【日記】手配書の顔が
三十四日目
ミロシュが持ち帰った手配書には、俺の手配書も含まれていた。
懸賞金額は二十万シード、依頼元はネブラスカ南方軍。
ああ、オレーサで一騎打ちをした相手だと気付いたのは、部屋に戻ってからだった。遠目の所為で似顔絵は特徴を捉えておらず、ただ髑髏マスクを着けた巨躯だとしか書いていない。
『亡霊挽歌』の情報すらない……と思ったが、一騎打ちで使ってなかったな、そう言えば。
二十万……二十万か……。
ローロの首に掛かった懸賞金が七十万シード、ララミーが百五十万シード。
ララミーは帝国でも中原でも暴れ回ったとアーデルハイドは言っていたが、やはり悪名を高めれば高める程に懸賞金の額は跳ね上がるのだろう。
俺も今までのように戦い続けたら、懸賞金もいつか相当な額に伸びそうだな。
ローニャは依頼人を始末してしまえば、掛けられた懸賞金も取り下げられると言っていたが、……国家の一方面軍を潰すのは無理じゃないか?
予算的に追い込む……司令官が変わる……いや、一個人じゃ無理だな。
時間が経てば、下手したら懸賞を掛けたことすら忘れてしまうかもしれない。
思い返せば、サクラメントの依頼元もそんな所ばかりだった気がする。
ギルドへの手数料と報酬としての懸賞金は前払い。
依頼元が潰れたら預け金は接収、依頼元を明記して冒険者に斡旋する為にギルドが恨まれることもない。win-winに見せ掛けてギルドの一人勝ち、だが誰も損をしていないのだから誰からも文句は出ずに成立する。面白い仕組だな。
そう、機会があればと忘れていたが、昨夜、ミロシュに教えて貰った。
グレナダが得意とする精霊魔道術と精霊について。
概要は精霊と契約してその力を借りる魔道術だと言っていたが、ミロシュも実物を見たことはないらしい。世間的にはかなり希少な魔道術であり、大前提として必要な精霊が滅多に人前に姿を見せないのだから契約している魔道士も少なくて当然だ。
精霊は環境マナの化身、環境マナを作り出せる精霊を手元に置いた魔道術は、他の魔道術より遥かに利便性に富み、応用が利くらしい。少年漫画やゲームに有り勝ちな、炎や水を操る魔法使いキャラはこの世界だと精霊魔道士が一番近い。
火の精霊ならば火を、水の精霊なら水を、雷の精霊なら雷を、ステラーがそうだったように、何もない場所でそれらを自在に繰り出せる。
更には魔力核が無くても、魔力を供給するだけで疑似的な魔道術が扱えるとミロシュは言っていた。
使う当てのない魔力を蓄えた俺向きだ、とも。
精霊剣士……少し響きが格好いいぞ……。




