第百二話 斉藤冬至VS皇翔介
『どうするの、とうじ』
肩に乗っているアリスが問いかけてくる。
「………クソッ!」
アリスの攻撃は、皇翔介の召喚獣には通じない。
何発威力の高い魔法を放とうが、そのすべてがバリアに打ち消される。
決着がつかない。なんなら魔力消費が大きい俺たちが先にガス欠になってしまう。
「……なるほど、確かに噂通りの強力な召喚獣だ。だが、私とミドリガメの敵でない」
『ミドリガメ〜』
「うるせぇっつってんだろ! だからなんなんだその鳴き声は!気が抜けるんだよ!」
あのヒヨコバカのように、召喚士としての実力があれば、なんとかなっていたかもしれない。
……結局いつもアリス頼りだ。召喚獣がアリスじゃなかったら、一端の召喚士にもなれないだろう。
『とうじ!』
「ぐるぁあ!!」
アリスに思いっきり頭をぶん殴られた。
「首が……首が向いちゃいけない方向に……⁉︎」
激痛によりたまらずうずくまる。
頭がぐらぐらする、は、吐き気も……。
『とうじ! なにダンゴムシみたいにうずまってるの!』
「お前がぶん殴ったからじゃないのか……」
『とうじ、わたしがあなたをえらんだのは、あなたがいちばんかっこよくて、つよくて、かっこいいからだよ!』
「………」
『とうじは、だれよりもかっこよくて、つよいの! おうさまのわたしがいってるんだからまちがいないよ!だから、かっこわるいところみせちゃだめなの!』
ぽんぽんと頭を叩くアリス。
「……ああ、そうだな。あのバカに負けを認めるなんて癪だしな。」
俺としたことが、アリスに心配されるとはな…。
俺は……俺は自分自身のことを信じられないけど、アリスが俺のことを信じるのなら、たとえ嘘でも見栄を張りたい。
かっこよくて、強くありたい。
だから、俺は……。
「あいつをぶっ飛ばす!」
その瞬間、屋敷の方から、ガラスの割れる音が聞こえた。
「っ!」
『ミドリガメ〜』
皇とミドリガメの気が逸れた!
「アリス!」
『よっこいしょー!』
アリスが地面に触れた。
その瞬間、地割れが起こった。
アリスが触れた地点から発生した地割れは、皇とミドリガメ目掛け一直線に広がる。
皇とミドリガメは、地面が裂けたことにより、足場がなくなり落下する。
「っ! この程度動作もない!」
『ミドリガメ〜』
皇はミドリガメに捕まり、風の魔法を使用する。
ミドリガメはふわっと浮き、自由落下が終了する。
だが、それは予測済み。
アリスと共に地割れに飛び込み、1人と1匹の前に現れる。
そして、いままで以上に大きい火球を作る。
「それは効かないぞ! 君が1番分かっていることじゃないのか!」
挑発するよに叫び、ミドリガメを囲うように甲羅模様の半透明なバリアを展開する。
あたりまえだ、効かないなんてこと俺が一番よく分かっている。だけど、それでいい。
「碧!」
上から、ユニコーンに乗った碧が現れる。
「いきますよ、ユニコーン!」
『クルル〜!』
そして、ユニコーンの強烈な突きが、ミドリガメのバリアと衝突する。
「お前のバリアは球状で、全ての方角からの攻撃を防御できる。
だが、この自由落下の状態で、強烈な攻撃を喰らったら、地面を足で踏ん張ることができなかったのなら、慣性の影響までは防御しきれないんじゃないか?」
「つっ!」
『ミドリガメ〜』
強烈な突きをバリアで防いだが、慣性により地の壁と衝突し、風魔法が乱れフラフラと少しずつ落下していく。
「その不安定な状態で、アリスの火球を喰らったなら、どうなっちまうんだろうな」
皇は青ざめながら、ゆっくりと口を開いた。
「……我が妹のブロマイドをや」
「やれ」
『いくよ!』
皇とミドリガメは、空高く吹き飛んだ。




