第1話 異常な魔力計数
白い空間だった。
やたらと明るい。
雲のような床。
受付カウンター。
番号札。
ワイの番号は「1038」。
神「はい、次。転生希望者1038番」
ワイ「はい」
神は分厚い帳簿をめくっている。
隣には天使。
後ろには長蛇の列。
神「前世、特筆事項なし。死亡原因、交通事故。はい次」
ワイ「雑やな」
神「魔力付与します。基本値を――」
カタカタと何かを操作する。
ワイ「なにしてるん?」
天使「魔力量、平均値で入れますか?」
神「うーん……まあいいや。チェック……完了っと」
ワイ「何が完了なん?」
神「転生準備完了。はい次の世界」
ワイ「ちょっと待てや」
神「時間がない。混んでる」
天使「魔力欄、未入力のままですけど」
神「……え?」
一瞬、沈黙。
神は後ろを見る。列がざわついている。
神「……まあ、問題ないだろ。行け」
ワイ「え?」
床が抜ける。
天使の声だけが遠くで響く。
天使「本当に大丈夫ですかー?」
神「知らん!」
暗転。
――
気づいたら泣いていた。
赤ん坊だった。
数年経った。
この世界には魔法があるらしい。
一度も魔法は出なかった。
木の棒を振り回して怒られた。
特に理由はなかった。
そして今日、魔法学校の入学試験である。
ワイ「今さら覚醒するパターンやろ」
魔法学校・入学試験会場。
中央にそびえる巨大水晶。
教師が腕を組んで立っている。
魔法教師「これより魔力測定を行う。触れて、流せ。以上」
雑。
ざわざわ。
「今年は当たり年らしいぞ」
「すごいヤツが来てるって」
「100点台出るかもよ」
ワイは列の後ろで肩を回す。
ワイ「ほーん、まあワイが軽く塗り替えるけどな」
数人が測定を終える。
39.2
44.0
50.4
順調。
そして。
空気が変わる。
人垣が自然に割れる。
現れたのは、いかにも“本編の主人公”みたいな少年。
黒髪。
真っ直ぐな目。
立ってるだけでBGM流れそう。
魔法教師「レオン・グランヴァルト!」
レオン「はい」
ざわ…ざわ…
レオンが水晶に手を置く。
一瞬の静寂。
レオン「――」
ドォン。
水晶が爆発したみたいに光る。
目盛りが跳ね上がる。
50
100
200……300……
止まらない。
400……!500……!
広場が揺れる。
受験生「な、なんだと……!?」
「これほどの魔力とは……!」
魔法教師「馬鹿な……!? こんな魔力があって良いのか!?」
魔法校長がゆっくり歩み出る。
魔法校長「フォッフォッフォ……これほどの逸材は、実に10年ぶりじゃ……」
ワイ「けっこうおるんやな」
試験官が震える声で言う。
試験官「きみの魔力計数……!!」
試験官「999.9だ!!」
歓声。
レオンは静かに一礼。
レオン「まだ未熟です」
完成している。
拍手の渦。
そして。
魔法教師「次!」
ワイ、前へ。
同じ水晶。
同じ石畳。
同じ空気。
ワイ「魔力試験か……どれ」
ざわ…ざわ…
「さっきの後はきついぞ」
「あの余裕……二人目の逸材か?」
ワイ「フンッッッ!」
沈黙。
水晶、無反応。数値が出ない。
試験官「む……?計器の故障か……?」
魔法教師「もう一度、やってみろ」
ワイ「フンッッッ!!!」
水晶が反応する。
受験生「な、なんだと……!?」
「これほどの魔力とは……!」
魔法教師「馬鹿な……!?こ、 こんな……!」
校長が歩み出る。
魔法校長「フォッフォッフォ……」
試験官が水晶を覗き込む。
試験官「きみの魔力計数……!!」
空気が張り詰める。
試験官「……0だね」
静寂。
魔法教師「才能ないから田舎に帰りなさい」
ワイは肩を叩かれた。
ざわ…ざわ…
「ゼロ?」
「表示されるんだそれ」
掲示板に数字が貼られる。
最上段。
レオン・グランヴァルト 999.9
最下段。
ワイ 0.000
小数点以下三桁まで、きっちりゼロ。
ワイは首をかしげる。
ワイ「ワイ、なんかやっちゃいました?」




