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俺と知らないおっさん、同時撃破必須の二人組魔法少女になる  作者: 私はかき氷
片道切符の同盟

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18/40

18『VSノーラ』

「暗闇から最強格の魔法少女が出てくるとか、本物の幽霊よりタチが悪いんだけど……」


「しかも、私たちを追っている魔法少女ですからね」


まだツボに入っているのか、ノーラは肩を小刻みに揺らしてくくく、と笑っている。

それにしても、どうして彼女がここにいるんだ。


「不思議そうな顔をしてるね。答えを教えると、SNSに君たちの目撃情報が上がっていたんだよ」


「……そうならないように変装してたんだけどな」


「髪型と服装を変えたのはいいけど、せめてマスクくらいは付けるべきだったんじゃないかな?」


「夏日だし、熱中症で死んでしまう」


付けるとしたら、せめてサングラスだ。

実際、事前にシルバと「サングラスで顔を隠すか」という会議はした。したのだが……。


「完全に思春期の自意識の壁なんだけどさ。サングラスをかけるのって、なんか恥ずかしいんだよな」


「私はそうは思いませんが、私たち、基本的に日が暮れてからしか外に出ませんからね」


シルバの言う通り、夜間にサングラスをかけていたら逆に不審者として目立つだけだ。


そんな俺たちのボヤキを他所に、ノーラがごそごそとコートのポケットを探り始めた。

取り出したのは、漆黒のサングラス。

月明かりすら届かない暗い路地裏だというのに、彼女はそれを平然と顔に装着した。


「……気でも狂った?」


「まさか。君たちがワイヤーに高電圧を流して、目眩ましの閃光を放ったときの対策だよ」


心臓が、跳ねた。


「……ああ、そっか。前回は、それでノーラから逃げ延びたんだよな」


圧倒的な実力差があるノーラに対して、唯一通用した技が、今、完全に潰された。

――参ったな。これは本格的に詰んだかもしれない。


「手荒な真似はしたくないからさ。大人しく保護されてくれないかな?」


「捕まったら政府の犬だろ? 真っ平ごめんだね」


軽口で返してはいるが、こちらの内心は冷や汗ものだ。


本当のことを言えば、政府に囲われるのが嫌なのではない。ただ単に、俺たちの正体が男だからだ。

世間で「尊い百合魔法少女」などと騒がれていた俺たちの中身が、男だと知られたら……その時点で社会的に死ぬ。


「凄く忙しいし、命の危険もあるけど、お給料はそこまで悪くはないよ?」


「勧誘下手すぎない!?」


「メリットが一つも機能していませんね」


俺とシルバのツッコミに、ノーラは恥ずかしそうに頬を染めた。

――が、次の瞬間、彼女はどこからともなく禍々しい赤い大鎌を取り出した。

夜の暗闇の中で、ノーラの紅い瞳が獣のように鋭く光る。


「仕方ないな。言葉で説得できないなら、力でねじ伏せるしかないよね」


「いや、もうちょっと言葉で頑張ろうよ!?」


「そうです、話せばわかります!」


ここ数日修行して少しは強くなったとはいえ、ノーラを前にすれば俺たちの力など付け焼き刃にすぎない。

かといって、話し合いでどうにかなる相手でもなかった。彼女の目は、俺たちを保護する気満々だ。


ノーラが静かに前傾姿勢になる。


「問答無用……!」


ドン、と空気が爆ぜる。


狭い路地裏に、シルバが瞬時に鋼鉄のワイヤーを張り巡らせた。

すかさず俺がそこに高電圧の電流を流し込む。素手なら触れることすら不可能な電撃網。


だが、ノーラの得物は茜と違って素手ではなく、あの大鎌だ。

大鎌の斬撃の前に、俺たちのトラップは一切の抵抗も残せず、バターのように切り裂かれていく。


「嘘だろ、あの鎌、絶縁仕様なのかよ!?」


