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【日記】出発前、僅かな時間
六日目
サクラメントとミロシュが姫さんの追手を追い払って一夜が明けた。
二人が外で相手をしている間、俺は母屋で興奮した姫さんを抑えていた。暴れたり叫んだりはしなかったが、フーフーと唸る姿は獣のようで少し怖かった。
奴らが追い返され、気持ちが落ち着いてから暫くの間は元気がなかったが、俺が黒短刀を使って良いと渡したら、今までの態度が嘘のように笑顔になった。
少し騙された気分だ。
俺たちと共に旅へ出ろ。そう言われ嫌な顔をしていたミロシュも、襲撃後は態度を一変させていた。今は姫さんと一緒に荷造りをしている。アレは要らない、これは絶対に必要だ! などと言い合いながら一つの鞄に荷物を詰めては、入り切らない! と嘆き、それでも詰め込もうと躍起になっている。
記憶がない俺は旅をしたことがない。口出しするのは何だが、明らかに要らない物は除けておかないといけない。旅のメンバーは姫さんとミロシュ、女性二人に俺を加えた三人だ。
多分、いや間違いなくアレを持つのは俺の役目になるだろう……。
ああ、姫さんが呼んでいる。様子を見てこよう。
最後に、無頼と言う名前が案外嵌っていることに自分でも驚いている。
驚きだけではない。名前を呼ばれる幸せに気付いた。
これは多分、記憶を失う前には味わえなかった感覚だな。




