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フェアリー・ペストの妨害戦術


アロッホとウィノーラは階段を降りる。


チリンチリン


上からも下からも鈴の音が聞こえる。

完全に囲まれた中を、刺激しないように、そろそろと降りていく。

この状況で、三時間かけて階段を降りなければならない。

考えるだけでも頭がくらくらしてくる。


ウィノーラが小声で言う。


「ねえ、やっぱりこの階段を降りるのはやめない?」

「他にルートないだろ……」


あるとしたら、雪山を下山してモリソバ駅まで歩くぐらいか。

だが、その分の食料など用意していない。

遭難は確実だ。


「あー、なんか頭が痛くなってきた」

「私も……」

「たぶん、寝不足が原因だよな」

「ここで寝たら死ぬよ……っていうか、殺されるよね」


ウィノーラはアロッホに腕を組んでくる。

二人はそこからは無言で、階段を下りて行った。


どうにか階段を下りきったところで、アロッホは煙幕をたいた。

フェアリー・ペストの群れが逃げるように上に戻っていく。

だが、既にかなりの数がダンジョンの奥に入り込んでいるようだった。


「これを駅長室まで連れて行ったらまずいと思うんだ」

「どんなことになるの?」

「毎日眠れなくなるぞ」

『二人とも、まだ元気? そこからどうやってこっちまで来る?』


天井からエトルアの声が響く。


「道は、成り行きで考えるよ。そっちは、とにかく奥まで侵入されないようにしておいてくれ」

『既に全部のシャッターは下ろしてあるわ。あなた達が通る所だけ開けるつもりだけど』


アロッホは一番有効な移動ルートを考える。

フェアリー・ペストは、とりあえず自分たちを追いかけてくるだろう。

どうしても、大量のフェアリー・ペストをトレインする事になる。

途中で全滅させる必要がある。


「テスラタワーの部屋を利用すれば、かなり数を減らせると思う。その辺りにはどうなっている?」

『ちょっと待って……、テスラコイルの部屋を抜けて……そこから先、一匹も虫がいないルートがあるわね』

「それは都合がいいな。そのルートを採用しよう」

『ちょっと待ってください。そこを通るって事は、この部屋を通ることになりませんか?』


カルナの声が混じる。

何か途中に問題があるらしい。


『あー、そうね。えっとね、テスラタワーの部屋の手前に、ものすごい数の虫が飛んでる……この部屋を避けると、テスラタワーの部屋に入れないと思うんだけど、どうする?』

「それは……近づいてから考えるよ」


アロッホとウィノーラは警戒しながらも廊下を進む。

道中、フェアリー・ペストが集まってくるような気配はあった物の、特に攻撃を受けるような事はなく、エトルアの指示を受けながら順調に進む。


テスラタワーの部屋の手前まで来た。

次のシャッターを超えて、大部屋を抜ければテスラタワーの部屋で、そこを超えれば安全地帯だ。


エトルアが言う。


『そのシャッター開けるけど、覚悟してね』

「お、おう?」


何か問題があるのかは、開いたシャッターの向こう側を見ただけでわかった。


ジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャ


無数のフェアリー・ペストが宙を飛んでいた。

あまりにも数が多すぎて、向こう側の見えない。

敵が10で、壁が0だ。


鈴の音が重なり合って不協和音を生み出し、それ以外の何も聞こえない。

床には凍死した巨大ナメクジがゴロゴロと転がっていて、その上に鱗粉か何かが積もっている。


「……」


ウィノーラが何か言ったようだ。

もちろん聞こえない。

アロッホは、進む方向を指さすと、ウィノーラの腕を引いて歩く。

二人が部屋に入ると後ろでシャッターが閉まった。


後は部屋を歩き切るだけだ。

少々遠回りになるのを覚悟で壁際を歩く。

いざという時は壁を背にできる、360度囲まれる危険がないというのは重要だ。


それにこの状況では前が見えない。

どこかの壁にたどり着いても、右と左、どっちに進むのが正しいかわからなければ、そこで足止めされてしまう。

ダンジョン内で遭難するなど笑えない。


わらわらとフェアリー・ペストが集まってくる。

動く者がいなくなって退屈していたのか、一斉に氷系魔術を飛ばしてくる。


アロッホは進む先にインフェルノフロガを投げた。

緑色の炎が上がる。

これは一種のナパーム弾だ。

温度は300度ほどと、炎にしては大して熱くないが、数分は燃え続ける。


フェアリー・ペストは熱に弱いのか、わらわらと逃げていく。

アロッホとウィノーラは、壁と炎の間を、壁に張り付くようにして進み、なんとかテスラタワーの部屋の入口まで来た。


「エトルア、開けてくれ!」


アロッホは叫ぶが、聞こえているのか。

いや、そもそもエトルアの方から、こちらの姿は見えているのか。

しゃがんで手探りで調べると、下の方が10センチほど開いていた。


ウィノーラと二人で押し上げて隣の部屋に入る。

隙間から大量のフェアリー・ペストが押し寄せて来る。

シャッターを下ろしたが、押しつぶされたフェアリー・ペストが挟まって、最後まで閉まらない。


テスラタワーの部屋も、前の部屋よりはマシだが、まだ大量のフェアリー・ペストが飛び交っている。

テスラタワーの電極にとりついているようだった。


ここはまだ前が見えるので、真っすぐに突っ切る。

部屋の隅にたどり着いた所でシャッターが開いた。


アロッホとウィノーラが部屋を出ると、数十匹ほどのフェアリー・ペストがついてくる。

シャッターが閉まった。


シャッターの向こうで轟音が響く。

エトルアが、テスラタワーを最大出力で作動させたのだろう。


「スパーク・ウェーブ!」


ウィノーラも魔術を放ち、シャッターのこちら側で飛び回っていたフェアリー・ペストがバタバタと地面に落ちる。

まだピクピクと動いている数匹を念入りに踏みつぶしてから、ようやく一息付けた。


『お疲れ様、とりあえず、駅長室まで来なさい、今後の対策について話し合いましょう』



獲得称号《フェアリー・ペストの怨念》

取得条件:ダンジョン内で千体のフェアリー・ペストが死亡する

称号効果:墓地のリストにフェアリー・ペストゾンビが追加される



なお、使えるようになっても何の役にも立たない模様……


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