勇者の激怒と決別
グレンライズを前にしたバンヘルトの怒りは頂点に達し……。
眼前に居るグレンライズをみて、バンヘルトは怒りを露わにした。それと同時に素早く剣を抜きグレンライズへと間合いを詰める。
「……!?」
それに気づきグレンライズは剣を抜こうとするもバンヘルトが既に目の前にいた。
懐に入るとバンヘルトは押し倒したあと体の上にのりグレンライズの首横の地面に剣を思いっきり突き刺す。
「洗いざらい吐いてもらおうじゃないか!!」
そう言いバンヘルトは鬼の形相でグレンライズを睨んだ。
「フッ……殺されても言うつもりはない!」
「そうか……全て話せば見逃してやろうと思ったが」
バンヘルトは剣を地面から抜き振り上げる。
「そんな脅しなどに屈すると思っているのか? お前のことはアルク様から聞いている。優しすぎる……いや、お人好しの馬鹿だとな」
「馬鹿で悪かったな!」
そう言ったと同時にバンヘルトは、グレンライズの右頬を思いっきりグーで殴った。
「グハッ!!」
グレンライズは口から血を大量に吐いて白目を剥き気絶する。
「フウー……少しやりすぎたか?」
そう言いバンヘルトは、グレンライズの体から降り魔道具【魔法の鎖】を使おうとした。
――ボンッ!!――
爆音と共にグレンライズの胸の辺りが破裂し肉片が飛び散る。
異変に気づきバンヘルトは瞬時に避けるも爆風に巻き込まれた。
「ツウ……いったい何が? 体中血だらけだ」
バンヘルトはグレンライズがどうなったのか気になり恐る恐る視線を向ける。
視線の先のグレンライズは、ほぼみれないような姿で息絶えていた。
それは近づかなくても分かるほど肉片が飛び散り下半身のみかろうじて形をなしているだけだ。
「いったい誰が……」
怒りを露わにしながらバンヘルトは周囲を見回した。
「これでも死なないなんて、バンヘルト……お前は化け物だな。まあいい、これで……お前を魔王だと正式に噂を流せる」
何処からともなく、そう言い放つ声が聞こえてくる。
「その声は……アルクだな!? 隠れてないで出てこい!」
「悪いが姿をみせるつもりはない。さて……ここに長居をしてると厄介なことになりそうだ。精々死に物狂いで逃げるんだな」
そう言いアルクは高笑いをした。
アルクが何処に居るのかとバンヘルトは目を閉じて気配を探る。
(気配がない……。既に立ち去ったのか?)
そう思い目を開け辺りを見渡した。
「クソッ! 逃げられたか」
怒りの矛先を失いバンヘルトは近くの大木を思いっきり殴る。
――バキッ!!――
音と共に殴った部分が破壊されて木は、バキバキ……ドサッと倒れた。
「あっ…………まあいいか」
周囲を見回したあとバンヘルトは、グレンライズの方へ駆け寄る。
「酷い……仲間をなんだと思ってるんだ! まるで使い捨ての駒のように……」
視線をシオンへ向けると立ち上がり歩きだした。
(シオン……生きててくれ)
そう思いシオンのそばまでくると中腰になり生死の確認をする。
「バカやろー……ハアハア………なんで逃げねえ?」
「生きてる……だが」
「ああ……なんとか…………話せてるが。恐らく無理だ」
そうシオンは無数の矢を体に受けそのうちの一本が心臓を射抜いていたのだ。
「バン……お前を裏切ったバチが当たったようだ。もっと恨めよ……なんで泣いて、る」
「恨める訳ないだろ! シオンは……グレンライズの口車にのっただけだ。確かに一瞬は恨んだ。だが、お前は犠牲者。こうなったのもオレのせいだしな」
「バン……自分を……責めるんじゃねえぞ。ハアハア……息が……もう無理そうだ。胸の矢を引き抜け……そうすりゃオレは楽になる」
シオンの目が虚になってくる。
「シオン! そうだな……今まで仲間でいてくれてありがとう」
「それはオレの台詞だ。この矢を抜いたら、もう泣くな……非情になれ……何があっても…………もう仲間の所に……行くんじゃねえぞ…………信じるな」
涙を拭いバンヘルトは、コクッと頷いた。
それを確認するとシオンは、バンヘルトの左手を握る。内心は怖いのだろう。それでも表情に出さず苦しいながらも無理に笑顔をつくっている。
「分かった」
「ああ……逃げ切れよ。じゃあ、あの世で……リンナと……待ってるぞ。……だが直ぐには……くるなよな」
「ああ……分かったよ。抜いていいのか?」
バンヘルトは本当なら抜きたくない。だが、このまま話をしているのもツライのだ。
「そうだな……そろそろ……覚悟を……決めるか。躊躇うな……かえって…………ツラくなるぞ」
そう言われバンヘルトは頷き、シオンの手を握ったまま「本当にありがとう……」と言い胸に刺さった矢を思いっきり引き抜いた。
矢を引き抜いた胸から大量の血が吹き出しバンヘルトの全身にかかる。
矢を引き抜かれたシオンは胸からだけじゃなく口からも血を吐いた。
「シオン……これで良かったんだよな」
そう言い矢を投げ捨て、シオンに握られている手をはなす。だが直ぐに両手で、シオンの手を握る。
その後シオンとの別れを惜しみバンヘルトは言われたことを忘れたかのように泣き続けた。
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