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【日記】早朝、日の出にペンを走らせる



 二十日目


 魔獣討伐が決まった。

 出発は早くて三日後、俺たちが森に入るのと同時に、ロックとアーデルハイドの弟子クララは森を抜け、近隣都市のギルドに助力を求めに行く。考えたくはないが、俺たちが失敗してもいいようにと保険を掛けるらしい。

 今回討伐に出向くのは、俺たち三人とアーデルハイド、案内役を買って出たラウトの五人だ。子供のラウトを連れていけないと俺たちは断ったが、土地勘のない者たちだけで森に入るのが如何に危険かを説かれたら黙るしかない。

 だが村に住んでいる大人たちに、お前たちの誰かが付いて来い、とは流石に言えなかった。村の外れに並んだ何も埋まっていない墓を見て、そんな言葉を吐けるのは人非人だけだ。森で死ぬとは、そういうことなのだ。

 俺たちにしてみれば、守る相手が一人から二人に変わった所で費やす労力は変わらない。やんちゃなローニャと違ってラウトは大人しい。一緒に戦おうと、勇んで出て来ることはないだろう。


 戦うといえば。

 森の中で、野獣と戦うのは難しいと村の男たちは言っていた。剣を振り回そうものなら木々が邪魔になり、弓を手にしても密集した森の中では狙いが付けられない。魔道術はモノによっては役に立たず、必然的に近距離の遭遇になるから気を付けろと注意された。

 熊か……、俺たちが小道で出くわしたのは二メートル超だった。

 俺は熊の分類なんて知らない。グリズリーとヒグマの見分け方も分からない。ただ、二メートルは小さい方だというのは何となく察しが付く。野生動物は縄張りを持ち、熊は特に自身の縄張りに固執する。群れることもなく、そうなれば弱い個体は自然と外に外にと追いやられ、人里に現れる可能性は充分に考えられる。

 熊は冬眠する生物だ。季節は秋口、食糧を貯えようと躍起になっている時季に森に入るなど、それこそ襲ってくれと言っているようなモノだ。

 寒くなれば居なくなるぞ、と言ってやりたかった。だが俺の世界と同じ生態だと確証がなく、更に報酬を決め依頼を受けたからには途中で投げ出さない。頑張ろう。


 ……ああ、俺の日記が熊の情報で埋まっていく。

 毎日日記を書くのは、結構困るな。ネタが足りない。



 そういえば、剣も槍も魔道術も人並み以上に扱えるミロシュだが、どうやら弓だけはてんでダメらしい。

 それを聞いたローニャは「弓が使えないのは胸が大きすぎるからだ」と茶化していた。ミロシュは顔を真っ赤にして俯いたが、ローニャも同じくらいダメージを受けていた。どうやたローニャは弓が得意だったらしい。

「あるのもないのも大変だな」と笑ったら二人に物凄い勢いで睨まれた。

「俺の胸囲はミロシュよりあるぞ」と胸を張ったら今度は殴られた。ポコポコとあまり痛くはなかったが、同情の籠ったラウトの視線の方が痛かった。

 口は禍の元、気を付けよう。



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