告白以後の夜
祭りの後というのは往々にして寂しさが伴うものだと思う。
でもそれは今の俺たちには無縁の話だ。
──告白が成功した日の夜、俺たちは久しぶりに一緒に布団を被る。横になっているのは寝室ではなく一番長く時間を過ごしてきたリビングでソファー前のテーブルをどけて布団を敷いてそこに寝ている。
「この距離で向き合った感想は?」
俺と彼女はお互いの息遣いが割とはっきり分かるくらい近い距離で向き合っている。
「不思議と緊張はしないんだ、一言に集約すると尊い」
「撫でても良いんだよ?」
淡い月光に照らされた彼女の微笑みの前に手が動かない。
「そっちこそ」
情けないことだが、彼女にパスした。いくら彼女とて容易ではあるまい。
「遠慮なく」
「なっ」
彼女は何の躊躇もなく俺の頭を撫でる。完全に誤算というか、そういえば告白前から彼女はこういうことに躊躇なんてしていなかった。
悔しいが・・・・悪くない。
「私、実はこういうことする時いつも思うことがあるの」
「ほう」
「可愛いよね天音ってさ、嬉しいって顔に書いてあるみたいでやりがいがある」
「・・・・逆向こうかな」
ふふっと彼女は笑みをこぼして言った。
「そんな素振りする気もない癖に、そういうところ」
強い・・・・完全に彼女の土俵の上ってわけだ。
「降参するからずっと撫でてくれ」
それから、彼女は本当にずっと撫でていて時々、目を細めてはふっと口元を緩める。その時々出てくる表情の破壊力は強く、視線を逸らしたいが、向かい合っている以上彼女の顔を見るしかなく、これを狙ってやっているなら相当なものだ。
「もう、いいよ、本当に降参だ」
「そんなのでこれから耐えられるかな?」
「ほどほどにしてもらえると嬉しいんだが」
「考えとく」
なんか、一番怖い返答じゃないか考えとくって。
「これからまだ同棲終了まで時間あるって考えるとワクワクするね」
(ドキドキとかじゃないんだ)
「涼香はしたいこととかあるの?」
したいことか、と言って彼女はしばらく沈黙し困ったように眉を下げる。
「いっぱいあり過ぎて、なにとは言い切れないかも」
「同じく」
応えて「ね」とお互い微笑み合った。
個人的にこの段階の関係で楽しみなイベントを挙げてみる。
「クリスマスとか」
「天音、その頃には受験勉強で忙しいよ?」
たしかにぐうの音も出ない。俺は当然高校受験と同じく彼女と同じ大学を希望する。正直今から真剣に勉強して届くか届かないか、届かない可能性が高いという難関だ。
「でもパーティーくらいはしたいよね」
俺の顔に出た落胆の色を見抜いたのかもしれない。
彼女は穏やかな声でそう言って俺の頭を撫でる。
顔に出やすいというのは良いことなのか、悪いことなのか微妙なところだと思う。
「学校では他人っていうのもなんか寂しいよな」
そうかな、と意外にも彼女はなんでもなさそうに返す。
「秘密ってなんか良い響きじゃない?」
「そう言われればそうなのかも」
「特別感増すと思うな・・・・うん」
彼女の声が急激に小さくなり、瞼が上下し始める。
夜景の時もそうだったけど、彼女の眠気は一気に押し寄せてくるタイプみたいだ。
「おやすみ涼香」
「ん、天音も」
俺も目を閉じる視界は暗く彼女の規則正しい寝息がオルゴールのような効果を発揮してすぐに眠くなる。
文化祭にクリスマスその後も俺はこれから来るであろうイベントと同棲生活に期待を抱いて眠りにつく。
片思いだった幼馴染がそうではなくなり、ここからどれだけさらに近くなるか楽しみだ──。




