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正義悪か悪正義なのか  作者: みけ猫 ミイミ
第二章

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13/22

勇者の実力

バンヘルトはルシファーナと執務室に入るなり……。

 ここは執務室。部屋にテーブルはなく椅子だけが並べられていた。

 椅子の数は横一列に五つと、その前に立派な椅子が二つ置かれている。

 一列に並んだ椅子には五名の者が座っていた。


「幹部を呼ぶとは珍しい。何か重大ごとか」


 知的な雰囲気を醸し出している男は、ハンセス・エルリグ。種族はハイエルフで城の科学者兼考古学者である。


「さあな……それよりも戦になるってんなら腕がなるぜ」


 この如何にも戦闘マニア風の男は、ダイゼン・ゼノンでオーガと云う種族だが人間に近い姿をしている。

 主に城の治安や警備と兵士などを纏めていた。戦になれば我先にと突っ走るタイプでもある。という事はバンヘルトと戦ったのだろうか?


「アーヤダヤダ……なんかさぁ。さっきから、すんごーく嫌な匂いがしてるのよねえ」


 この色気ぷんぷん撒き散らしているような感じの女性はナミシア・マスリンと言いサキュバスと云う種族だ。幹部と云っても主に監視が主である。


「そうかもしれぬな。我は、あの御方に逢えるのなら死んでも構わぬぞ」


 この優雅な雰囲気を醸し出していいる女性はライナネ・カカオ。ダークエルフで大臣だ。


「フンッ……気にくわぬ。そもそもアヤツがガイモン様を亡き者にしなければ、なんの問題もなかったのですよ」


 そう言いタウリグセは入口へ視線を向ける。

 それと同時にルシファーナと俯きながらバンヘルトが入ってくる。

 五人の視線はバンヘルトへと向けられた。


(やっぱ逃げ出したい)


