勇者魔王の謁見
バンヘルトは一人ずつ各種族の代表と対話して……。
バンヘルトのテーブルと椅子が用意されるとルシファーナと共に向かった。
用意された椅子に腰かけバンヘルトはルシファーナへ視線を向ける。
「ルナは座らないのか?」
「ボクは誘導したり色々することがあるから立っていないと」
「じゃあオレは一人になるのか」
顔には出ていないがバンヘルトは不安なのだろう。
「もしかして寂しいとか?」
「別にそういう訳じゃない。ただアドバイスをくれる者がいないと不安なだけだ」
「フーン……そっかぁ。だけどバン一人の方がいいと思うよ」
そう言われるも意味が分からずバンヘルトは首を傾げる。
「大丈夫……何かあっても喧嘩ぐらいにしかならないから」
「それって日常茶飯事ってことなのか?」
「偶にある程度かな」
人間の領分では考えられないのが魔族らしい。
「滅多にか……そうなると挨拶代わりってことだな」
「まあ種族によってはかな。特に戦闘好きな種族は負けると分かっても喧嘩を仕掛けてくるからな」
「戦闘好きな種族か。ここじゃ間違いなく鬱憤が堪るな」
そう思い周囲を見回した。
「そうだね。だけど、この外には出せないよ」
「そういう事かぁ。なんか……なんとなく、やりたいことが頭に浮かんだ」
「へー……なんだろう。考えが纏まったら教えて」
コクッと頷きバンヘルトは心の中で笑っている。
「料理が運ばれてきたな」
広間にはテーブルが並べられて色々な料理が置かれ始めた。
「じゃあ、ボクは各種族の人たちの相手をしながら食べてくる。バンも食事を楽しんで」
そう言いルシファーナはバンヘルトに手を振り各種族の代表者たちの下に向かう。
(一人で食べるのかぁ。まあ、そもそも……食文化が違い過ぎるからな)
そう思っているとバンヘルトのテーブルにも料理が並べられ始める。
(もう食べていいのか?)
周囲を見渡して、みんなが食べ始めたか確認した。
(自由なんだな……ここは)
マナーなどあってないようで、みんな自由気ままに飲み食いをしながら話をしている。
それをみてバンヘルトは、こう云うのも悪くないと思い心の中で喜んでいた。
「さて……食べるか」
そう言いバンヘルトは目の前の豪華な食事を食べ始める。
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美味しい料理に舌鼓しバンヘルトは何処に入るのか運ばれてくる物を次々とたいらげていった。
すると何時の間にかバンヘルトの前に行列ができる。
その行列へ各種族の者を誘導しているのはルシファーナだ。
(思っていたよりも並んでる数が多いぞ。これ全て熟すのか? それにしてもルシファーナは大、中、小と綺麗に並べている……器用だ)
ここまで綺麗に並べなくてもいいんじゃないのかとバンヘルトはみている。
「結構な数だけど頑張ってね」
そう言いルシファーナはバンヘルトのそばへきた。
「何を頑張れって言ってんのか分からないが。まあ……なんとか熟すか」
「無理に繕わない方がいいからな。何時も通りのバンで対応してよ」
「何時も通りか……分かった、できるだけそうする」
それを聞きルシファーナは安心し笑みを浮かべる。
「じゃあ謁見を開始するよ」
そう言われバンヘルトは、コクリと頷いた。
その言葉と共にルシファーナは一人ずつバンヘルトの前に誘導する。
一人目は巨人族の男性だ。
巨人族の男性はバンヘルトと目線が合わないため床に跪き会釈をすると口を開いた。
「これは勇者殿。この度は我らが王になっていただきありがたい。ワシはギガルド・デバルカと申す。何か御用の際はなんなりと申しつけてくだせえ」
「ああ、よろしく。何か必要な時は声をかける。それはそうと。巨人族の数はどのくらいいる?」
「そこまでは把握しておらず……もし必要ならば調べて後日連絡させていただきたい」
