勇者への罠
バンヘルトはシオンと逢って一緒に旅に出れるはずだったが……。
あれからバンヘルトは暫く色々考えたあと眠りについた。
翌朝になり荷物を纏めるとフバの森を抜けリーバル湿原へでて南東へ歩みを進める。
(シオンなら大丈夫だ……それでも逢って話をしなきゃならない。それに胸騒ぎがするしな)
そう思い立ちどまり空を見上げ再び歩きだした。
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……――フバの森を旅立って三日後の朝。バンヘルトは、タンギニスの村近くのタンゴアの森にいた。
この森には三棟の冒険者用コテージが離れた場所に建っている。建物の中は小さいながらもシャワー室やキッチンなどもあるのだ。
「思っていたよりも早くここまでこれた。これなら間に合うよな」
荷物を持ち忘れ物がないか確認する。
(逢うのが楽しみだ。今のオレをなんて言って笑わせてくれるのか)
建物から外へ出てタンギニスの村へ心弾ませながら向かった。
★★★★★
ここはタンギニスの村。周囲に山などがみえ畑もあって長閑だ。
この村の入口付近にはバンヘルトが立っていた。
(相変わらず静かだ。人も少ない……。それにみた感じ、まだ国の連中は誰も来ていないようだな)
間に合ったと思いシオンの家へと向かい歩き始める。
(この村の者たちは旅人をみてもホント無反応だよな。まあ……面倒ごとに関わり合いたくないんだろうけど)
そう思いながらシオンの家の前まできた。
建物の煙突からは煙が出ている。
(仕事中か?)
忙しいのに入るのはマズいかと思った。
(だが逢わないとな)
そう思い扉をノックする。
「シオン居るのか?」
そう声をかけると建物内からガタンと物を置く音がした。
その後、足音が近づいてくると扉は開かれる。
「誰だ……こっちは忙しいってえのによ」
「久しぶりだな、シオン」
その声を聞きシオンは驚いた。
この男はシオン・アルホグと云い三十二歳だ。鍛冶屋だが冒険者の時は重戦士で斧類を得意とした。
見た目はハゲにモミアゲで髭を生やしている。かなり体格がよくて筋肉ムキムキだ。
「まさか……バンなのか?」
「ああ……中に入っても大丈夫か?」
コクッと頷きシオンはバンヘルトを建物の中に入れる。
★★★★★
中に入るとバンヘルトはシオンと客間へきた。
客間の木の椅子にバンヘルトは座りその真向かいにシオンが腰かける。
「どうした? その身なりもそうだが……なんでここにきた」
「色々あってな……でも、シオンが無事でよかったよ」
「言ってる意味が理解できん。なんで涙腺が緩んでんだ?」
そう問われバンヘルトは涙を拭ったあと、ここまでの経緯を説明した。
「なんだって!? リンナが殺された。それも、お前が犯人だと!」
「そう濡れ衣を着せられた。それだけじゃない……」
「お前が魔王に乗っ取られてリンナだけじゃなく……クロッキー国の王と王妃を殺した、って?? アハハハハ……そんなあり得ねえぞ」
それを聞きバンヘルトの気持ちは軽くなる。
「そう言ってくれて嬉しい。だが今のオレは国からしたら恐らく死んだことになっている」
「身ぐるみ剥がして草原に放り出した所で、バンが死ぬ訳ねえってのにな」
「ああ……そこが不思議なんだ。なんでそんなことをしたんだってな」
ハァーっと溜息をつきバンヘルトは俯き無作為に一点をみつめた。
「まあ……そのお陰で、お前は死なずにすんだんだ。喜ぶべきだな」
「そうなのか? だけど、リンナはオレのせいで死んだ。もしかしたらシオンも狙われるかもしれない」
「そうだな……これから、お前はどうするつもりだ?」
そう聞かれバンヘルトは、どう行動した方がいいのか悩んだ。
「どうしたらいいのか分からない。ここに居れば、シオンに迷惑をかける」
「迷惑じゃねえぞ……そうだ! 宛てもねえなら、また一緒に旅に出るか?」