 そうバンヘルトは心の中で呟いている。

 椅子の前までくるとバンヘルトとルシファーナは立ったまま目の前の五人の方を向いた。

 それと同時に五人は、サッと立ち上がり一礼をする。

 それに釣られてバンヘルトも軽く会釈をした。

 それをみてルシファーナは溜息をついている。


「ルシファーナ様……その者は何者じゃ。なぜそこに立つ?」

「それは、これから話すよ」

「この匂い……まさか?」


 そう問われルシファーナは頷き笑みを浮かべた。


「おお……よくやってくれた。しかし装備のせいか雰囲気が変ったようにも思えるぞ。それに威圧も感じられん」

「その通りです。通路でお逢いした際も低級の人間にしか感じられませんでした」


 その言葉を聞きバンヘルトは、チラッと横目でルシファーナをみる。


「ルナ……どうすればいい?」


 そう小声でバンヘルトはルシファーナに問いかけた。


「もう会話してもいいよ。それと、もう気づいてるから存分に開放して」


 それを聞きバンヘルトは抑えていた気を解放する。と五人は一瞬にして凍り付いたように動かなくなった。


「ま、間違いない! 途轍もない、この威圧感は紛れもなく勇者バンヘルト様だ!!」


 そう言いダイゼンは歓喜の涙を流している。


「そうかもしれん。だが、なぜフードを脱がんのだ。それに何やら禍々しものを感じるのだが」


 警戒しハンセスはバンヘルトを凝視した。


「んー……この匂いは間違いないよ。でも、なんだろう……前と雰囲気が変った気もするなあ」


 不思議に思いナミシアは首を傾げる。


「ルシファーナ様……お戯れを。このような者が勇者バンヘルトだと云うのですかな? ただ似た者を連れて来ただけのように思える」


 そうタウリグセに言われバンヘルトは横目でルシファーナをみた。

 それに気づきルシファーナは頷き笑みを浮かべる。

 ハァーっと溜息をついたあとバンヘルトは嫌々フードを脱いだ。


「ああー……これは間違いありませぬ。このお顔はバンヘルト様。これは失礼をお詫び申し上げます」


 頭を深々と下げライナネは目を輝かせバンヘルトをみる。


「すまない……顔をみせられるような立場じゃないと云うのに」

「なんで謝ってるんだ?」

「オレはお前たちの王を殺した」


 それを聞きハンセスは、ガッカリしバンヘルトをみた。


「これではガイモン様も無念だろう。このような者に倒されたのだからな」

「そうだな……お前の言う通りだ。オレは愚かだったよ」

「本当にバンヘルト様なのか? オレの股間を足蹴りして気絶させた。それなのに、なんでこんな弱々しいことを言ってるのだ!?」


 信じられないと思いダイゼンは頭を抱え「うおー!!」と叫んだ。


「弱々しいか」

「先程から表情を変えぬようだが……何かあったのか?」

「ライナネ……バンがこうなったのは――……」


 バンヘルトでは言えないと思いルシファーナが聞いた限りの経緯を説明する。


「なるほど、これは滑稽。国のために尽くしたと云うのに裏切られた挙句に魔王様が勇者の体を乗っ取ったと……バカバカしいとしか思えん」

「うむ、それだけではなく……あのリンナという者も殺されたとな」

「うおー……あのシオンという漢もかあ! 決着がついてないというのに、これでは敗北も同じだああ!!」


 それを聞いていたバンヘルトは無表情のまま俯き頭を抱える。


「全てオレのせいだ! 二人を……いや仲間たちを巻き込んだから」

「泣いてるの? そんな匂いがする」

「涙も流せなくなるとは……情け無い。魔王さまを殺した勇者だとて所詮は人間。やはり下等な動物にすぎません」


 そう言いタウリグセは、バンヘルトを見据えた。


「そうだろうな……なんでガイモンを倒せたのかも疑問だ。あの時……死ぬべき者は自分だったと思っている」


 その言葉を聞きダイゼンはバンヘルトを殴る。

 と同時にバンヘルトの体は動き軽々と片手でダイゼンの拳を受けとめた。するとダイゼンは一瞬の内に弾かれ後ろの椅子を倒して壁まで飛ばされる。


 ――ドン! バタン!!――


 ダイゼンは壁に激突したあと床に落下した。


「やり過ぎたか」


 そう言いながらバンヘルトは倒した椅子を直したあとダイゼンの方へ近寄る。

 ダイゼンのそばにくるとバンヘルトは中腰になり覗き込んだ。


「気絶してるな」

「流石はバンヘルト様……今は気持ちが病んでいるだけのこと。以前よりも力を付けておる。これならば我らが王となりても構わぬのではないのか」

「ライナネ……簡単に決めないでもらいたいですね。たかがダイゼンを弾き飛ばした程度で」


 タウリグセは余程バンヘルトが嫌いなようで難癖をつけているようだ。まあ人間自体が嫌いなのだが。


「じゃあさ、ここに居る四人がかりで攻撃するってのも面白いと思わない?」

「ナミシアにしては良い考えだ」


 手を前に翳しハンセスは弓を手にする。

 それを聞きタウリグセは手を前に翳した。

 仕方ないと思いながらライナネは杖を構える。

 楽しそうと笑みを浮かべながらナミシアはステッキを持った。


「本気か? どうなってもオレは知らないぞ」

「まあ……この人たちは痛い目をみないと分からないから」


 ハアーっと溜息をついたあとバンヘルトは鞘から抜かず魔剣バンシオンソードを持ち構える。


「鞘から剣を抜かないとは馬鹿にしているのですか?」

「いや……殺したくないだけだ」

「それを馬鹿にしてると云うのですよ!」


 そう言ったと同時にタウリグセは催眠光線を放った。

 それを合図にハンセスは弓を弾き矢を放つ。

 片やライナネは杖を掲げ黒い炎を放った。

 ナミシアはステッキをコミカルに振り魅了の魔法をバンヘルトにかける。

 それをみてもバンヘルトは動じず目の前に魔剣を構えたままだ。

 四人の攻撃が自分の前までくるとバンヘルトは魔剣を振り上げる。そのあと「ハアアアアアー!!」と声を張り上げながら瞬時に魔剣を振り下ろした。

 すると全ての攻撃がかき消され四人は物凄い風圧に巻き込まれて椅子を倒しながら壁に激突し地面に落下する。

 その衝撃で執務室は破壊されて辺りに沢山の瓦礫が散乱していた。

読んで頂きありがとうございます(*^^*)


では次話もよろしくお願いします(*^ω^*)

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