執着
「無理無理無理!跡取りなんて無理だよ!勉強もしていないし、お兄様の代わりになるなんて無理!」
「頼むよ…キースがもう帰国しないと言っているんだ。もうサリーに頼む他無い。キースもサリーなら任せられるって。」
「お兄様はどうして戻らないの?!当主になる勉強していたんじゃないの??」
「実はキースはスカーレット嬢に想いを寄せていて…どうせ婚姻出来ないなら何もいらないと…」
はぁ??スカーレットのために全て捨てて私に押し付けるの?!お兄様そんなにスカーレットの事好きだったの?気持ち悪い。
「お兄様に会いに行くわ。」
「え?まさかサリーも帰ってこない気じゃ…?」
「帰ってくるわよ。お兄様と話をしてくるだけよ。」
気をつけてと見送られた。お兄様絶対許さないんだから!私はそこそこの家の人と婚姻してダラダラ過ごしたいし、当主とか絶対無理!!
「お兄様有り得ないんだけど!!私は無理だからね!」
「頼むよ。スカーレットが他の男と幸せになる所なんて見たくないんだ。絶対帰らない。」
お兄様に会うために隣国の職場へと伺いカフェで話をする。格好良いお兄様は何処?いつからこんなストーカー気質に??
「そこまでスカーレットが好きなの?いつから?」
「…初めて見た時から。」
「え?私達が5歳くらいじゃない?」
頷くお兄様が信じられない。全然知らなかった。えぇ…やっぱり気持ち悪いのでは?
「初恋なんだ。サリーと遊ぶスカーレットが可愛くて家に来た時はいつも会いに行っていた。お嫁に誘ったら跡取りだから無理って…あれは悲しかったな。」
「だからお兄様モテるのにずっと彼女居なかったの?」
「スカーレット以外はいらない。」
重症だわ…誰にも治せない。スカーレットは婚約者のハンス様と仲良くしているし、お兄様が帰ってくる見込みは全く無い。
「誰か領地経営出来て婿入りしてくれる方を探さないと…そんな人いる??!」
「こっちでも探しておくよ。あとスカーレットにもし何かあったらすぐ教えて。護衛付けてるけど全ては把握出来ないからね。」
「ストーカーはスカーレットに嫌われますよ?」
見守ってるだけだと言うお兄様はとんでもなく気持ち悪かった。我が兄ながら大丈夫かと心配になる。重症の人はどうにもならない。諦め家に戻りあれは無理だわと話をした。
「え?本当に?」
あれこれ過ごしている間に数年たった。最近会えて無かったスカーレットから手紙が届き衝撃的な事が書いてあった。婚約破棄されたと。私は慌ててお兄様に手紙を書く。早馬を出してもらい届けてもらうと、1言帰るとだけ書かれた返事が届いた。えぇ…気持ち悪い。
「お父様!お母様!大変!!!」
「どうした??!」
「お兄様が帰ってくるって!これ手紙です。」
「キースが?やはり跡取りになるのか?」
「絶対違います。スカーレットが婚約破棄されました。お兄様が狙うのはあちらへの婿入りだと思います。そうなると本当に私になりますが大丈夫ですか?」
相手探しは難航していて未だに見つかっていない。少しずつ勉強はしているがまだまだ足りない。やはり補ってくれる人で無いとダメだ。何件か話をしたけれど条件が合わなかった。賢い人は皆当主になりたがる。サポートを受け入れてくれて、表には出ないと約束してもらえない。難しい。
「サリーには色々押し付けているな。すまない。キースが我儘でお前には迷惑をかけてしまった。」
「いいよ。領地経営って意外と楽しいから。まだまだ色々教えてね。」
もちろんだよと抱きしめられた。お母様もくっついてきた。両親に抱きしめられなんて久しぶりだな。
「キースは本当に婿入りするのだろうか?」
「必ずすると思います。スカーレットへの執着心がエグいです。」
「…そうだよな。一応書類の用意をしておくか。跡取り交代と婿入りのを。これで名実ともにサリーが跡取りになるよ。」
「はい。よろしくお願いします。」
今まで相手が見つかってからと交代していなかったが、お兄様が婿入りするなら別だ。我が家はお兄様に振り回されている気がするわ。
