第百一話 決裂
はぁはぁ、と息を切らしながら走る。
もう魔力はほとんどない、瞬間移動術も移転術も使えない。
道満さんに追いつかれたら、もう打つ手はない。
だから、もう彼女に頼るしかない。
「見つけたよ、神崎さん」
鍵のかけてあった扉を蹴破った先で、泣きながら顔を埋めている彼女に、僕はそう声をかけた。
「神崎さん、冬至が危ないんだ。手を貸してほしい」
率直に僕の思いを言う。冬至みたいに言葉で丸め込むなんて芸当僕にはできない。
「………できないです」
ずっと泣いていたのか、掠れた声で、彼女は拒否する。
「どうして?」
「……気づいているんでしょ、全て私の差金です。私が貴方達を…… 冬至を騙し、アリスの力を手にいれるため危険な目に合わせました。」
「違う」
「違いません! 私が、私が貴方達を利用するため、嘘をついて!」
「違わないよ」
彼女に近寄り、しゃがんで目線を合わせる。
本当は冬至が言わなきゃいけないことなんだけど……。
「神崎さんはいつも僕たちの事を助けてくれたじゃないか、皇邸の時だって……」
「……それは、信頼を得るためにわざと」
「わざとじゃないよ」
神崎さんが顔をゆっくりと上げる。
「あの時の表情は嘘なんかじゃない、冬至のことが心配だったからこそ、あんなに必死に頑張っていたんじゃないのか」
「………」
「それに、冬至を危険な目に合わせないために、冬至を惚れさせようとしていたんじゃないの? 冬至を助けるために、冬至に近づいたんじゃないの?」
今だってそうだ、父である道満に逆らったから、この部屋に閉じ込められている。道満のいいなりになっているのなら、閉じ込める理由がない。
そして、なにより
「神崎さんって冬至と話している時だけすごく自然体なんだよ、好きな人と話してるって感じ目になる。僕はあの時の神崎さんの目を信じてる。たとえ本人が否定したとしても」
「………」
「………冬至を助けてあげて、あいつを救えるのは神崎さんだけなんだ」
ドンッ、と扉を蹴る音がきこえた。
「見つけたぞガキが、手をかけさせやがって……!」
顔を赤くし、目を吊り上げて僕に向けてそう言い放つ。
「碧、そいつを捕まえろ! そうしたら謀反を水に流してもいい、そうすれば俺たちはまた家族だ」
言葉の節々で分かった。彼が神崎さんをどういう風に扱ってきたのか。
怒りが芽生える。たとえ神崎さんがこのバカについたとしても、一発顔面に拳を喰らわせてやる……!
その瞬間、後ろから大きな音が聞こえた。
「……何をしている、その行動が意味する事がわかっているのか! 碧!」
後ろを振り向くと、神崎さんは召喚獣であるユニコーンに跨って、壁を破壊していた。
「高橋さん、手を掴んで! 冬至を助けに行きます!」
すばやく手を掴んでユニコーンに乗り、壊した壁から外へ飛び出す。
これで僕の役は終わり、皇邸での借りは返したからな。
癪だけど…… あとは任せた、冬至




