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第百四話 ニワトリ


「………?」


 神崎さんにふと違和感を覚える。

 ……彼女の魔力流れが急に変わった。

 そう、まるで別人のように……。

 今までに見たことがない現象に、不快感を覚える。


「冬至、逃げろ! そこから離れろ!」


 叫んで冬至に伝えようとするが、冬至は不思議そうに視線を返すだけ。

 そして、神崎さんは冬至にゆっくりと近づいていく。


「なっ……!」


 突然、神崎さんが冬至を攻撃した。

 攻撃された冬至は、膝をつき、神崎さんを睨みつけている。

 そして神崎さんは……、道満と同じように、同じ表情で僕に笑いかけた。

 

「……くそっ!」

 冬至の元に向かい、全力で走る。

 冬至を傷つけること、それは神崎さんが父であるお前にさえ逆らって、今の今まで守り抜いたこと……!

 実の娘の思いを、簡単に踏み躙りやがった!


「ついに手に入れたぞ、最強の召喚獣を!」


 彼女は言わないであろうその言葉が、僕の神経を逆撫でる。

「くそっ! 絶対にぶっ飛ばしてやる!」


 道満の召喚獣の能力は寄生であり、洗脳魔法を使える召喚獣に寄生させていた。

 なのに、今の神崎さんはおかしい。洗脳というより、精神が道満に乗っ取られているような……。


 ……いや、そんなことはどうでもいい、答えが出ない事を深く考えたって頭を痛くするだけだ。

僕がやるべきこと、それだけに集中しろ!


「やらせんぞ、青二才が!」

 神崎さんの姿で行く手を阻む道満。

「あとはお前だけだな。お前のような雑魚、障害にもなり得んがな」

「……道満、そこをどけ、お前じゃ僕は止められない」

 刺すような視線で僕は言う。

「この私がガキ1匹止められないだと? この状況を理解しているのか?」

「理解できるできないの話じゃない、ただお前みたいな卑怯者に負けるわけがない。それだけだよ」

「……絶望的状況に自暴自棄なったか、………ならば」

 道満が右腕を空に上げる。

 すると、空から、地面から、何十の召喚獣達が現れる。

 その中には、好実、翔介さん、神崎さんの召喚獣も見える。

「全員、洗脳したのか?」

「ああ。この数はずいぶん苦労した。……そして、最後に」

 道満の頭上に、ポンと小さな召喚獣が現れる。

『どうまん、あいつを倒せばいいの?』

「ああ、倒せばいいんだよ、アリス」

 いつもあのバカにピッタリくっついていた召喚獣が、道満の頭の上に乗る。

「どうだ、絶景だろう? 俺が何十年とかけてやっと手に入れた景色だ」

 そして…… 全ての召喚獣が、敵意のこもった視線を僕に向ける。

「文字通り、10秒もかからずに貴様を消してやる」 


 ……………。


「どうした、今度は黙ってしまったな?」

「……一つだけ、言っておくことがある」

「なんだ?負け惜しみか? 魔力が尽きているから負けたと言い訳するつもりか、惨めになるだけだぞ?」

 道満の言葉を無視し、僕は続ける。

「冬至が本気でお前を倒そうと思っていたなら…… 道満、負けていたのはお前だ」

「はっはっは! やはり負け惜しみじゃないか、滑稽だ……」


『コケコッコー!』


「………は?」


 ニワトリの鳴き声を聞き、素っ頓狂な声を出す道満。


『『『コケコッコー!』』』


 屋敷への出入り口から、囲いから、大量に溢れ出すニワトリ。

 そして群れとなったニワトリが、僕らの方向に目掛け翼を広げながら走ってくる。



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