「エレナさん、この距離で背を向けたら一瞬で追いつかれます。今はやるしかありません!」


シルバの叫びと同時に、ワイヤーが俺の手元にしなやかに巻き付いた。

俺はそのワイヤーに、今度は出力を絞った電流を乗せる。


ノーラは敵じゃない。ただ、政府の魔法少女として、野良の俺たちを保護しに来ただけだ。

傷つけたくはない。だから、彼女の体を一時的に痺れさせて動きを止めるだけの、最低限の電撃。


……そもそも、ノーラを攻撃すること自体気が引けるのだ。


「俺はノーラのファンだから、握手してくれないか!?」


「握手するのはいいけど――まずはその物騒なワイヤーを外そうか」


一閃。


ノーラが大鎌を振るうと、俺の手に巻き付いていたワイヤーが地面にぽとりと落ちた。

俺の肌には傷一つない。神業だ。


「シルバ!」


「任せてください!」


直後、再び俺の体にワイヤーが巻き付く。今度は全身だ。

それを見たノーラが、小さく眉をひそめた。


「……先に、シルバちゃんを無力化した方が良さそうだね」


俺の横を通り過ぎようとするノーラ。

行かせるか!


俺は不格好な身体強化を発動し、なりふり構わず彼女に飛びついた。

だが、ノーラは軽やかなバックステップで、抱き着きにいく俺をあっさりと躱す。


「……今の、身体強化? できるようになったんだね」


「やり方を教えてくれる親切なサイトがあってな」


「パンドラ・ネットか。あのサイトに野良の魔法少女が帰属意識を持っているのは、政府としても一つの問題なんだよね」


確かに、俺たちが今どこに所属しているかと聞かれれば、あのサイトの名を挙げるだろう。

アングラなコミュニティであっても、属しているという事実が、俺たちに奇妙な安心感を与えていた。


「ノクシアもいずれ捕まえるけど――まずは、目の前の二人からだ!」


「っ……!」


ノーラの大鎌の柄が、容赦なく俺の腹部へと突き出される。


「エレナさん!」


シルバがワイヤーを引いて俺の体を無理やりズラし、危機一髪で回避。だが、俺は勢い余って地面にしりもちをついた。

ノーラは倒れた俺に目もくれず、シルバに向かって地を蹴る。


「シルバちゃん、捕まえた!」


「前に対峙した時から、私も成長しているんです!」


シルバが掌からワイヤーを射出し、コンビニの屋根へと引っ掛けた。そのままワイヤーを巻き取り、一気に頭上へと跳躍する。

ノーラもまた、重力を無視したような跳躍でそれを追った。


「逃げても無駄だよ」


「エレナさん、今です!」


「了解――!」


待ち構えていた俺たちは、同時に声を張り上げた。


「「《電磁石化》!!!」」


リング状にしたワイヤーに電流を流し、一時的な磁石へと変貌させる。

その電磁石化したワイヤーを握っているのは、屋根の上のシルバだ。


次の瞬間、強烈な磁力が俺の体に巻き付いたワイヤーを引き寄せた。


「うおわっ!?」


体が勝手に浮き上がり、猛スピードで空中のノーラめがけてカッ飛んでいく!


これが俺たちの切り札。

シルバを狙ってノーラが飛び上がる。その結果、位置関係は下から【俺・ノーラ・シルバ】の順に一直線に並ぶ。


そこで磁力を発動すれば、俺は弾丸となってノーラを背後から強襲し、そのまま体に電気を流して行動不能にできる――はずだった。


しかし、ノーラは「最強格の魔法少女」だった。

空中で逃げ場がないはずの彼女は、躊躇なく大鎌を大きく一閃させる。


「はっ!」


凄まじい斬撃の風圧。

それが推進力を打ち消すカウンターとなり、ノーラの身体は不自然に軌道を変えて地面へと落下していく。


結果――。


「エ、エレナさっ!?」


「シル、バっ!?」


標的を失った俺は、ものすごい加速のまま、屋根の上のシルバに向かってノーブレーキで抱き着くことになった。

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