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俺と知らないおっさん、同時撃破必須の二人組魔法少女になる  作者: 私はかき氷
片道切符の同盟

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20/40

20『特等席に座る者』

「「《電磁石化》!」」


俺とシルバの息の合った叫びとともに、電磁石化したワイヤーが地面にのたうつ。

狙いは一つ。男たちが放った銃弾をすべてこの磁力で地面に吸い寄せ、無力化することだ。


放たれた銃弾は地面に吸い寄せられる――気配すらなく、まっすぐに俺たちの眉間へと飛んでくる。


「危ないよ」


一歩前に出たノーラが、大鎌を軽々と振るった。

連続する甲高い金属音と、散る火花。放たれた銃弾のすべてが、あらぬ方向へと弾かれていく。

そんな神業を、ノーラは俺たちの方を振り返り、呆れ顔のまま披露してみせた。


「銃弾って基本、鉛でできてるから。磁石にはほとんど反応しないよ?」


「……マジで?」


「てっきり鉄製かと。浅学を晒し、申し訳ありません……」


頭を抱える俺と、大真面目に凹むシルバ。

そんな俺たちを余所に、ノーラが視線を前方へと戻した。


「でも、意味がなかったわけじゃないみたい。見て」


「あれ……銃口が下がってる?」


言われて気づく。そうか、銃弾は鉛でも、銃本体には鉄が多く使われている。


男たちは強烈な磁力に引っ張られる銃を必死に支えようと、全身の筋肉を強張らせていた。

顔に醜い皺を寄せ、さっきまでの歪んだ笑みは綺麗に消え失せている。


チリン、と小気味いい音を立てて、男たちの懐から護身用の短刀が飛び出し、電磁石ワイヤーに吸い込まれていった。


その様子を見て、リーダー格の男が苦渋に満ちた命令を下す。


「チッ、無駄に体力を削られるだけだ……銃を捨てろ!」


ホールドを解かれた銃が、磁力に引かれて独りでに地面へと引きずり込まれる。同時に、文字通り「銃弾の雨」が止んだ。

その瞬間、ノーラの姿がかき消える。


「――遅い」


高速で放たれた峰打ちの一閃が、男たちの胴を薙いだ。殺すつもりはないらしい。


「ぐっ……!?」


「……っがは!」


まともな直撃。だが、男たちは骨を砕かれながらも、その場に踏みとどまって声を漏らすのみだった。

それを見たシルバが、意外そうに片眉を上げる。


「……身体能力が、妙に高い?」


「確かに。あいつら魔法少女でもないのに、シルバくらいの身体能力がある」


「薬でもやってるんでしょ」


俺たちの疑問に、ノーラは事も無げに答えた。

そして、大鎌の柄をトントンと手元で弄びながら、冷ややかな視線を向け直す。


「まぁ、誤差でしかないけど」


ノーラが容赦なく大鎌の柄の先端を突き出した。

ドゴォッ、と重い音が響き、男の一人が声を上げる暇もなく道路脇の花壇へと吹き飛ぶ。緑の中に突っ込み、泡を吹いて綺麗に気絶した。


さっそく一人脱落。

ノーラが不敵に微笑み、大鎌を構え直す。


「さあ、残り四人」


「舐めるなよクソガキ……っ!」


リーダー格の男が懐へ手を伸ばす。だが、その指先が目的の物に触れるより早く、ノーラの身体がコマのように鋭く回転した。


リーダー格の男が大の字になって倒れる。

残るは三人。風を切り裂く、残像すら残らない三連撃をノーラが繰り出す。


鈍い肉声が立て続けに響き、男たちは悲鳴を上げる暇すら与えられずに崩れ落ちた。地面に転がった彼らの白目は、完全にむかれている。


「……俺たちの出番、一ミリもなかったんだけど」


「ううん。銃を無力化してくれたのは大きかったよ。ありがとう」


ノーラは大鎌を肩に担ぎ直し、無造作にリーダー格の男の懐へと手を突っ込んだ。

引っ張り出されたのは、不気味な青い光を放つ金属製のカプセルだ。


「ノーラさん。それは?」


シルバが覗き込む。


「怪物兵器。……見たところ『冷気爆弾』かな。被弾した対象を強制的に冬眠状態にさせるやつ」


「投げられる前に片付いて、本当に良かったです……」


シルバが胸をなでおろし、安堵のため息を漏らす。

ノーラがほぼ単騎でこの場のテロリストを制圧した。しかし、耳を澄ませば、銃声と爆音はまだ街のあちこちから絶え間なく響いている。


「ノーラ。ここからは手分けしよう」


「……正気? 相手は怪物兵器と銃をぶっ放してくるんだよ?」


ノーラが眉をひそめる。当然の反応だ。魔法少女がどれほど超常の力を有していようと、無敵ではない。

頭や心臓を撃ち抜かれれば、あっけなく死ぬ。


「コソコソねずみみたいに動けば問題ないさ。あいつら、なぜか道の真ん中を堂々と行進してるし」


「でも……」


「大丈夫だよ。な、シルバ?」


俺が振ると、シルバは一瞬だけ視線を泳がせ、それから小さく頷いた。


「……ええ」


煮え切らない、けれど確信に満ちたシルバの声音。

俺たち二人のうち、どちらか片方さえ生きていれば、死んだもう片方は生き返る。カミィから与えられた俺たちだけの特性だ。


「今は一分一秒が惜しいか。あいつら、複数に分かれて進軍してるみたいだし。……わかった。死なないでよ」


「ノーラもな」


背を向け、ノーラは一度だけこちらを振り返ると、弾かれたように戦場へと駆け出していった。

静まり返った国道で、シルバがぽつりと困惑を漏らす。


「一体、この街で何が起きているのでしょうか……」


「わからない。ノーラに襲撃されたと思ったら、今度は謎の武装集団が東京に現れるなんて。どうなってんだよ」


本当に、何がなんだか分からない。思考が完全に置いてけぼりを食らっている。


『ふふっ』


「ん?」


「どうしましたか、エレナさん?」


「……いや、何でもない」


今一瞬、耳元でカミィのあざ笑うような声が聞こえた気がした。

だが、周囲には硝煙の臭いと静寂しかない。気のせいか。


「シルバ、建物の上を伝って移動しよう」


「そうですね。戦いの基本は上を取ることですし」


俺たちは跳躍し、ビル風の吹き抜ける屋上へと躍り出た。別の一団を捕捉するため、コンクリートの屋根を飛び移っていく。


――その様子を、遥か高みの特等席から愉しげに鑑賞している存在が一つ。


『かわいそうだねぇ。プロメテウスの陰謀も、茜が自分たちの敵だということも、なーんにも知らないんだから』


カミィは、まるで極上の喜劇を観ているかのように、愉快そうに肩を揺らす。


『ああ……やっぱり人の世は面白い。僕は人間が大好きだ』

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