ナイフ
本を読んで、なんとなくこの世界の状況がわかった。
魔王は討伐されたこと。
国は一つに統一されて教会が権力を握っていること。
そして、どの本にも俺の名前が載ってなかったこと。
名のある冒険者ならまだしも、なんでもない俺の墓になぜ結界がはってあったんだ?
だんだん生前のことを思い出してきたけど肝心なところが思い出せない。脳が霧に包まれてるようだ。
「でも、今まで会った人のことはなんとなく覚えてる、、、」
「何ブツブツ言ってるの?」
「うわっびっくりした」
いつの間にか部屋に入ってきていた。
「もう朝よ。それで何か思い出したの?」
彼女はそこにあった椅子に腰掛けて話し始めた。昨日はいろいろあって姿をよく見てなかったが改めてみると若いな。年は大体20くらいか。目にクマがあり、魔法使いのようなローブを纏っている。
「全然肝心なとこが思い出せない。今まではどうだったんだ?」
「人間はアンタが初めてだから分かんない」
「初めてだったのか。」
「いろいろ大変って言わなかったっけ?」
そんなこと言ってたような気がするな。
「アンタは今から外に出て、できることを確かめて、と言うか思い出して。結界張られてるくらいだし多分アンタ強いから。」
「分かりましたよ、、、」
重い足取りで、俺は外に出た。
「あそこに石があるでしょ。見ててね」
目線の先には木の柵があり、その上に拳より少し小さいくらいの石が置いてある。
「ラチバ!」
そう言って彼女は持っている杖を前に翳した。
杖の先に球体が生まれ、一点から薔薇の蔦が石に向かって伸びて、勢いよく石を飛ばした。
「おお〜」
思わずパチパチと拍手をした。
「こういうのアンタも覚えてないの?呪文とか」
「サッパリだよ。なんも覚えてない」
「嘘でしょ、、。じゃあしょうがない、」
そう言って彼女はナイフを差し出してきた。
「はいこれ。これに魔力をおびさせてみて」
ナイフを手に取る。
、、なんか懐かしい感じがするな。手に馴染む。
「こう?」
手に感じる魔力をそのままナイフへ流した。
「あ、それはできるんだ」
どうやら成功したらしい。自分とナイフが繋がってるような感じがする。
「アンタに体は魔力で動いてるからそこらへんはできるのかもね」
「素直に誉めてくれよ」
「はいはいすごいすごい。じゃあ次」
軽くあしらわれてしまった。
この日はその他諸々の体力測定で終わった。運動能力の弱体化は体に流す魔力を増やしたらどうにかなる。問題は動きすぎたりナイフに魔力を込めすぎると体の動きが鈍くなることだ。
こればっかりはしょうがないらしい。
部屋に戻り、今日も本を読んで夜を過ごす。




