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信じた者の末路


一週間後、キメラアント掃討作戦が開始された。


樹海の外部では、三か所に巣穴が確認された。

全ての巣穴に、同時に毒ガスを流し込まなければならない。


どこかが早く動いてしまえば、それ以外の場所では巣穴から大量のキメラアントが出てくる。

そこにいた作戦部隊は壊滅してしまうだろう。

危険と責任を伴う任務だ。


その中でも一番危険なのが、樹海の中の巣穴を攻撃する部隊だ。


メルワーレは、レーリアやワトスと共に、攻撃部隊の道案内をすることになった。

レーリアの兄であるパリクスを始めとした、強力な魔術師部隊がついている。

この戦力なら、キメラアントが10匹同時に襲ってきても勝てるだろう。


しかし、この部隊の一番の要は、毒ガスを扱える錬金術師だ。

害虫駆除の専門だと言うその錬金術師は、アストンと名乗った。


今回は大型の船が用意された。

船は王都を出発し、リトーノ川を遡る。



樹海が近づくと緊張が高まった。

魔術師達が、船の舳先や屋根の上に立ち、周囲を警戒する。

いつキメラアントの攻撃があっても対応できるようにしているらしい。


「やれやれ。どうしてこんな時に限って、師匠もアロッホも連絡取れないのかなー……」


そんな様子を見ながら、アストンがぽつりと独り言を言う。

メルワーレは思わず聞き返す。


「アロッホさん、ですか?」

「ああ、同門の錬金術師なんですけどね。メカアームとかいうのを作ってて、戦闘で役に立つんですよ。最近、ちょっと貴族とトラブったとか聞いたけど、そろそろほとぼりも冷めた頃だし、帰ってくるんじゃないかと思ってるんですけど……」


メルワーレは「その人は、たぶん二度と人間側に帰ってきてくれないですよ」と思ったけれど、もちろん口にはしなかった。



船が狩猟村に到着したのは夕方だった。


「夜のうちに準備を整えて、夜明けとともに出発。明日の夕方までに森の巣穴に到着し、毒ガスを流し込む」


パリクスがこれからの予定を確認する。


森の中で巣穴があるとしたら最低でも二か所。

前回メルワーレ達がたどり着いた森の奥。

そしてこの狩猟村の近くだ。


ワトスが村の中を調べ、柵が壊されている場所を見つける。


「やはり、あの辺りの地面が荒らされていますな。あの跡をたどっていけば、もう一つの巣穴も見つけられるでしょう」

「そうか。しかし、部隊を二つに分けることになるな。単純に戦力を二等分にすればいいと思うか?」

「現場の状態がどうなっているかわからない以上、それしかないでしょうな」

「そう言えば、錬金術師は一人しかいないが……」

「遠い方に必要でしょう。森の奥を目指す部隊に付ける事をお勧めします」

「なるほど、それが妥当だな……」


ワトスとパリクスは今後の予定について話し合っている。


メルワーレは空を見上げた。

暗い空、木々の間を、ちらちらと光る何かが飛んでいる。

同じ物を見たアストンが不思議そうな顔になる。


「あれは、フェアリーペストかな。どうしてこんなところに……」

「森にいるとおかしいんですか?」

「ああ、本来はビルカム峠にいる良くない虫なんですけどね……山の下まで降りてくるような魔物ではないと思っていたんだけど、おかしいな、と思って……」


嫌な予感がした。

メルワーレは辺りを見回し、何かが放物線を描いて飛んでくるのを見た。

反射的に目を閉じ耳を押さえて伏せる。


「ふわっ?」


何かが鋭い閃光を発した。

直視してしまったらしいアストンが、意識を失って倒れる。


「敵襲だ! 見つけ出せ!」


パリクスが叫び、魔術師達が戦闘態勢に入る。

閃光弾が飛んできたのとは反対方向から、小さな人影が飛び出してきて、パリクスに体当たりする。

パリクスはその場で倒れた。


「なんで? ……なんで?」


メルワーレは混乱していた。

今の錬金爆弾は、ほぼ確実にアロッホが制作した物だろう。

そして、飛び出してきたのは、顔を隠しているが、多分ウィノーラだ。


エトルア達は、メルワーレ達を、無傷で安全な場所に解放してくれた。

なのに、どうして今度は襲ってくるのか……。



魔術師たちが攻撃を始める中、ウィノーラは左手で防御魔術を制御し、同時に右手で別の魔術を発動した。


上から押しつぶされるような衝撃と共に、メルワーレはその場に転がされた。

息が苦しい。

何か未知の攻撃を受けている。


また何かが暗闇の向こうから投げ込まれ、煙が広がる。


「ヴェンチレイト!」


誰かが魔術による強制換気を発動した。

だが、ダメだった。

メルワーレの全身から力が抜けていく。


二度目に投げ込まれたのは睡眠ガスか何かだろう。

魔術師は反射的に、それを換気魔術で無効化しようとした。

ところが、何かが失敗したらしい。

あるいは失敗させられたか。


こちらは宮廷魔術師を含む一個戦隊だ。

これだけの戦力があれば、正攻法ならウィノーラでも勝ち目はなかったはず。

それをこうもあっさりと無力化するとは、あまりにも段取りが良すぎる。


メルワーレ達を解放した時点で、この襲撃の予定が組まれていたとしか思えない。


「どう、して……」


メルワーレは最後の力を振り絞って問うたが、返事はなかった。



ウィノーラ>(非常識の壁)>パリクス>(宮廷魔術師の壁)>レーリア>その他


初撃でパリクスを落とされると、何人いても絶対勝てない

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