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俺の女性不信が加速している件について〜美少女に取り込まれる地獄。それでも俺は一人でガンプラを組んでいたい〜  作者: 新詳カサト


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第四話 新入生歓迎会って誰得なんですか


体育館に充満する、独特の埃っぽさと湿度。

 パイプ椅子が床を擦る音。

 新入生の、期待に満ちた浮ついた私語。

 

 ——ノイズだ。すべてが。


俺、孤崎透は、一番後ろの列で壁に背を預け、ノイズキャンセリング機能を最大にしたイヤホンを耳の奥まで押し込んだ。


「えー、新入生の皆さん。本校へようこそ。皆さんは、まだ磨かれる前の原石です。この三年間で……」


ステージ上で、校長が校章の入った壇に手をつき、いかにも「教育者」といった穏やかなトーンで喋り始める。

 俺の脳内フィルターは、その言葉を瞬時にスキャンし、ゴミ箱へと放り捨てる。


(——原石? 結局は『進学実績』という名の宝石に加工して、学校の価値を上げるための素材としか思っていないくせに。使い古された比喩、感情の乗っていない抑揚。あれは、早く挨拶を終えて校長室のソファで茶を啜りたい男の出す音だ)


次に登壇したのは、一学年団の教師たちだった。

 担任の松岡を含めた数名が並び、一人ずつ挨拶をする。


「皆さんの味方です」「何でも相談してください」


並べられる美辞麗句。

 だが、俺の視界には、彼女たちが隣の教員と視線を交わし、微妙に口角を歪める瞬間がはっきりと映る。

 

(その『相談してください』という言葉の裏には、『ただし、私の仕事を増やすような面倒なトラブルは持ち込むな』という注釈がついている。大人たちの防衛本能と打算。……反吐が出る)


そして、会のクライマックス。

 アップテンポな曲が爆音で流れ、チア部と応援団がステージに躍り出た。

 

「——っ」


弾けるような笑顔。短すぎるスカートの裾。

 統制された動きで、彼女たちは「全力の応援」という名のパフォーマンスを繰り広げる。

 体育館のボルテージが一気に上がり、周囲の男子たちが身を乗り出す。


(……一番、救いようがない。あんな風に全開の笑顔を振りまきながら、裏では『あの一年生の誰々、超キモい』とかLINEのグループで叩き合っているんだろ。自分たちがスポットライトを浴びるための手段に、他人への応援という皮を被せるな)


光が強ければ強いほど、その裏にある影はどす黒く、深く見える。

 俺の不信感メーターは、もはや制御不能な勢いで針を振り切ろうとしていた。


「ねえ、孤崎くん。凄かったね、チア部の人たち!」


会の終了後、教室への帰り道。

 人混みの中で、当然のように隣を歩く斉木雫が、目を輝かせて話しかけてきた。

 彼女のその「純粋そうな瞳」さえ、俺には自分を善人に見せるための最大の武器にしか見えない。


俺は、彼女を見ることなく、低く冷めた声を吐き出した。


「……結局、誰得なんですか、これ。時間の無駄だ」


雫の笑顔が、一瞬で凍りついた。

 一秒、二秒。

 

「……え?」


戸惑う彼女を置き去りにして、俺は歩みを速める。

 廊下の窓に映る自分の顔は、ひどく冷え切っていた。

 

 不信感は、もう止まらない。

 加速する思考の中で、俺は明日へのさらなる防壁を築き始めていた。

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