勇者の後始末と魔剣
バンヘルトはシオンとグレンライズを埋葬したあと……。
シオンの亡骸の前でバンヘルトは涙が潰えるほどに嘆き悲しみ泣いている。
次第に枯れたのかのようにピッタリと涙が止まり感情がなくなったみたいに表情を変えなくなっていた。
(ここに何時までいても解決しない。それに泣いてたって誰も生き返りはしないしな)
そう思いながらバンヘルトはシオンの亡骸へ視線を向ける。
(このままにしておけない……シオンもだが、みれない状態だけどグレンライズも埋めてやるか)
感情がない訳じゃないのだが顔に出せなくなってしまったようだ。
それだけ衝撃的なことがバンヘルトにとって立て続けに起きたという事なのだろう。
間隔をあけて二つ穴を掘った。疲れていても顔は無表情のままだ。
次いでシオンの荷物などを剥ぎ取り穴に埋め手を合わせる。
(恐らく……もうここには戻ってこれないだろう。さよならよりも、さらばがよさそうだ……とお前なら笑いながら言うよな)
そう思い心の中で笑う。
そのあとグレンライズを穴に埋めて手を合わせた。だが浮かぶものはそうないので直ぐにシオンとグレンライズの荷物が置かれている場所へ歩み寄る。
「さて……どうする?」
そう言いながら二人の荷物を眺め思考を巡らせる。
(グレンライズの荷物は……墓の前に置いておくか。あとはシオンの荷物)
どうしようかと思いシオンの墓の方へ視線を向けた。
(使えそうな物だけ、もらってもいいよな?)
そう心の中で言い手を合わせる。
シオンの荷物を漁り必要なアイテムなどをバッグや異空間に入れた。
(そういえば……何か完成させるって言ってたな)
そう思い再びシオンの墓の方をみた。
(夜シオンの家に行ってみるか。恐らくアルクは、もうこの辺にはいないだろう。まあ……用心はするけどな)
荷物の整理が終えるとシオンとグレンライズの墓の方へ歩み寄る。
グレンライズの墓の近くに荷物を置いた。
そのあとシオンの墓標へ荷物をかける。
明らかに扱いが対象的だ。それは仕方ないのだが。
手を合わせたあとコテージに向かった。
★★★★★
……――夜になりバンヘルトは、タンギニスの村のシオンの家にいる。
(予想通り……警備兵などはいない。まあ、いない方が好都合なんだけどな)
そう思いながら奥の工房へと向かっていた。
工房までくると周囲を見回しシオンが作成していた物を探し始める。
(何をつくってたのか聞いておけばよかったか。もしかしたら客に頼まれてた物だったのかもしれない。そうなると、もうここにはないかもな)
ふと奥の棚へ視線を向けた。
「……!?」
そこには長方形の黒い立派な箱が置かれている。
(もしかして……あの箱に入ってるのって剣なのか?)
その箱がなんなのか気になり置かれている棚へと向かった。
箱が置かれている棚までくるとバンヘルトは張り紙がされていることに気づき書かれている文字を読んでみる。
(オレ宛の手紙?)
