表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の女性不信が加速している件について〜美少女に取り込まれる地獄。それでも俺は一人でガンプラを組んでいたい〜  作者: 新詳カサト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/17

第6.5話 斉木 雫の孤独の復習

夜の静寂に包まれた自室。

 私はベッドに身を投げ出し、自分の手のひらを見つめていた。

 そこにはまだ、さっきまで触れていた孤崎くんの、あの硬直した肩の熱が残っているような気がした。

「……ふふっ、あんなに震えちゃって。可愛い」

 天井を見上げると、彼のあの「死んだ魚のような目」が脳裏に浮かぶ。

 誰にも期待せず、誰の言葉も信じない。

 鋼の殻に閉じこもっているつもりなのだろうけれど、私からすれば、あれは「誰かに壊してほしい」と叫んでいる寂しい子供の背中にしか見えない。

 机の上に置いてある、一冊の古いノートを開く。

 そこには、彼が中学時代に味わった「あの出来事」の記録が、断片的に記されている。

 彼が誰に裏切られ、どうやって今の『フィルター』を作り上げたのか。

「ねえ、孤崎透くん。君は『期待するから裏切られる』なんて言うけれど。……本当の絶望は、そんなものじゃないんだよ?」

 私は立ち上がり、鏡の前に立った。

 鏡の中にいるのは、清楚で、品行方正で、誰もが信頼を寄せる「斉木雫」。

 松岡先生が私に媚び、不知火会長が私を特別視する。それは私が彼女たちの望む『完璧な駒』を演じてあげているからに過ぎない。

 私が彼に執着する理由。

 それは、彼が私と同じ「色のない世界」に住んでいるからだ。

 

 けれど、今の彼はまだ甘い。

 あんな風に趣味に逃げたり、不信感を理屈で武装したりして、必死に自分を守っている。

 

「もっと加速させなきゃ。……もっと、君を孤独に。もっと、君を『不信』の深淵へ」

 私が今日、彼の家に行ったのは、単なる誘惑じゃない。

 彼の中にある「本能」と「理性」を衝突させ、彼が信じている『自分のロジック』が、いかに脆く崩れ去るかを分からせるための「復習」だ。

 彼が誰も信じられなくなった時。

 唯一、その絶望を肯定してあげられるのは、私だけ。

 彼が『空気』だと思いたがっているこの世界で、私だけが『実体』として彼を抱きしめてあげる。

「不知火会長なんて、ただのノイズ。内田茜さんも、ただの端役。……透くんを完成させるのは、私だけなんだから」

 私はスマホを取り出し、彼に短いメッセージを打ち込んだ。

 あえて返信は期待しない。

 ただ、彼の枕元でスマホが震えるその「音」が、彼の安眠を妨げ、私の存在を刻み込めばそれでいい。

 窓の外、札幌の夜空はどこまでも冷たく透き通っている。

 

「おやすみなさい、透くん。……明日はもっと、君の世界を壊してあげるね」

 私は、彼から奪った「ガンプラの小さなパーツ」を口元に寄せ、愛おしそうに目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