「それは嬉しいが……仕事は大丈夫なのか?」
二ッと笑みを浮かべシオンは、コクッと頷いた。
「ここでくすぶってたって、つまんねえからな」
「そうか……だが、オレは追われてると同じなんだぞ」
「だったら一人よりもいいんじゃねえのか?」
まさかシオンにこんな嬉しいことを言われるとは思わずバンヘルトの目尻から涙が滲みでる。
「おいおい……何時からそんなに泣き虫になった?」
「つい最近だ。自分でも……こんなに心が弱いとは思わなかったよ」
「そんだけ心を削られたってことだな」
そう言いシオンは心配に思いバンヘルトをみた。
「そうかもな。それで本当にいいんだな?」
「何度も言わすな。一緒に行くつってんだろ」
「ありがとう……じゃあ出発は早い方がいい。そろそろ国の連中がここにくる頃だ」
そう言われシオンは頷きバンヘルトへ視線を向ける。
「その方がいいかもしれん。ただ仕上げたい武器がある。途中で放り投げて行く訳にいかんしな」
「どのぐらいでできそうだ?」
「明日までには完成する」
それを聞きバンヘルトは考えた。
「じゃあ明後日なんてどうだ?」
「ああ、それでいい。そんでバンは、ここに泊まっていくか?」
「いや……タンゴアの森にあるコテージに隠れているつもりだ」
そう言いバンヘルトは窓の外をみる。
「何号棟に泊まる?」
「空いていれば……一号棟。あそこは森の奥にあって隠れるのにも最適だからな」
「それがいい……じゃあ、なるべく早く武器を完成させていく」
その後バンヘルトは暫くシオンと話をした。
話を終えると「またな」とシオンに言いバンヘルトは建物の外へ出てタンゴアの森のコテージへ向かう。
★★★★★
……――明後日。ここはタンゴアの森にあるコテージの一号棟の建物の中だ。
ここにはバンヘルトが居て椅子に座りテーブルに肘をつきシオンを待っていた。
(荷物は全て片付けた。あとはシオンを待つだけだな)
そう思い扉へ視線を向ける。
すると扉がノックされシオンの声が聞こえてきた。
「来たか……」
荷物を持ち立ち上がると扉の方へ歩きだす。
バンヘルトは扉までくると開ける。
「思ったよりも早かったな」
そう言いバンヘルトは外へでた。
「早く旅に出たくて急いで支度してきた」
「そんなに楽しい旅じゃないぞ」
そう言うもバンヘルトは嬉しいようだ。
「そんなの分かってる」
笑みを浮かべシオンは「早く行くぞ!」とバンヘルトを急かす。
急かされバンヘルトは苦笑しながら歩き出した。
そのあとをシオンが追いかける。
暫く話をしながらバンヘルトとシオンは歩いていた。
「そろそろ森を抜けるな」
「ああ……」
そう言ったと同時にシオンは背負っていたバトルアックスを持ちバンヘルトの背中目掛け振り下ろした。
「なんのつもりだ!?」
気配に気づきバンヘルトは咄嗟に避ける。
「クッ……しくじったか」
「ふざけてるのか?」
「そうみえるのか? お花畑もいいところだ。お前を引き渡せば金になると思ったんだが……傷一つもつけられねえとはな」
それを聞くもバンヘルトはシオンの言ってることが理解できず困惑した。
「引き渡す。金になるって……どういう事だ! まるでオレを国の連中に」
「ああ、そういうこった」
そう言った瞬間、四方八方から無数の矢がバンヘルトとシオンに目掛け放たれる。
「……!?」
それに気づきバンヘルトは瞬時に剣を抜き向かいくる矢へ刃をあて薙ぎ払っていった。
「シオン?」
シオンへ視線を向けたバンヘルトは青ざめる。
そうシオンの体には無数の矢が刺さり地面に倒れていたからだ。
「しぶとい……これだけの矢の攻撃を全てかわすとはな」
声のする方へ視線を向けるとグレンライズが居て不敵な笑みを浮かべている。
それをみたバンヘルトは抑えきれないほどの怒りが心底から湧き上がってきていた。
読んで頂きありがとうございます(*^▽^*)
では次話もよろしくお願いします(/・ω・)/