その紙を剥がし裏に書かれている文字に目を通した。
そこには――……。
……――お前のことだ。オレに何かあったら家に侵入して物色するだろう。まあそれを咎める気はねえ。それを教えたのはオレだしな。
それと欲しい物があったら持ってってくれ。この箱の中のも持っていっていいぞ。お前のためにこしらえてたもんだ。
本来なら手渡せればよかったんだが。お前と逢った次の日にグレンライズってヤツがきた。お前が魔王になったって言って、オレは殺されそうになってな。
お前には悪いとは思ったんだが、ヤツらに生きてることを話しちまった。この剣を完成させたかったのもあって仕方なかったんだ。
その結果……お前を裏切ることになっちまったけどな。この手紙を読んでいるってことは、オレが死んだってことだ。
まあ少しだけだが、また冒険の夢をみれてよかったぜ。
この剣は最初、聖剣のような仕様を付与しつくっていた。だが、お前が帰ったあと魔剣のような仕様に変更し見た目も変えてある。
まあ……どれだけこの剣がお前の役に立つかは分からねえ。化け物じみたヤツじゃねえと使いこなせねえ剣だ。
オレじゃ試し斬りできねえ。だから性能は保証できねえぞ。それでも使ってくれると嬉しい。
あとお前のことだ。他の仲間の所に行くだろう。だがやめておけ。ヤツらは罠を仕掛けているだろうからな。
オレはお前に殺されるか、グレンライズってヤツにかは分からねえが……覚悟を決めねえとな。
今まで楽しかったぜ……じゃあな、バンヘルト――……。
……――と書かれていた。
それを読んだバンヘルトは無表情のまま心の中で泣いている。
「アルク……絶対にお前のことは許さないからな!」
グシャグシャになるほど持っていた手紙を握り潰していた。
(剣……)
ボロボロになった手紙を綺麗に伸ばして折り畳むとバッグにしまう。
棚に置かれている剣が入っている箱を持ち近くにあるテーブルの上にのせる。
次いで箱の蓋を取り開けると、そこには悪魔と竜の飾りが施された剣が鞘に収められ入っていた。鞘にも悪魔と竜が施されている。
(全体的にオレの嫌いな黒だ。それも最も嫌いな悪魔だと? まあ……手紙に書いてあったら絶対に箱を開けなかっただろうな)
そう思い箱の蓋を閉じた。
(この箱は異空間にしまって何処か……ひと気のない場所で試した方がいいよな)
そう思い手を前に翳し唱える。
《異収納域 解放!!》
そう言い放つと魔法陣が現れ眩く発光した。それと同時に、ピキッと空間が裂ける。
空間が裂けたのを確認すると剣の入った箱を入れた。
その後、呪文を唱え空間を閉じる。
(これでいい……あとは森に戻るだけだ)
周囲を確認したあと工房から各部屋を通り建物から出るとダンギニスの村を出てタンゴアの森のコテージへ向かった。
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タンゴアの森のコテージまで来たバンヘルトは建物内に荷物を置き鍵をかける。
その後ひと気のない広い場所までくると異空間から剣の入った箱を取り出し地面に置いた。
「フゥー……」
表情に出してはいないが、かなりドキドキしているようだ。
蓋を開けると徐に剣を取り出し鞘のついたまま握ってみる。
(何も感じない……)
不思議に思い鞘から剣を抜いてみた。
「……!?」
その瞬間、剣身から溢れんばかりの禍々しいものがモワモワと放たれる。
「ウッ……クッ…………なんだ! このとんでもないじゃじゃ馬な剣は!?」
握っているのがやっとのようだ。
剣のグリップを握りバンヘルトは自分の中に入って悪さをしようとしている得体の知れないものから必死に耐えている。
(なんてえもんつくってんだよ。こんな魔剣をどう扱えと云うんだ)
鞘に戻すにも箱の中。それを取ろうにも片手で剣を扱える訳もない。どうやって剣から発せられている禍々しいものを抑えられるのかと思考を巡らせていた。
その間もバンヘルトはひたすら耐えている。
(こんな魔剣を……どうやってつくった? 何をどうしたら、こんな化け物のような剣ができるんだ)
殺す気でつくったのかよと心の中で突っ込んでいた。
(聖剣をなんとか使いこなせた。それよりも……これは、かなりハードだぞ)
ふとあることに気づき剣のガード付近に飾りつけられた悪魔と竜へ視線を向ける。
(生々しいな……まるで生きてるみたいだ。まさか本物の悪魔と竜を、この剣に閉じ込めたんじゃないだろうな?)
そーっと悪魔と竜を触ってみた。だがピクリとも動く気配はない。
(当然か……だが、どうする? このままじゃ何時になっても鞘に戻せないぞ)
必死でグリップを握りバンヘルトは、ひたすら考えていたのだった。
読んで頂きありがとうございます(^ω^)
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