それを聞いたバンヘルトは少し考える。そのあと口を開いた。
「そうしてもらえると助かる。ある程度のことは把握しておいた方がいいしな」
「承知した。では集落に戻りしだい早速しらべさせようと思う。あと何か必要ごとはあるか?」
「いや今の所はそのぐらいだ」
コクッと頷きギガルドはバンヘルトを見据える。
「それでは失礼いたす」
そう言いギガルドは一礼すると立ち上がり周囲の者を踏み付けないように歩き始めた。
(自分の種族間で生存者を把握していないのか? どの種族も同じだとすると。今まで適当にやってたってことだ。これが魔族区域では当たり前なのかもしれない)
そう思いながら次々と対話を熟していたがバンヘルトは段々と疲れてくる。だが相変わらず無表情のままだ。
(そろそろ終わる。早くベッドでダラダラくつろぎたい)
最後の小人族の挨拶が終えるとバンヘルトの前に誰もいなくなった。
それと同時にテーブルの上に倒れるように顔をのせうつ伏せになる。
「バン!?」
気づいたルシファーナは慌ててバンヘルトのそばへ駆け寄った。
「ん? ルナ……まだ何かあるのか」
そう言いバンヘルトは、ゆっくり体を起こしルシファーナへ視線を向ける。
「ハアー……良かった! 死んだのかと思ったよ」
「まだ女とピーしたことないのに……」
と、その瞬間ルシファーナは「バンの馬鹿〜!!」と叫びバンヘルトへ目掛け近くにあった椅子を投げつけた。
それをみてもバンヘルトは「あー椅子が飛んできた」と言いボーッとしている。
投げつけられた椅子はバンヘルトの目の前で弾け飛び破壊された。
それをみていたルシファーナを含む周囲の者たちは恐怖し青ざめる。
「結界シールド張ってて正解だったようだ。だが、なんで椅子を投げた?」
「どの口が言ってんだよ。女性の前で言う事じゃないし。ましてや、ここには各種族の代表たちがいるんだぞ」
「なるほど……下ネタは魔族間でも共通だから、やめておけって訳か」
ジト目でバンヘルトをみてルシファーナは呆れていた。
「当り前だ! ボク達をなんだと思ってんだよ」
そのやり取りをみて周囲の者たちはいっせいに爆笑している。だが一部の者たちは呆れているようだ。
「そうだな、すまない……気を付ける。なんか疲れているせいか、どうかしていたようだ」
「そうか……表情に出てなかったから気づかなかった。今日はこのぐらいにした方がいいか」
「大丈夫なのか? まだ他にあるようなら」
そうバンヘルトが言いかけるとルシファーナは首を横に振った。
「あとはたいして重要なことないし、ボクでも対応できるから大丈夫だ。それに訳を話せばなんとかなるからな」
「悪いな……じゃあ遠慮なく退室させてもらう」
そう言いバンヘルトは立ち上がる。
「あっ……待って! 部屋までの付き添いを誰かにさせるから」
「部屋には一人でも行けるぞ」
「そうかもしれないけど……バンは、この城の王になったんだからな。何かあってからじゃ遅い!」
そう言われてバンヘルトは、ハァーと溜息をつきルシファーナをみた。
「何かあってもオレはそう簡単に死なないぞ」
「そういう事じゃないってば! 王が一人で城の中を歩いてたらおかしいだろ。それとも人間の王は違うのか?」
「さあ……見た事ないから知らない。んー……そこは自由じゃないのか」
呆れた表情になりルシファーナは半目でバンヘルトをみる。
「あとで初歩的なマナーを教えた方が良さそうだな」
「マナー……めんどくさそうだ」
「無表情で言われると本当にそう思ってるのか分からないぞ」
そう言われてバンヘルトは心の中で苦笑した。
その後ルシファーナは近くに居たメイドで猫の獣人族のミーニャ・ニャルルに指示する。
そしてバンヘルトはルシファーナから指示を受けたミーニャと共に部屋へと向かった。
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