幼馴染たちの大晦日
「いえい! 明けましておめでとう」
十二月三十一日、大晦日の夜のマンションのリビングには俺と涼香、そして神代に伏見と幼馴染コンビが勢揃いしていた。
オードブルを囲んでテレビで歌番を流しながら賑やかな夜のひと時を過ごしている。
「雪はどうしてそんなに元気なんだ・・・・俺はもう眠い」
そう言って神代は伏見の膝元に寝そべってしまった。普段から規則正しい生活をしているのだろう。こんな時間まで起きてる方が彼にとっては珍しいのかもしれない。
「雪ちゃんの彼氏はナチュラルに甘えん坊なのかな」
俺の隣に座っている涼香がどことなく羨ましそうにその様子を眺めて言った。
「そうだね、甘える時は凄く甘えて来るよ。香坂くんもせっかく添い遂げる誓いをしたならとことん甘えなさい」
「待って、なぜそれを」
「ごめん天音・・・・嬉しくて昔から応援してくれた幼馴染には報告したかったから」
「まあ、別に良いんだけど。それよりさ俺も膝借りても良い?」
「え、あうん、どうぞ」
俺は涼香の膝元に仰向けに寝そべる。彼女の顔を見上げるような形でお互い見つめ合った。
「頭、撫でてもらえると嬉しいな」
「天音からそう言ってくるの初めてじゃない?」
そう言いながら彼女は優しく俺の頭を撫でる。膝の程よい弾力と撫でで俺も起きてられる時間はそう長くないだろうと思った。
「・・・・」
ちらりと横目で見れば伏見も座ったまま眠りに落ちている。涼香もうとうとし始めているので今日は全員リビングで寝ることになりそうだ。
俺は彼女の頬に手を伸ばして触れる。
「こうやってすぐに触れられなくなるのやっぱり寂しい」
「半年間でお互い沢山触れ合ったもんね」
「定期的に遊びに来てくれないと、泣くかも」
ふふふっと彼女は笑いをこぼす。
「高校生で泣いてる天音、見て見たい」
「薄情だなー」
「冗談だよ、うん数か月一回ペースになっちゃうけど遊びに来るね」
「大学生になったらまた同棲出来るかな?」
俺は流れに任せて気になっていたことを彼女に投げかけてみた。俺たちは一応、一生を添い遂げる誓いをした仲である。
しかし、あくまでも俺と涼香の間だけで、本格的にとなるとお互いの両親とも話し合う必要があるだろう。
「分からない、けどまずは大学に受かるかどうかじゃない? 天音は」
「あはは・・・・まことにおっしゃる通りで」
「でも、もし受かったら一緒に相談しに行こうね」
「良いのか・・・・?」
「当たり前でしょ、だから一年間お互い頑張ろうね・・・・天音」
彼女はそう言い残してこくりこくりとしてから、小さな寝息を立て始めた。
「おやすみ涼香」
そう言って俺も目を閉じる。年が明けてから春先までは長いようで実際のところあっという間に過ぎていくということを今までの人生でよく分かっている。
一年間という歳月もあるいはそうかもしれない。だからこそ、ここから先は一日も無駄には出来ないのだ、色々な意味で。
視界が暗転して意識が遠のいてく中、つけっぱなしのテレビからは丁度そんなようなことを歌った曲が流れていた──。




