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異世界転生ワイ ~ワイの魔力が異常って、低すぎって意味よな?~  作者: 下北ゴリラ


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第5話 それは、デカい犬だった

ワイ、結界管理室へ向かっていた。


なんでや。


トイレから帰ってきただけなのに。


ワイ「歩いて通っただけなんやけどなあ……」


まあ、頼まれたので行く。


廊下は騒がしかった。

教師たちが走り回り、生徒たちは結界の前で足止めを食らっている。


教師「そっちはまだ通れない! 別の経路を確認してくれ!」


教師「魔物の位置は!?」


教師「まだ確認中です!」


大変そうやな。


そんなことを考えながら歩いていると、中庭の方から声が聞こえてきた。


生徒「おい、あれ……!」


生徒「魔物じゃないのか!?」


ワイも覗いてみる。


中庭に、デカい犬がいた。


四足歩行。大きな胴体。毛も生えている。

かなり大きめのワンちゃんや。


ワイ「でっかい犬がおる!」


生徒「犬じゃない! 魔物だ!」


ワイ「そんなわけないやろ、アレは犬や」


ワイ「ちょっと近くで見てくるわ」


生徒「待て! 危ないぞ!」


ワイ、走る。


生徒「話を聞け!!」


なんか怒られた。


中庭に近づく。


犬がこちらを向いた。


ワイ「おーい」


返事はない。


そのとき、犬が地面を蹴った。


ワイ「えっ、速っ――」


巨大な頭が、目の前に迫る。


ドォンッ!!


轟音とともに、魔物の体が横から吹き飛んだ。


ワイ「うおっ!?」


土煙の向こうに立っていたのは、レオンだった。


レオン「大丈夫か、ワイ!」


ワイ「え? あ、うん」


レオン「よかった……!」


駆けつけた教師たちが、魔物を取り囲む。


教師「全員、下がれ! ここから先は近づくな!」


レオン「先生、右側をお願いします!」


教師「分かった! 正面は任せる!」


レオンが魔法を放つ。

教師たちも連携して魔物を押さえ込んだ。


閃光。轟音。


やがて魔物は地面に倒れた。


教師「……討伐、確認」


周囲から安堵の息が漏れる。


レオンがワイのところへ来た。


レオン「怪我はないか?」


ワイ「いや、特に」


レオン「そうか……よかった」


レオンは、ほっと息を吐いた。


レオン「ありがとう。君が魔物を引きつけてくれたおかげで、対処する時間ができた」


ワイ「……ん?」


レオン「危険なことをさせてしまったな。本当にありがとう」


ワイ「いや、犬を見に行っただけやで?」


レオン「……犬?」


レオンは何とも言えない顔をした。


倒れた魔物を、改めて近くで見る。


……ん?


毛に見えたものは、一本一本が細い触手のようになっていた。目は小さな目が集まった複眼。口元には、歯なのか何なのか分からないブラシ状の器官がびっしり並んでいる。


しかも、死んでいるはずなのに、触手がウネウネ動いていた。


ワイ「…………?」


ワイ「よく見たら犬ちゃうやんけ」


ワイ「…………気持ち悪ッッ」


思わず後ずさった。


教師「どうした?」


ワイ「いや、これ見て平気なん!?」


教師「魔物の死骸だぞ?」


ワイ「いやそうやけど」


───


その後、ワイはようやく結界管理室へ連れていかれた。


中では、結界の状態を調べていた技師が、記録を見比べていた。


技師「結界の誤作動が起きた時、君だけは結界を通れたんだね」


ワイ「せやで」


技師「妙だな……結界の記録には、君がどこかを通過した形跡がない」


ワイ「でも通ったで」


技師「記録上は、どこにもいない事になっている」


ワイ「ここにいるワイはいったい……?」


技師「……それを確認している」


なんか、ワイの存在証明みたいになってきた。


技師は結界の仕組みを説明した。


技師「結界は近づいた人の魔力を読み取って、通行できるか判定する。登録情報によれば君の魔力は……『0.000』?」


ワイ「せやで」


技師「なるほど。君はもはや魔力の通わない無機物のようなものか」


ワイ「無機物」


技師「もしくは……魔力が微弱な虫か、植物か、菌類か……」


ワイ「ワイは人間ではなかった……?」


技師は説明を続ける。


技師「魔力が全くないのであれば、君が判定に引っかからず通過できたことは説明できる。だが、今回の結界がどうしてこうなったのかは、まだ分からない」


技師「ともかく、原因が分かるまでは、むやみに結界へ近づかないでくれ」


ワイ「いや、トイレから帰ってきただけなんやけど……」


技師「トイレから帰ってきた、と……記録」


ワイ「そこは記録せんでええやろ」


なんか大事になってきた。


そのあと、今度は養護教諭のところへ連れていかれた。


養護教諭「魔物の近くにいたんだから、念のため身体を確認するね。痛いところはある?」


ワイ「ないで」


養護教諭「じゃあ、魔力反応も含めて簡単に検査するよ」


測定器が身体のそばを通る。


ピピッ。


養護教諭「…………?」


養護教諭「えっ……魔力が、ない……?」


養護教諭「そ、そんな……!まさか、もう死……死……」


ワイ「生きとるわ」


養護教諭「待って。そんなはずは……」


もう一度。


ピピピッ。


養護教諭「………………!!」


養護教諭「……魔力が0.000!?」


養護教諭「やっぱり、もう死んで……」


ワイ「生きとるわ!」


養護教諭「息もしてない!」


ワイ「しとるやろがい!」


養護教諭「でも……でも……魔力が」


養護教諭「……なんで生きてるの?」


ワイ「もう帰ってええか?」


────


その後、結界の異常については、技師による調査が行われた。


後日、ワイは結界技師から調査結果を聞かされた。


技師「原因が分かったよ。結界の通行判定、その処理が逆転していたんだ」


ワイ「逆転?」


技師「本来なら通れる者を拒否し、拒否するはずの者を通してしまっていた。判定が、まるっきり逆になっていたんだ」


ワイ「なんやそれ。結界、反抗期か?」


技師「……? 結界に反抗期なんてないよ」


ワイ「そこは分かっとるわ!」


今回の異常とは別に、ワイには、結界が判定するための魔力反応そのものがない。


そのため、通常の結界でも魔力による通行判定に引っかからず、通過できるのだという。


ワイ「つまり、結界が壊れとっても壊れとらんでも、ワイはよう分からん扱いなんか……」

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