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異世界転生ワイ  作者: 下北ゴリラ


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第2話 魔力認証、通りません

入学試験から数日後。


ワイは魔法学校の門をくぐっていた。


門柱には、『ラミレス魔法学校』の名が刻まれている。


あの日、魔法教師には「才能ないから田舎に帰りなさい」と言われた。


言われたんやけど。


なぜか入学手続きの案内が届いた。


ワイ「どういうことなん?」


書類には、入学に必要な手続きと日時がきっちり書かれていた。


ワイ「まあ、入れるんならええか」


深く考えるのはやめた。


この世界、神様の事務処理からしてあの調子や。


学校の事務に一貫性を求めてもしゃーない。


――


入学手続き窓口。


職員「では、学生証の発行を行います。こちらに手を置いてください」


窓口には、小さな板状の装置が置かれていた。


ワイ「手を置くだけでええんか?」


職員「はい。魔力承認が完了すると、学生証が発行されます」


なるほど。


魔力で本人確認するタイプか。


ワイは装置に手を置いた。


……。


……。


職員「……あれ?」


ワイ「ん?」


職員「もう一度お願いします」


ワイは手を置き直した。


……。


……。


職員「反応がありませんね」


ワイ「せやな」


職員「せやな、ではなくてですね」


ワイ「いや、ワイ魔力ゼロやし」


職員「あっ」


職員は書類を確認した。


職員「……本当ですね。0.000」


ワイ「せやで」


職員「測定結果が出ているのに、学生証の発行システムが魔力承認を要求してくる……」


ワイ「仕様の敗北やん」


職員「ちょっと待っててください」


職員は窓口の奥へ引っ込んだ。


待つこと数分。


別の職員が来た。


職員B「こちらの端末で試してみましょう」


ワイ「端末変えたらいけるん?」


職員B「通常は、こちらでも同じ処理ができます」


ワイ「通常は、ね」


手を置く。


……。


職員B「反応しませんね」


ワイ「せやろな」


職員B「ちょっと待っててください」


また奥へ行った。


戻ってきた職員は、別の書類を持っていた。


職員「学生証の発行自体は可能なのですが、魔力承認の記録が通らないと、校内の利用登録が完了しないようです」


ワイ「カードは作れるけど、カードとして使えんってこと?」


職員「簡単に言うと、そうなります」


ワイ「詰んどるやん」


職員「いや、まだ手はありますよ。ちょっと確認しますね」


職員は申し訳なさそうに頭を下げた。


システムがワイを想定していない。


――


その後も、似たようなことが続いた。


校内の設備を使おうとすれば、魔力認証。


学生用の端末を受け取ろうとすれば、魔力認証。


寮の利用登録を確認しようとしても、魔力認証。


ワイ「この世界、何をするにも魔力いるんか?」


職員「本人確認を簡単かつ確実に行うためです」


ワイ「ワイ、本人やで」


職員「それは確認できているのですが……」


ワイ「本人確認できてるのに本人確認で止まるんか」


職員「すみません」


謝られると、こっちも強く言いにくい。


職員たちは手順を変えたり、別の端末を試したり、担当部署に問い合わせたりしてくれている。


誰かがワイを追い出そうとしているわけではない。


ただ、魔力があることを前提に作られた仕組みは、魔力がない人間の扱いを知らないのだ。


ワイ「神様、魔力欄くらい入力しといてくれや……」


今さら届かん苦情を、心の中で申し立てた。


――


寮の部屋割りが発表された。


掲示板を見ると、ワイの名前の隣にレオン・グランヴァルトとある。


ワイ「……なんで?」


レオン「君が同室の人か。よろしく」


ワイ「よろしゅう。試験でめっちゃ光っとった人やろ」


レオン「……少し目立ったね」


少し。


水晶が爆発したみたいに光っとったのに。


レオンは普通に礼儀正しかった。ワイを見下す様子もない。


レオン「手続きは済んだ?」


ワイ「学生証の魔力認証が通らんくて、いろいろ止まっとる」


