【日記】世捨村、澄んだ湖の畔
二十四日目
俺は、諦めが悪い方ではない。
即断即決を常としている。無理なことは無理と、出来ることは出来ると判断出来る自分を誇ってすらいる。
だが、今の俺はどうだ?
熟れすぎた果実のようにうじうじと悩み、刺々しい態度は近づく相手を傷つけ、自ら傷付いていく。
割り切るしかない。
悩むだけ無駄だ。
アーデルハイドは自ら死を覚悟していた。
一つ前のページ、アーデルハイドの手記からもそれは分かる。ローロとララミーに加え、グレナダまでもいた。戦力的には勝てる筈がない。
転移前にララミーがグレナダがいるぞと叫び、アーデルハイドはその呼び声に応じたのだ。あの状況で姿を晒す意味はない。考えられるとするなら、自らの命を天秤に掛け、強引にグレナダとの戦場を整えようとしたのだろう。一矢も報いることが出来ずに終わらせてしまったのは、相方としての俺の力不足だ。
コーラルは、元の世界に戻る術を知らないと言った。
長い魔道術の歴史、多種多様を極める中で禁術と定められている以上、前例として多くの人や物が召喚されたのだろう。某国親衛隊の制服をコーラルに譲った異世界人は、幸せな余生を送ったと言っていた。けれどそれより先に釘を刺したように、全員が全員、この世界で幸せな道を歩んではいない。
選別に手心が加わることはない。
コーラルはそう言っていた。
俺をこの世界に召喚したのはローニャだ。
元の世界に戻れない鬱憤をぶつけるのなら、相手はローニャしかいない。だが俺はローニャの境遇に同情を寄せてしまった。最初から、「お前のことなんて知らない」と突き放せる冷徹さを持ち合わせていたら、ローニャの代わりに荷馬車に詰め込まれていた財宝を手に飛び出せる悪辣さを持ち合わせていたら、俺は悩まずに済んだだろう。
だが、俺は加担してしまった。
元の世界に戻る術はないと割り切り、ローニャが腕を取り戻すまで旅路を共にするしかない。
俺は、俺一人だけでも生きていけるが、ローニャは違う。片腕を失い、俺とミロシュに依存しなければ厳しい現状、俺が放り出せばそれで終わる。けれどローニャに放り出された俺は、何を目的に生きればいいのか分からない。
情けないが、適応できない自信がある。
諦めの良い俺は、流されるようにしてローニャに縋りつくしかない。




