6・突撃訪問
私はいま、セレクトショップなどのおしゃれなお店が立ち並ぶチェスリー通りを抜け、とあるアパートの前に立っている。
「えぇっと、ここでいいんだよね?」
前世の知識を活かせると、ナイスアイディアが浮かんだ私。
自分のアイディアを形にするためにペンを持った。なるべくお金をかけないためにと言うのもあって、脚本を書いてみようと思ったのだ。
が、しかし。甘かった。
なぜ脚本家というプロの職業が存在するのか、身に染みた。軽んじていたつもりはありませんでしたが、そう思われても仕方がない愚かな行為でした。すみませんでした。
そうして私は父に相談した。
話を聞いてくれそうな、関わりがある脚本家さんはいないかと。
『脚本家さんかー。あんまり現場にくること少ないから…』
『あんまりってことは、1人や2人ぐらいいるってことよね! 思い出して!!』
『ううーん。何度か話したことがあるのはソポさんぐらいかな?』
と、首を傾げた父。
全然可愛くないけれど、有益な情報には感謝した。
「はっ、はっ…なんでエレベーターがないのよ!」
マーカスからの借金を完済して、お金ができたらエレベーターを開発しよう。
息切れしながら到着した最上階はなんだか重々しい雰囲気が漂っている。
そう、それはまるで開かずの扉みたいに。しかし、ここで怖気づくわけには行かない。
「すみませーん。ソポさんはいらっしゃいますかー?」
トントンとドアを叩くが反応なし。
でも上がる前にこのアパートの管理人に聞いた時『ソポさん? あぁ、最上階の。ずっと家にいるわよ』と言っていたので、部屋にいるはずだ。
居留守なんてさせない。
「すーみーまーせーん! ソポさーん!! すーみーまーせーん!!」
ドンドンと力いっぱいにドアをたたく。遠慮なんてしない。時間がないのだ。何度も足しげく通うなんていう時間ももったいないと思うぐらいに。ダメならダメと言ってもらって、次の脚本家探しをしなければいけない。
「ソポさーん!! いらっしゃるんでしょー!? ここにいるのはわかってるんですからねー!!」
大声をとともにドンドンドンと何度も叩く、昔のドラマでしか見たことがない昭和の取り立て屋のようなことを繰り返して、数分。
ガチャリと、ドアが開いた。
「うるさいなぁ」
「うっ…」
思わず眉間にシワがよってしまうへんな匂いとともに現れたのは、もっさりと目元まで伸びた前髪が伸びた無精髭の男だった。
「あ゛ぁ? なんのようだ」
うなるような濁った声には圧がある。
「あ、あなたが、ソポ・グレース、さんです、よね」
「んん? そうだが?」
ごくりと喉がなった。
とある神話を基に作られた「オイディーン物語」という代表作をもつ、ソポ・グレース。基本にとらわれない革新的な脚本を書いて演劇界に衝撃を与えたとか、なんとか。
そんな人間ならば、私の前世の知識の話に食いつくはず。
たとえ見た目が変質者のような男であっても、目の前に現れた人間は脚本家として地位を確立している。
「私の話を聞いてください!」
「・・・はぁ゛〜?」




