↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/28

21・理由も違う

 突然現れたくせに、うるさいってなによ。

 と言い返したいところだけど、それよりもマーカスにドス黒い影のようなもの見えるのが気になる。

 なんとなく野生の生存本能が”近づくな危険”と言っている。


「あ…そう。じゃあ、私はこれで」


 そろそろと後ろに下がってマーカスと距離を取りつつ、劇場いえの中に入る寸前、腕を振り下ろされて引き止められる。


「待てよ」


 私は仕方がなく目の前にある腕のぬし、マーカスを見上げる。


「な、なに」

「さっきまでいたヤツは商会の人間だろ。お前、商会に行ったのか」


 商会の人間、イルドさんのことだよね。

 こ、こわ。どこから見てたのよー!?


「そ、そうだけど」

「俺の融資が足りなかったのか」

「まっまぁ、そういうことになるのかな」 

「はぁ!?」


 マーカスの発した声には苛立ちが含まれていた。

 私の体は勝手にビクリと震えてしまった。


「な、なによ。商売人として金銭管理ができてないとか、無茶な計画だとか言うつもり!?」


 悔しいけど、マーカスの言う通り、経営の初心者として無謀な計画だとは思うけど、いろんな人の助けを借りながらここまで進めてきた。だから、ここで潰されるわけにはいかない。

 震えそうになる体を必死に止めながら、マーカスに向き合う。


「アリシア…そういう、わけじゃない」


 マーカスは眉を下げて、まるで困ったようなような表情を浮かべた。

 声もさっきまでの威圧的な雰囲気から一転して、小さくなっていた。


「そういうわけじゃないなら、なによ…」


 そんな風な態度をされてしまうと、私だって困る。

 マーカスの行動はいつだって理解不能だ。


「俺になんで言わなかったんだ」

「え?」

「追加融資の話」


 なんで、と聞かれても。

 予想もしなかった質問に一瞬、思考停止してしまう。


「それは…」


 正直、マーカスに頼りたくない気持ちが大きかった。

 でも感情だけで決めたわけでもない。前世、なにかのニュース番組で、取引先は分散させた方がいいと見たことがあった。


「1つのところに依存するより、分散させた方がいいって聞いたことあるし…」

「それはいつ、どこで、誰に、言われたんだ」


 急に距離を詰めてきたマーカス。


「ひぇっ。お、覚えていないわよ。だれかが話していたのをたまたま聞いたのっ」


 私はマーカスの気迫に負け、悲鳴のように叫んでいた

 マーカスがここにいることも、融資のことを聞いてきているのも、わけがわからなかった。


「アリシア…」


 それをどう思ったのか、マーカスはちからのない声で私の名前を呼んだ。

 マーカスの反応は気になったけど、またマーカスの強い瞳に負けてしまいそうで、私は視線をそらすことで逃げた。


「あらー? マーカスくん、いらっしゃい」

「おや。2人も、こんなところ立ってなにをしているんだい?」


 張り詰めた空気をぶち壊してくれたのは、我が両親だった。

 両親の陽気さに困ることもあるけれど、救われることも多い。ほっと息がこぼれた。


「ちょっと、話してただけ」

「…えぇ。近くに来たので、どうなのかなってアリシアとすこし、話していたんです」


 もっと何か言うのではないかと思ったけど、マーカスはそう静かに、いつものように好青年の顔で両親の言葉を返していた。


「それじゃあ、俺はこれで失礼します」


 いつもだったら居座るのに、今日は珍しくマーカスは両親に誘われる前に断りの挨拶をしていた。


「まぁ、ゆっくりしていってもいいのよ?」

「ありがとうございます。このあと、予定があるのですみません」


 マーカスはそう両親に話すと、くるりと私に背を向けて帰って行った。


「マーカスくん、忙しい中、足を運ぶなんて…」

「パパの若い頃を思い出すわ♡」

「覚えてくれていたんだね、ママ♡」


 両親はとびっきり仲が良い夫婦だと思っている。誰がどう見ても。


「はいはい。いちゃつくなら劇場いえの中でお願いします」


 マーカスの行動は両親とは違うし、理由も違う。

 だって、マーカスは私のことを嫌っているのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。