勇者の慈悲と胃袋
倒れている五人に治療を施したバンヘルトは目覚めるのを待つ間ルシファーナと話をし……。
周囲を見渡しバンヘルトは、ハァーと溜息をついた。
「またやり過ぎたな」
そう言い四人の生存を確認する。
「そう簡単に死ぬような連中じゃないから大丈夫だよ」
「そうは言ってもな……」
元々優しいバンヘルトは魔族であってもできれば殺したくないと思ってしまうのだ。
魔王を討伐する際も仲間がいたお陰で気持ちを押し殺し遂行できたのである。
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ライナネ、ハンセス、ダイゼン、ナミシア、タウリグセが目覚めるまでバンヘルトはルシファーナと話をしていた。
「治療なんてしなくてもよかったと思うよ」
「怪我人を放っておける訳ないだろ」
「まあ……そういう所ってバンの長所だよな」
そう言いルシファーナは満面の笑みを浮かべる。
「長所か、どうなんだろうな」
俯きバンヘルトは無作為に一点をみつめた。
「長所だと思うぜ!」
そう言いダイゼンは目覚め上体を起こしバンヘルトをみる。
「起き上がっても大丈夫か?」
「問題ないぞ。怪我なんて一つもしてねえからな」
「それはバンが傷の治療をしたからだ」
それを聞きダイゼンは歓喜の涙を流した。
「スゲエー……こんなオレみたいなもんに慈悲を与えてくれるなんて、やっぱバンヘルト様は我らが王に」
「そうだな……あれほどの力を持ちながら殺さずに治療をするなど普通ならありえん」
状態を起こしながらハンセスは怪訝な表情を浮かべる。
「ホントだね。アタシも傷一つ負ってないよ」
目覚めるとナミシアは、スクッと立ち上がり自分の両手をみた。
「ああ……なんて慈悲深いのだ。我はバンヘルト様のとりこになりそうじゃぞ」
優雅に起き上がりライナネはバンヘルトをラブの目でみる。
それをみて周囲の者たちは、ゾッとし身を震わせた。
「フンッ……皆を欺くつもりか? そんな慈悲深い人間などこの世にいる訳がありません。あれは幻影かなにかでしょう」
そう言いながらタウリグセは疑いの目でバンヘルトをみる。
「どう思われようが構わない。そもそも……オレは王になんてなるつもりないからな!」
それを聞き五人は驚いていた。
ハァーとルシファーナは溜息をついている。
「それはどういう事なのか。そもそも……なんのためにここへ赴いたと?」
そうライナネに問われバンヘルトは何処か遠くをみつめ話し始めた。
「行く宛もない……ここに居られないのなら何処かひっそりと暮らせる場所を探すしかないが、それもあるか分からないけどな」
「王になるために、この地に来た訳じゃない……なんて欲がねえんだ!」
「欲が……ない訳じゃない。だがその欲のせいで、こんなことになった。名誉の証をもらうため報告しに行かなければ二人は死なずにすんだ」
それを聞きライナネは心を打たれる。
「おいたわしや……ですが、その欲以外にもあるのか?」
「王になる欲はないが……美味い飯を食べ、ゆっくりと暖かい布団に寝ることだ」
それを聞き六人ともに頷き納得した。
「そうだね……顔に出てないから気づかなかったけど、バンは長旅で疲れてたみたいだ。あとでまた……バンの気持ちが落ち着いたらにしようか」
「その方がいい。今は……ゆるりと休んでくだせえ」
そうダイゼンが言うとバンヘルトは頷き会釈をする。
「すまない……そうさせてもらう」
そう言いバンヘルトはルシファーナと共に執務室を出ていった。
その後ライナネとハンセスとダイゼンとナミシアは二人を追うように執務室から退室する。
みんなが居なくなったのを確認するとタウリグセは椅子を片づけ始めた。
「勇者は何を考えている?」
片付け終えると扉へと視線を向け睨んだ。
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ここは食事をする部屋である。
大人数が座れそうなほど大きくて長いテーブルの端にバンヘルトは座っていた。そこには一人分しか椅子がないようだ。
両脇には多数の椅子が綺麗に並べられている。
バンヘルトから右側の席にルシファーナがいた。
「バン……まだ決心がついていないのか?」
「ハァー……決心もなにも、オレは王になんてなれる器なんかじゃない。ただ騎士として国のために尽くすことができればよかったんだ……でも、それは」
信じていたものに裏切られ生き甲斐を失ってしまったバンヘルトにとって今ある名誉など眼中にないのである。
そう話しているとバンヘルトの目の前に料理が運ばれてきた。
「魔族も人間と同じ物を食べるのか?」
「バンのために人間用の食事を用意させたんだ」
「そういう事か……じゃあ遠慮なくいただくぞ」
お腹を空かせていたバンヘルトは「美味しい!」と絶賛しながら食べている。
それをみてルシファーナは良かったと思い笑みを浮かべていた。
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厨房側の入口の近くの壁には、タウリグセが居て苦虫を潰したような顔をしている。
(おかしい……なぜ毒入りのスープを美味しいと何杯も御代わりをしているのでしょうか?
私でも……あの量の毒を摂取すれば死に至る。人間とは思えませんね。ですが匂いは間違いなく人間です)
考えがおよばずタウリグセの脳は、ショート寸前になっていた。
読んで頂きありがとうございます(^^ゞ
では次話もよろしくお願いします(#^^#)




