第十六話 「意志と石」
桜乃助は奉行所に来ていた。
「おぉ。真昼間からどうした?」
同心が話しかける。
「九郎に用がある。」
九郎とは、奉行だ。
二十六歳。
若いながら上り詰めた実力派。
「奉行は奥に。」
桜乃助は奥へと向かう。
そして部屋の襖を軽く叩く。
「九郎。俺だ。」
「入れ。」
そこには業務をこなす九郎がいた。
「何の用だ?」
「吉原潜入についてだ。身柄の受け渡しは即時行いたい。」
「つまり?」
「そっちから何人か手配してくれ。」
「わかった、五人でいいか?」
「大丈夫だろうな。こちらからも幹部が全員向かう。」
「よし、集めておく。」
「それと…」
「何だ?」
「何か仕事はあるか?最近仕事が少ない。」
「働き者だな。探しておく。」
「わかった、では。」
「よし。」
桜乃助は奉行所を去った。
そして、拠点へ帰る途中だった。
「…?」
足に何かがぶつかった。
「石か…」
桜乃助は石を投げようとした。
その時だった。
「やめるのじゃ!」
石から声がした。
「無礼な!いきなり投げようとするとは!」
「?????????????」
桜乃助は困惑した。
どうやらこの声は自分にしか聞こえて無いようだ。
「ちょいと人気のない所に行ってくれ!」
桜乃助は奥へ向かった。
「石を地面に置け!」
石を置くと人が現れたが、何かが違った。
「耳…」
頭には、狐の耳があった。
「その石は妾の家じゃ。化け石じゃ。」
「??????」
桜乃助は頭を抱えた。
「おっと、自己紹介が遅れたの。」
少し改まって、口を開く。
「妾は八重。百四十二歳の狐じゃ!」
桜乃助は去ろうとした。
「待つのじゃ〜!」
「離せ!」
桜乃助は困惑したままだった。
「お主、紅の頭領じゃろう?」
「何故知っている。」
「噂じゃ噂。切れ目の美青年が頭領じゃと。」
「そうか。」
桜乃助は逃げようとした。
「止まるのじゃ!」
念力で桜乃助を引き止める。
「お主は面白いやつじゃ!気分が乗れば助けてやろう!」
「…」
桜乃助は八重を石に封じ込めた。
「出せ〜!」
第十六話 「意志と石」 完




