に歩いてきただけやで」


教師「本当に何もしていないのか!?」


ワイ「してへんよ! トイレ行っとっただけや!」


教師「……分かった。君が意図的に何かしたわけじゃないんだな」


ワイ「せやで。トイレ行っとっただけや」


教師「なら頼みがある。結界管理室へ行って、君が通れたことを報告してきてくれ!」


ワイ「ワイが!?」


教師「こっちは現場を離れられないんだ!」


ワイ「いや、頼み事するテンションと怒るテンションが同じなんよ!」


教師「本当に頼む!」


ワイ「分かった、分かった……」


ワイ、歩き出す。


ワイ「……ワイ、トイレから帰ってきただけなんやけどな……」

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