「本当に帰ってきた。」
スカーレットが来る日お兄様は帰国した。もう隣国には戻らないと。数年ぶりに見るお兄様は婚約破棄を聞きとても生き生きしている。
「スカーレットが来たら少し貸してね。向こうに話しつけに行ってくるから。」
「本気なんだ?」
「当たり前だよ。好機は逃さない。やっと手に入る所まで来たのに。」
「気持ち悪っ。スカーレットに嫌われないといいね。」
「彼女は私を選んでくれるよ。」
自信たっぷりだ。変な人に執着されたら終わりなんだな。スカーレット可哀想。婚約破棄されてこんなのに目をつけられて…。
「あ、サリーに相手連れてきたから。今宿にいるんだ。さっき父上にも話しをしたから、あとで会うといい。」
「え?良い方が居たのですか?」
「良い奴だよ。サリーに合うと思う。」
「ありがとうございます。スカーレットのために必死ですね。」
「これでもサリーには悪いと思っているんだよ?色々押し付けたのはわかっているし…スカーレットが1番だけど、妹も可愛いんだからね。幸せにはなって欲しい。」
そんな気持ちがあったのか。確かに優しいお兄様ではあった。急に居なくなって寂しかったし、いつも頼りにしていた。
「お嬢様スカーレット様がお見えになりました。」
「ありがとう。行くわ。お兄様ではまた後で。」
助かるよって頭を撫でられる。昔からこんな感じだったな。自慢の兄だった。まさかストーカーだったなんて思ってもいなかったが。
「サリー久しぶり!元気だった?」
久しぶりに会うスカーレットは元気そうだ。意外と晴々としている。中に案内しソファーに座り話を聞くことに。
「それで!何故?」
「彼女が居て妊娠したって。」
「は?彼女?何それ。いつから?」
「3年だって。4年前に婚約したのに期間中ほぼ彼女が居たそうよ。」
えぇ…私も会った事あるけどそんな人に見えなかった。スカーレットを支えてやっていくのだと思っていたのに。
「それでね昨日朝から来たのよ。ハンス様が。」
「何しに?謝りに?」
「平民にされてしまうから私から回避出来る様言ってくれって。断ったらもう1回婚約者になろうとしていたわ。」
スカーレットは男運が悪いの?変な婚約者にストーカー…可哀想すぎる。
「隣国といえばキース様はお元気?」
あぁ…自分から聞いちゃうんだ。先程からスカーレットを見つめるお兄様がそこにいるよ。あっという間にお兄様はスカーレットを連れて出て行った。親友の幸せを願うしかない。私にはどうする事も出来ない。
「サリー?今いい?」
「はい。お父様どうされました?」
「キースから相手の話は聞いた?今訪ねて来られたのだけど、会えそうなら会ってみるかい?」
「先程聞きました。今行きます。」
部屋に戻っていた私をお父様が呼びに来た。どんな方かな?楽しみだな。侍女を呼び少し身支度をしてから向かう。
「サリー嬢お会い出来て光栄です。フィリップ·フォン·ボワローと申します。この様な機会を頂け嬉しく思います。」
「サリー·ブリュノです。わざわざ来て頂きありがとうございます。」
「婿をお探しだと伺い立候補させて頂きました。私は昔から兄達をサポート来ましたのでなれております。お勉強中のサリー嬢を必ず支えられると思います。」
フィリップ様はとても見目麗しく賢い感じの方なのに傲慢な雰囲気はしない。何故こんな方がまだお相手がいないのか。
「あのフィリップ様なら様々な婿入り先がありそうなのに、何故家に来て頂けるのですか?」
「我が家は少し特殊なので選定に時間がかかっておりました。その時キース殿に会いに来たサリー嬢を見かけ一目惚れしました。そこからキース殿に打診しておりましたが、やっとご紹介頂けるとの事で今回帰国する彼についてきたのです。」
「え?前行った時ですか?すいません。あの時お会いしましたか?覚えていなくて。」
「いえ私が見かけただけなので。」
え?ストーカー仲間なの?




