第十一話 「頭領の女」
「頭領!拠点行くよ!」
「行かない!」
「行きたいです!」
二対一。
桜乃助は八千代と凛に引っ張られながら拠点に向かう。
「やめろ!やめろ!」
「今更引けないよ〜!」
凛が抵抗する桜乃助の頭を引っ叩く。
とうとう長屋に入った。
「帰ったよ〜!」
拠点の隠し戸を開け、ダッシュで駆け込む。
その頃、拠点の奥の広い部屋では任務成功の宴会が開かれていた。
「頭領!何処行ってたんですか?!」
「吉原からすぐ帰ると思ってたのに!」
部下が駆け寄る。
「全部、凛が悪い。」
桜乃助は引っ張られ、後ろを向いたまま答えた。
「凛、その嬢さんは?」
辰三が酒を飲みながら聞く。
「八千代ちゃん!」
「初めまして!」
飛瑛がやってくる。
「なんか繋がりあんの〜?」
凛がニヤニヤしながら口を開く。
「この子!頭領にベタ惚れな子!」
その瞬間、全員振り向いた。
「えぇ〜!!!!!!!!!!」
「違う!」
桜乃助はすぐ否定した。
「ち、違います!」
八千代も続く。
凛は八千代に顔を寄せ、耳打ちする。
「ホントは〜?」
「好きです…」
聞こえないような小さな声で言う。
「凛、酒禁止にするぞ。」
「なんで〜!」
桜乃助は奥の部屋へ行く。
あの作戦に参加した部下・幹部が集まってる事を確認し、頭領の席に座る。
「頭領、ついに女ですか?」
「黙れ!」
耳を赤くする。
「結構可愛いじゃん〜」
飛瑛が八千代に近づこうとするが、桜乃助が近くにあった番傘で止める。
「飛瑛、お前はそもそも仕事があったろう。」
「え〜後でがいい〜」
「今。」
「は〜い。」
飛瑛は仕事に向かった。
八千代は桜乃助の隣に座った。
辰三は酒を飲み干して聞く。
「嬢ちゃん、頭領とはどういう関係で?」
「友達です!」
「頭領、ホントかい?」
「…」
無言で頷く。
辰三が凛に酒の入った瓢箪を投げ渡す。
「凛、あれは余計な世話だぞ。」
「いいじゃん!」
凛はすぐ飲んだ。
「…」
桜乃助は机の料理を食べる。
「頭領は酒を飲まねぇんだよな〜」
辰三が桜乃助に茶を渡す。
「……食っていいぞ。」
「はい!」
八千代はすぐ食べ始めた。
「ここで、頭領の話でもしてやるか…」
辰三が箸を置く。
「聞きたいかい?嬢ちゃん。」
「はい!」
「よし…!」
桜乃助は嫌な予感がして自室に戻ろうとするが、凛に掴まれる。
「わかったわかった。まずはここの話だ。」
辰三は酒を少し飲んだ。
「ここは頭領と幹部の集会所兼住居だ。個人の住居は持ってるが、大体ここに居る。報復が怖いからな、集団で居たら対処できるだろう?」
「へぇ…」
「幹部は八人。ワシ、凛、飛瑛…今はスリの捕縛とか、依頼されて飲食店や売店に行って代金の踏み倒しを取り締まったりしててな、ここに居ないが…行楽、相楽、扇、鳴谷、そして禅だ。」
「多いですね!」
「行楽と相楽は兄弟。扇は女、鳴谷は男だ。扇は嬢ちゃんと馬が合うかもな。」
「会ってみたいです!」
「まぁ大体このくらいだな…じゃあ頭領の話を…」
「やめろ!」
途中で遮る。
「頭領はな、小さい頃からよく女が寄るんだ。初めて告白されたのはいつだったかな…」
「やめろ!」
「そうだ!十の頃だったな!」
「…」
桜乃助は去ろうとするが、八千代に止められる。
「頭領は誰でも落とすからな。遊女、町娘、女中…誰でもだ。」
桜乃助は俯いた。
「へぇ…」
八千代は少し嫉妬したようだった。
「まあ頭領はそういうヤツだ、昔から。」
「それで言うなら八千代ちゃんも!」
凛が口を開く。
「八千代ちゃんは美人だから遠方から客が来るの!八千代ちゃん目当てで!」
「いや…そんな…!」
八千代は少し顔を赤くする。
「この前だって来たよね?」
「来ましたけど!」
桜乃助の目が少し殺気を帯びる。
「まあお互い様ね!」
第十一話 「頭領の女」




