24・審査進行中
「1番、エナ。歌は”虹の向こう側へ”を歌います」
公正な審査を行うために、家名はなしの名前のみ。衣装は白い衣装で統一した。出自などでの先入観をもたないようにする対策だ。
今回書類審査で合格を出したのは13名。1人約5分だと考えても約1時間弱。有名歌手でもない歌を1時間聞き続けることは無類の音楽好きでも難しい。
ただ、この審査は純粋に歌唱力も見るとともに、いかに観客を魅了するかパフォーマンスなどのその人自身の魅力を見ている。
「2番、オーロラです。歌は”ドミソドの歌”を歌います」
衣装の統一には前世でもいろんな意見があったけれど、変えることができる髪型や披露する選曲で個性やどれくらい自己分析できているのか見ることができるというコメントが自分の考えが近く感じたので、今回の審査で採用した。
そう言った個性の差というのものを興味本位で来てくれた人達も一緒に感じてもらえたらといいなと思っている。
「6番、ミリセント。歌は”わたしはひとり”を歌います」
あぁ、そっか。彼女がこの歌を歌うと申し出た子か。
この曲は、恋した相手が自分以外の人を好きになってしまう…相手の世界に自分はいない、という切ない歌だ。
ほかの参加者は大人から子供まで親しみのある童謡系やテンポ感のある明るい曲調を選んでいる。その中でバラード系の暗い曲調はかなりの難易度が高くなる。
歌唱力に自信があるのか、それとも思い入れがあるのかのどちらかになるけど、どちらにせよ。確実に何かしらの強い信念があるのだろう。
さて、次の子は。
そう思って進行表を確認するために視線を下げていたはずなのに、私は彼女が歌いはじめた瞬間、顔を上げていた。会場にいる観客たちが息をのんだことが伝わってくる。
「っ…」
すごい…胸がドキドキする。
こういう出会いがあるから、私は推し活を辞められなかったんだ。
「アリシアちゃん」
母に小さく声をかけられる。
こういうところは劇場の娘として、私は修行が足りない。反省。
審査はみんなに任せて、進行に集中しないと。
「7番、ポワです。歌は”明日”を歌います」
それから母にフォローされつつ、なんとか歌唱審査部門を終えることができた。
次はーー「演技審査」だ。
10分間の休憩を挟む。このタイミングで、ジムノさんからソポさんへ交代も行う。
「ソポ、交代だよー」
「言われなくても分かっている」
肩の位置に手のひらを上げたジムノさんの横を通り過ぎるソポさん。
「んもー。つれないんだから、ねぇ?」
ジムノさんはそんなソポさんに肩をすくめて、ふわりと笑いかけてくれた。
「そうですね」
いつもと変わらない二人のやりとりに、ふっと力が抜ける。
緊迫した空気の中で、すこしだけ呼吸がしやすくなった。
緊張感がないのはダメだけど、緊張し過ぎもよくない。
「よし。ありがとうございます、ジムノさん」
「よくわかんないけど、どーいたしましてぇ」
くすりと静かに笑うジムノさんは、一枚も二枚も上手でこの世界での経験値が違うと感じる。
「アリシアちゃん、そろそろ時間よ」
「うん。ありがとう」
深呼吸して、ボタンに指を伸ばす。
ざわつく会場に再び、開演ブザーが鳴り響く。
演技審査ではオーディション合格者が出演する舞台の台本の一部を使用する。
一応、これは審査以外に目的がある。会場に足を運んでくれた人に向けての、新作舞台の宣伝も兼ねている。
「”この私を欺こうなんて、100年早いですわよ!”」
スポットライトが落ちる舞台上で豪華絢爛な衣装を身にまとい、パチンと扇子を閉じる。
このインパクトの強い台詞を聞いて、どんな物語なのか興味を持つ人はいるはずだ。
そして、現代知識を混ぜ込んだ要素を盛り込んだ、この強烈なキャラクターが受け入れてもらえるかは未知数。
しかしオーディション参加者は、その、いままで見たこともないキャラクターを演じきらなければならない。
本当にどんな出会いになるのか、予想がつかなくてワクワクが止まらない。
※オーディション審査の詳細(細かいエピソード)は割愛してサクサク進めます!




