【日記】早朝、硬い寝床の上で
九日目
今日は早く目が覚めた。
獣人女にやられた擦り傷切り傷はミロシュの魔道術で瞬く間に完治した。打ち身の方はまだヒリヒリと痛むが、食って寝れば治ると思う。多分。
そう言えば、オレーサの街を歩いて気付いた。
この世界の人間はみんな背が低い。街を歩いていると俺一人、頭が飛び出している気がする。獣人や街道で擦れ違った人間の農夫の背丈は高かったから、俺の気のせいかもしれないが。
いや、元の世界でも俺だけが大きかった可能性もあるのか?
リルエットにラレード、この世界には面白い奴らが多い。
吟遊詩人なんて職業は俺の知識には存在していないし、リルエットの翼は感動すら覚えた。翼人なんて俺の世界には存在しないからな。空を飛べるだなんて浪漫に溢れている。
ひょっとしたら、魔道術を使えば翼が無くても飛べるのかもしれない。
機会があればミロシュに聞いてみよう。
魔道術も、もし使えるのなら使ってみたい。
簡単にはいかないだろうが、もしミロシュのような魔道術が使えたなら、もっと色々と役に立てる筈だ。
昨夜から外が騒がしい。今日も慌ただしくなりそうだ。
ああ最後に一つ、誰にも言えないからここに書くが……
……リルエットの容姿は少しだけ、好みのタイプかもしれない。
切れ長の目、長い睫、ほっそりとした首筋に柔らかな唇。
ベロニカやミロシュ、当然リルエットにも言えない。
俺と、この日記だけの秘密だ。
……正直、迫られて拒否出来た自分の理性を褒めてやりたい。
よくやった、俺!




