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【日記】バリケードの完成を祝して


 二十三日目


 カドカの強情さには閉口するしかない。

 ラウトのような……弟? 妹? どちらか分からんが、兎に角、可愛い盛りの兄弟が居るにも拘らず、あれほど憮然と振舞うのは傍から見ていて呆れてしまう。

 遺産相続や後継者争いをしている兄弟なら、まだ分かる。

 しかしラウトとカドカは違う。少なくとも俺が見る限りでは、ラウトはカドカに歩み寄り、カドカがそれを突っ撥ねているだけだ。

 きっと複雑な事情があるのだろう。兄弟は一番近い他人とも言われているし、部外者があれやこれやと口出しすべきではないとも理解している。

 だが、カドカは必ず後悔する日が来る。

 会いたい時に会えない苦しみは、在りし日の自分を責め、現在の自分を一層苦しめる結末に辿り着く。失ってからでは遅い。喪失は突然で、失ってからしかその喪失に気付けない。

 カドカの強情が和らいだら、諭してみようと思う。

 激情の持ち主だが、カドカは決して悪い子ではない。

 後悔は、して欲しくない。



 アデルさんに日記を貸してくれと頼まれた。気乗りはしなかったが、他のページを読まないという条件で貸し出した。

 日記とは、過去の自分との会話に近い。

 日々の生活の記録から気恥ずかしい告白まで。

 内容は様々で、多種多様だからこそ俺は当時の自分を取り戻せるのだと思う。

 そんな俺の独白場にアデルさんが紛れ込んでも、俺と過去の俺が果たすような邂逅は味わえない。ただ足跡を見つけ、こんな人も居たなと思い出す程度だろう。


 書いてて思ったが……、それも悪くないかもしれない。


 記憶とは不安定なものだ。

 俺のように、ふと何かの拍子に失ってしまうこともある。

 そんな事態には滅多に遭遇しないだろう。しかし可能性はゼロではない。

 厄介なのは、記憶を失った瞬間の衝撃は他の記憶によっていとも容易く上書きされてしまうことだ。風化され、消えていく。

 文字として残せば、足跡を見返せば、消えることはなくなるだろう。


 それはきっと、良いことなのだろう。


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