レオン「それは困ったね。寮の担当者にも相談してみよう」


ワイ「助かるわ」


部屋にはベッドと机が二つ。壁には設備の操作盤がついていた。


レオン「照明や給湯設備は、ここから魔力で操作するんだ」


ワイ「給湯!」


今日は疲れた。


温かいシャワー。今日のワイはそれだけを楽しみにしていた。


操作盤に手を置く。


……。


何も起きない。


ワイ「魔力を流すんやな」


レオン「そうだね」


ワイ「なるほどな」


シャワー室でレバーを動かすと、水は出た。


冷たい。


ワイ「つめたっ!」


レオン「温度調整にも魔力が必要だからね」


ワイ「それは便利やなあ」


その日は、冷たい水でどうにか済ませた。


――


翌日。


事務窓口から呼び出しがあった。


職員「待たせました。普通の手順じゃ無理だったので、これを使ってもらうことになりました」


机の上に、腕輪のようなものが置かれた。


ワイ「なんやこれ?」


職員「保守管理業務で使う認証補助具です。例外的な処理を行えるよう、設定してあります」


ワイ「保守管理?」


職員「設備の点検や管理に使う道具です。今回は特別に貸し出します。学生証の発行と、校内設備の認証を通す手助けをしてくれます」


ワイ「つまり、これがあれば?」


職員「認証が必要なものなら、ですね。全部の設備に使えるわけじゃないですが、これで学校生活に必要な手続きは進められると思います」


ワイ「最初からこれでよかったんちゃうか?」


職員「通常は必要のないものですので……」


ワイ「ワイが通常やない、と……」



こうして、学生証の発行は完了した。


校内の認証も通るようになった。


今まで止まっていた手続きが、嘘みたいに進んでいく。


学生証を受け取る。

利用登録が完了する。

設備の認証も通る。


ワイ「おお……! 文明や……!」


職員「まあ、普通の手続きですからね」


ワイ「その通常がワイには遠かったんや」


ようやく学校生活が始まった気がした。


腕輪を手の中で転がす。


これがあれば、もう大丈夫。


学生証も使える。

校内の設備も使える。

いちいち職員を呼ばなくてもいい。


ということは。


ワイ「……温かいシャワーも、いけるんちゃうか?」


希望が湧いた。


昨日は冷水しか出なかった。


だが、あれは設備の認証が通っていなかったせいかもしれない。


今は通る。


ワイ「勝ったな」


――


その日の夜。


ワイは意気揚々とシャワー室に入った。


腕輪を身につけている。


学生証もある。


認証も通った。


準備は万端。


ワイ「昨日のワイとは違うんやで」


操作盤に手を置く。


……。


何も起きない。


ワイ「ん?」


腕輪を近づけてみる。


……。


ワイ「おい」


昨日と同じレバーを動かす。


冷たい。


ワイ「冷たっ!!」


即座に止めた。


ワイ「なんでやねん!! 認証通ったやろがい!!」


そこへ、歯を磨きに来たレオンが顔を出した。


レオン「どうしたんだ?」


ワイ「これ見てみい! 学生証も認証も通るようになったんやぞ!」


レオン「それはよかった」


ワイ「なのにシャワーが冷水や!」


レオン「……シャワーは認証じゃなくて、使う人が直接魔力を流して起動する方式だよ」


ワイ「えっ」


レオン「だから、認証補助具では起動できないと思う」


ワイ「先に言えや!!」


レオン「昨日、説明したと思うけど……」


ワイ「聞いてへんかったわ!!」


レオン「そうか……」


レオンは少し考えてから、申し訳なさそうに言った。


レオン「必要なら、僕が温度を調整しておこうか?」


ワイ「いや、それはええ……」


『主人公』にシャワーを温めてもらう。


なんか違う。


ワイは冷たい水の止まった蛇口を見つめた。


認証の問題は解決した。


学生証も使える。


校内設備も、使えるものは増えた。


ただし、魔力を使わなければ起動しない設備は別。


ワイ「……魔法学校、便利やな」


レオン「うん」


ワイ「ワイ以外にはな!!」

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